インクル148号 2024(令和6)年1月25日号 特集:共用品からの発展 Contents 第24回共用品推進機構活動報告会 報告 2ページ 共用品 in 「サイトワールド2023」 4ページ サイトワールドの実行委員長、荒川明宏さんに聞く 6ページ 視覚障害児・者への立体模型の提供 8ページ ユニバーサルデザインに取り組むきっかけ 9ページ 共用品から共用建築へ 10ページ コンビニエンスストアにおける合理的配慮 12ページ ユニバーサルサービス 13ページ キーワードで考える共用品講座 第138講 14ページ DCD(発達性協調運動障害) を便利な道具でサポート 15ページ 事務局長だより 16ページ 共用品通信 16ページ 2ページ 第24回共用品推進機構活動報告会 報告  2023年12月8日(金)、第24回オンライン共用品推進機構活動報告会を開催しました。4回目となるオンライン報告会には約50名の法人賛助会員及び関係者の皆様にご参加いただきました。  はじめに富山幹太郎(とみやまかんたろう)理事長が開会のあいさつを行い、続いて星川安之(ほしかわやすゆき)専務理事が令和4(2022)年度の活動と令和5(2023)年度の進捗について報告しました。 「共生社会の実現」に向けて  今年度のオンライン活動報告会は、民間事業者にも義務化される「合理的配慮」をテーマに講演と対談を行いました。  弁護士の大胡田誠(おおごだまこと)さんからは「対話こそ共生社会を拓く鍵~民間事業者に義務化される合理的配慮を考える~」と題して、「障害者差別解消法」と「合理的な配慮の提供義務」を2本柱に据えご講演をいただきました。  大胡田さんは「『一般的、抽象的な取り組みであるバリアフリー』と『個別的具体的な取り組みである合理的な配慮』は車の両輪のようなもので両方がうまくかみ合って、初めて社会が変わっていくのではないかと思う」、 「法律ができても、一気に差別がなくなることはなく、法律ができるのは(人々に)対話を促すことだと思う」と述べました。  講演でご紹介いただいた事例は、私達の身近なテーマであり、取り入れやすい内容でした。  ご参加いただいた方からは「お互いの『対話』が重要というキーワードが心に響いた」、「『対話』は社会全体に必要なエッセンス」、「『対話』と『気遣い』が溢れれば優しい国になるのだろうなと感じた」などのコメントをいただきました。 「発達障害の視点から、合理的配慮を考える」  職域開拓研究会、LD等発達障害児・者親の会「けやき」の新堀和子(にいぼりかずこ)さんからは「発達障害」についてご講演をいただき、続けて「発達障害の視点から、合理的配慮を考える」をテーマに星川安之専務理事と対談していただきました。 講演での発達障害の特性や日常生活の不便さ、時系列での親の支援の在り方、就労継続の課題、職業生活の課題、生活の課題の事例は、大変分かりやすい内容で、 参加された方からは「これまで理解できなかった部分がクリアになった」、「どのような支援が必要か理解できた」などの感想をいただきました。  閉会では、森田俊作(もりたしゅんさく)評議員が講演者の方々、法人賛助会員の皆様に向けてあいさつを行いました。 大胡田さん、新堀さんのご講演・対談については、配信のご要望が多数ありましたので期間限定(令和6年3月31日まで)公開しています。ご視聴いただけますと幸いです。 なお、編集上の都合で画面が見えにくいところがございます。予めご容赦ください。 共用品イベント動画配信アーカイブ https://www.kyoyohin.org/ja/publicity/adfj_video_archive.php 森川美和(もりかわみわ) 写真1:星川専務理事報告スライドイメージ 写真2:大胡田さんの講演の様子 写真3:新堀さんと星川専務理事の対談 写真4:新堀さん講演資料より 4ページ 共用品 in 「サイトワールド2023」 「サイトワールド」が、4年ぶりに戻ってきた!  昨年11月、視覚障害者向けの総合イベント「サイトワールド(開催場所:東京・墨田区)」が4年ぶりに開催された。 第1回開催は2006年。新型コロナウイルス感染症の影響により2020年から中断していたが、2023年、待ちに待った開催となった。  ここで展示されているものは、もちろん視覚に障害のある人のための製品や福祉用具だが、中には障害のない人の生活にも役立つ製品がある。ここでは、そんな共用品を3点紹介したい。 裏表、前後なしのスマート肌着  裏表も前後の区別もない肌着「オネスティーズ」。リバーシブルとは違う。両方表と裏、前と後ろなのである。 どんな会社がこの製品を作ったのか、HONESTIES(株)営業戦略本部長 尾崎輝通(おざきてるみち)氏に伺った。  同社社長の西出喜代彦(にしできよひこ)氏は、大学を卒業後、東京のIT企業に勤務。その後、曾祖父の代から続くワイヤーロープ製造会社の経営を、「水なすのピクルス」販売で立て直した。 ワイヤーロープからピクルス。ここから肌着の開発へと進んでいく。何度も冒険したのだなと思えるが、これはふるさとへのこだわりだ。 水なすは、社長の地元、大阪・泉州特産。アパレルなど繊維産業も泉州に元々ある地場産業なのだ。 もっと楽に暮らせるように  裏表、前後がない肌着のメリットは、脱ぐ、洗う・干す、たたむ、着る、これらの行程の多くの手間を軽減できることだ。 オネスティーズ開発当初は「少しでも生活が楽になるように」と思っていたが、後に、“楽”以上に意義があることに気づいたという。 こんな話がある。幼稚園までは、先生が園児の服の脱ぎ着を手伝うが、小学校から自分でやらなければならなくなる。裏返した服を表に返して、前後を確かめて着る。 この当たり前のことがどうしてもできない子供もいて、「いつも怒る、いつも怒られる」とストレスを感じる。この繰り返す心の痛みを軽くするのがオネスティーズなのだ。 素材にもこだわっている。上質な綿や絹のようになめらかな素材を使用し、柔らかな肌触りが心地よい。 同社が目指すのは「いつか、肌着に裏表があったことを誰もが忘れている」世界。多くの人のニーズを知るために、視覚障害、発達障害、認知症などの人たちの全国的な調査も行っている。 女性、男性、子供など、幅広い製品を取り揃え、全ての人が楽に暮らせるよう、製品開発を続けている。 寝ぐせ直しが“泡”で完了!  朝起きたときの寝ぐせ直しが日課となっている人のために、こんな製品がある。「リーゼ 泡で出てくる寝ぐせ直し」。これを髪につけてドライヤーで乾かして整える。 この普段の手順をウェブサイトにある音声説明「聞けばわかるヘアスタイリング」の通りに行うと、仕上がりがぐんと良くなる。  この音声説明では、同シリーズの「うるおいミントシャワー」を用いているが、大事なポイントは変わらない。特徴は、具体的なところだ。 「適度に髪を濡らす」ではなく、「シャンプー後の、タオルで拭いたあとの髪と同じくらい濡らす」。 「ドライヤーで乾かす」ではなく、「ドライヤーの温風で、くせをまっすぐのばすように、根元から毛先に向かって軽く引っ張りながら乾かす」。 これは、視覚に障害のある人にもイメージしやすい。 実際に使用した弱視者の感想を紹介しよう。「今までは、朝、シャンプーして直していたが、この音声を聴いたら使う分量やつける場所がわかり、簡単に寝ぐせが直った」。 シャワーより泡状の方が、手に取って直接髪につけることができるので、予想外の方向に飛び散ることがない。ワンプッシュで出てくる量も把握できる。 朝の貴重な時間を有効に使うためにも、お勧めしたい製品だ。 視覚障害者のアイデアを採用!  視覚に障害のある人のアイデアを採用した「グルス 音声タイマー」。 基本的な機能のみのタイマーかと思いきや、音量の3段階切り替え、音声と電子音の切り替え、バイブレーション機能もついている。 また、タイマー機能に、何分経ったかのお知らせをセットすることもできる。 例えばタイマーを10分にセットすると、5分から、1分ごとに音声または電子音でカウントダウンしていく。10分経ったときに、あわてることがない。 助かるのが防水機能だ。浴室で使うこともできるし、料理中に使用して濡れても壊れない。  使用方法は、ウェブサイトにある動画で、視覚障害の人が点字ディスプレイ(ピンが上下に動いて点字を表示する機器)を指で触れながら、丁寧に説明している。  バッテリーは単4電池1本。背面にある電池カバーは本体から外れない仕様。視覚に障害があると、落としたものを捜すことが難しいため、採用されたのかもしれないが、拾うことが難しい車椅子使用の人にも便利だ。 この他にも操作に困ったときは、タイマーと音のボタンを同時に押すと、操作説明のアナウンスが流れる仕組みだ。  大きな文字、ボタンと背景の高いコントラストで、視認性も上がっている。視覚に障害のある人に限らず、多くの人に使いやすい製品だ。 金丸淳子(かなまるじゅんこ) 写真1:「サイトワールド2023」会場 写真2:尾崎輝通氏 写真3:オネスティーズ(HONESTIES) 写真4:リーゼ 泡で出てくる寝ぐせ直し(花王) 写真5:グルス 音声タイマー(インテック) 6ページ サイトワールドの実行委員長、荒川明宏(あらかわあきひろ)さんに聞く  サイトワールドは、日本の視覚障害関係者がドイツで行われているサイトシティという視覚障害者向けの製品展示会を見学し、感銘を受けて始まりました。 日本では製品展示だけでなく、研究発表、シンポジウム、体験発表等も併催する新しいイベントにしようと、名称も「シティ」から「ワールド」としました。 毎回多くの視覚障害者が全国からこの日を楽しみに集まってくるイベントです。 展示会場  他の展示会と異なり、視覚障害者への工夫は、会場のあるJR錦糸町駅を降りたところから始まっています。 改札を出ると「サイトワールド」と書かれた札を持ち、緑のビブスを着たボランティアたちが白杖をついた人たちに声をかけ、会場まで誘導する仕組みになっています。 受付でも、受付の人から来場者に声をかけ、点字・触知版の地図やパンフレットか、通常のものかを聞き、希望する仕様のものを渡します。  長方形の会場は、外側に24のブースが並び、中の島には15のブースが整然と並んでいます。 39のブースは、視覚障害者が日常生活で感じている2つの不便の解決に取り組んでいる企業、福祉機関、研究機関です。 その2つとは、一人で自由に移動することが困難という不便と、平面に書かれたり印刷された文字や絵(墨字)が、手で触れても分からないという不便です。 2つの課題に対して、アナログ一辺倒だった解決策に、近年では技術の進化によってITの技術が加わってきています。 荒川明宏実行委員長に聞きました  このイベントは第1回目から、異なる機関で構成された実行委員会形式により、企画・運営を行っています。 2016年に行われた第11回から実行委員長を務める荒川明宏さんは、視覚障害者が使う製品の販売や各種サポートを行う会社ラビットの代表で、ご自身も視覚に障害があります。 その荒川さんにサイトワールドへの思いをうかがいました。 出展製品・企業の変化は?  「2006年に初めてサイトワールドを開催した時には、視覚障害者専用の製品を作っている企業が多く出展されました。 障害の有無に関わらず共に使える共用品・ユニバーサルデザイン製品を出展している企業はその中の極一部でした。 しかし、共生社会の実現に向けて舵がとられたことも大きく、年々、ユニバーサルデザインの製品が増えると共に一般企業の出展も増えてきています。」 新たに出展する企業には?  「新たに出展する一般企業の人たちは、視覚障害者が多く来場する展示会は経験がないことが多いです。 そんな時、相談があれば、事前に視覚障害者のための小規模な製品展示会にトライアルで出展してもらったりします。 そのトライアルを行う時に、視覚障害者への声のかけ方、説明の仕方、誘導の仕方を伝えています。 そのステップを踏んだ企業も、今回出展してくれましたが、『あの企業の説明はとても分かりやすかった』との声も多く届いています。」 視覚障害者が参加しやすい工夫は?  「サイトワールドは、初めから視覚障害者が参加しやすい完璧な展示会だったわけではありません。 視覚障害者の2つの大きな不便である『思うところに自由に一人で移動することが困難と、凹凸のない文字や絵の読み書きが困難』は、製品の展示会ではさまざまな工夫を行う必要があります。 それが、会場や各社のレイアウトであったり、製品の並べ方だったり、説明の仕方だったりと、幅広いのですが、15回の展示会をトライアンドエラーを重ねながらノウハウやコツが蓄えられてきています。 その積み重ねを文字化すると、サイトワールドにおいての継承だけでなく、他の多くのイベントでも応用できると思います。」 今後のサイトワールドは?  「毎回、多くの視覚障害者が全国から来場してくださっています。大変嬉しいことですが、望む製品が全て展示されてはいないと思います。 まずは、視覚に障害のある来場者が期待する製品が全てある展示会になればと思っています。それには、今まで出展していない分野の企業にも興味を持ってもらえたらと思っています。 そのためには、それぞれの企業の琴線に触れる広報活動が必要だと思っています。」 荒川さんのお話しをうかがって  私も4年ぶりに参加し、来場されている多くの視覚に障害のある人たちとすれ違いましたが、どの顔にも「自分たちの展示会」に来ている安心感と期待感があふれていました。 サイトワールドは15回の回数を重ね、受け入れ側のハード・ソフト両面とも確実に進化していると感じます。 その進化をとめずに、さらに今までに一度も来場、出展していない人、企業が、どうやったら合流するか、できるかは、サイトワールドが次のステージに進むかどうかの決断を要するかもしれません。 どちらの選択を実行委員会がしても、どちらも正しい選択と思えるのです。 星川安之 写真1:点字・触知版の地図 写真2:実行委員長を務める荒川明宏さん 写真3:第15回サイトワールドの風景 8ページ 視覚障害児・者への立体模型の提供 新潟大学 渡辺哲也(わたなべてつや) はじまり  知り合いの視覚障害者から、著名な建築物の模型を3Dプリンタで作れないかと問い合わせがあったのは2015年3月のことでした。  ネットでその3Dデータを見つけ、3D印刷をして届けたところ、大層喜んでくれました。言葉から想像していた形と違っていた、という感想は、触地図を送ったときと同じです。  視覚障害者が音声読み上げでスマホ・タブレット・パソコンを操作して様々な情報を手に入れられる時代ですが、それはあくまでテキスト情報に限ったこと。図形情報へのアクセス手段はまだまだ足りません。 視覚障害教育への模型の提供  視覚障害のある子どもがものをさわってその形を知ることはとても大切です。 そこで、公益財団法人三菱財団からの助成金を得て、都道府県ごとの立体地形模型を作り、盲学校/視覚特別支援学校に届ける試みを2018年から2019年にかけて行いました。 このときにアンケート調査も行い、盲学校/視覚特別支援学校で必要とされる立体模型を明らかにしました。 このニーズに応えるべく、2020年度に採択された科学研究費補助金による研究では、立体模型作りに協力してくれる人を集めて、触察教材を増やしました。 社会科の地形模型、建築物模型、理療科の骨や関節模型、算数・数学の立体計算用模型といったニーズの多かった模型を作りました。 触察3D模型提供プロジェクト  大学入試センターの南みなたに谷和かずのり範さんを研究代表者とする科学技術振興機構の予算による触察3D模型提供プロジェクトが2019年末に始まりました。 だれもが立体模型をさわって形を知ることができる社会を作りたいというのが、自身も視覚障害のある南谷さんの思いです。 渡辺はその協働実施者として立体模型を作り、届ける役割を担っています。このプロジェクト開始直後に新型コロナウイルス感染が広がり、人が集まること、さわることは御法度となりました。 しかし模型はさわらなければ分からない。そこでこのプロジェクトでは、Zoomによるシンポジウムの参加者のうち希望者に事前に模型を送り、これをさわりながら講演を聞く「触察オンラインシンポジウム」というスタイルを築き上げました。 半年ごとに開かれるこのシンポジウムは、視覚障害者とその支援者だけでなく、ユニバーサルなサービスを提供したいと思っている博物館、美術館、庭園などの人たちを巻き込んでいきました。 今後の展開  これまで作った立体模型の3Dデータのうち視覚障害教育で役立つものを集めたWebサイト「触る教材データシェアプロジェクト」を構築しました。 このサイトには、都道府県パズル、東京23区のパズル、富士山、リアス海岸などの地形図、城の模型などのデータが掲載されており、授業や校外学習など必要な機会に、必要な数を学校で3D印刷できます。  もう一つの発展形は触察模型のパッケージ化です。立体模型数種類×数個と説明文のパッケージを作り、各地で開催される勉強会などに使ってもらうのです。 私たちは日本網膜色素変性症協会からの依頼を受け、さわって分かるDNA二重らせんの立体模型と、メンデルの法則を描いた触図を開発し、これらをセットにして、同協会が各県で開く遺伝子勉強会で使ってもらっています。 今後、各所からのニーズに応じて、立体模型・触図の制作とパッケージ化を進めたいと思っています。 写真1:DNA二重らせんの模型 9ページ ユニバーサルデザインに取り組むきっかけ 東京都立工芸高等学校 定時制インテリア科 関戸亮(せきどりょう)  私はもともと建築学科を卒業していることもありユニバーサルデザインに興味をもっていましたが、取り組み始めた一番のきっかけは、東京都立田無工業高等学校に勤めている際に特別支援学校から 「ボッチャのランプ(ボールを投げることが困難な選手が使用する勾配具〈以下ランプ〉)の制作依頼」がきたからです。  ボッチャという競技は、年齢、性別、障がいのあるなしにかかわらず、すべての人が一緒に競い合えるスポーツです。 障がいによりボールを投げることができなくても、ランプを使い、自分の意思をランプオペレーターに伝えることができれば参加できます。  私が携わった特別支援学校ではボッチャ部があり、部員が年々増えランプが1台しかないためランプが足りないとのことでした。 また、既存のランプは設置する際に時間を要したり、荷重をかけると角度が変わってしまうと聞き、いかに競技時間内にランプが本人の思った角度・向きになるかが勝負だと伺い、制作に至りました。 ただ、私一人で作業するのではなく、せっかくだから生徒と一緒に考え制作しようと思い、希望する生徒を募りランプ制作が始まりました。 これがきっかけで毎年、ランプ制作をするようになりました。平成29年度には東京都から都立工業高等学校全体にランプ制作の依頼があり、各工業高等学校が各学校の特色を生かし制作していました。  次に都立工芸高等学校では、東京パラリンピックでの陸上競技の一つ、こん棒投げという競技のこん棒を制作してほしいと東京都から依頼がありました。 定時制インテリア科生徒一同で制作、そのこん棒のロゴもデザインするなど生徒と共に楽しみながら制作しました。こういった形でたくさんのユニバーサルデザインに関わることができました。  ここ最近では、漆芸家:伊良原満美(いらはらみつみ)先生から囲碁の碁盤の制作依頼がありました。目が見えない方も囲碁ができると聞き興味をもちました。 実際に日本視覚障害者囲碁協会の代表理事:柿島光晴(かきじまみつはる)さんとお会いし、何がよくて何がダメなのか等の質問をさせてもらい、制作をすることにしました。 もちろん、生徒と一緒に作業します。まず、最初の試作は木材で土台を作り、マスもレーザー加工機が使えるMDF材を使用し、木材のみでの制作を行い、仕上げに漆を塗りました。 漆は、殺菌効果もあり、コロナも除菌ができるという実績があります。その上で、誰が触っても問題ないように漆仕上げにしました。 しかし、重さがあったりするため、他のアイデアがないか考えたところ、土台をアクリルにするのは?という意見が出て、試作を作りました。これがうまくいき囲碁大会でも使ってくれることになりました。 私は、こういった依頼関係を生徒と共にやることが大切だと思っています。学校としても多文化共生を推進しており、誰もが認めあい、誰もが助け合えるそんな学校をつくっていきたいです。 写真1:木材で試作した碁盤 写真2:アクリルで試作した碁盤 10ページ 共用品から共用建築へ 大和リース株式会社 山本圭一(やまもとけいいち)  私は、父が土地家屋調査士であった影響で、中学生の頃から進路を技術系の大学に進学し、将来は建築に携わることを決めていました。 高校生になったある日、身体検査の一環で色覚検査を受けたところ、異常と診断されました。その検査は、様々な色の文字で書かれたひらがなを読むという単純なものでしたが、私にはこれらの文字が全く見えませんでした。 試験官に「なぜこの文字が見えないのか。」と軽蔑したような目で見られ、とても悔しい思いをしました。その日から「色弱」であることがコンプレックスとなりました。  色弱であるのにこのまま建築の道へ進んで良いのか葛藤しましたが、今さら建築以外の道も思い浮かばず、そのまま大学は建築学科へと進み、店舗建築に携わりたく、大和リースに入社しました。 入社してから夢であった店舗設計の仕事に携わるようになりました。お客様の視点に立ち、お客様のご要望にお応えできるよう業務をこなしていました。 入社して15年くらい経ち自社商業施設の設計を扱うようになり、不特定多数の方を誘導するための、色がとても重要なピクトサインのデザインをするようになりました。 これは自社施設なのでデザインについては自分の責任で決定しなければなりません。色弱である自分がデザインすることが恐ろしく、最初は色彩を使わない濃淡だけのデザインでごまかしていました。 部下が出来るようになると、部下のデザインのチェックを依頼されるようになりました。部下が一生懸命デザインしたピクトサインは、私には色がうまく見えないことが多くこの色はよくない、と指摘すると部下は不服そうな表情を浮かべます。 そこで思い切って「私は色弱で、このピクトサインは分かりづらい。」と部下に自身のコンプレックスを打ち明けました。すると、部下の曇った表情が明るくなり、納得した様子で色弱の私にも分かりやすいデザインへ修正を行ってくれたのです。 この時、今までコンプレックスだった色弱を活かすことが出来るのだと気づきました。色弱である自分が見ることが出来るのなら、より多くの人にとって見えやすいものであるはずです。 色弱である自分の見え方を判断基準にすることで、建築のデザインの幅が広がると確信しました。  そうしてアクセシブルデザインに興味を抱く中、弊社の森田俊作会長が共用品推進機構様の評議員に就任させていただき、星川安之専務理事と出会いました。 そこで星川専務理事から、シャンプーとリンスのふたが工夫されている話に始まり、車椅子ユーザーの方にとって段差は迷惑だが、 視覚障害者の方は段差がないと歩道と車道が分からないため、段差の基準を2センチと決めることで両者が快適に過ごせるようになったことや、 急須・扇子は右利き用に作られていて、左利きの方は日々のちょっとした生活の中で不便な思いをしていることなど、共用品について様々なことを教えていただきました。 私はなんの不便も抱いたことのない段差や、毎日愛用している急須を不便に感じる人がいるのだと胸を打たれました。 そして沸々と高校時代に読めなかったあの文字たちと、私を軽蔑するあの目が脳裏に蘇ってきました。 自分にとっての当たり前は、他人にとっての当たり前ではない。世の人々が快適に暮らせる社会を実現するため、「共用品」を推進しようと心に決めました。  とはいえ、「共用品」を建築でどのように表現すればよいか悩みました。 そこで、ロービジョンの社員である長谷川和美(はせがわかずみ)さんの協力を得て、「共用建築」のガイドラインを作成することにしました。 長谷川さんには厳しくチェックをしてほしいと依頼しました。 触ったら分かる立体ピクトサインは「立体になっているかどうか見えないから没」など、私には気づくことのできなかった指摘に思わず喉を唸らせました。 こうして、「共用品・共用サービスアクセシブルデザイン」というガイドラインを完成することができました。 ・トイレの便器の後ろの壁は濃い色にすると便器の位置がわかりやすい ・階段は蹴上と踏面の色を変えると階段を認識しやすい ・手すりは目立ちやすい色にすると手すりの位置がわかりやすい ・フットスタンプに数字を書くと知的障害者が落ち着く  など、このガイドラインには共用建築を目指す方法が記されています。まずはこのガイドラインを利用し、社内で共用建築を浸透させていき、次第に社会全体へ広げていきたいと考えています。  しかし、まだまだ課題は多く残っています。聴覚障害者に対するインターフォンの在り方。視覚障害者に対するトイレの水の流し方が統一されていない問題。 恐らく私が気づいていない、陰に潜んだ課題もたくさんあるでしょう。どんな小さな声もひとつずつ耳を傾け、改良していきたいと思います。  最近街を歩いていると、「共用建築」を目にすることが増えてきました。我々と同じように、共用建築を通じて多くの人々の生活を便利にしていこうと奮闘する同志たちがいるのだと嬉しく思います。 より多くの人が「共用品」を理解し、共用品の「品」だけでなく「共用建築」を作ることが縦横、前後、上下にさらに広がっていくことで、社会が目指している「誰一人取り残さない共生社会」の実現に近づくのではないかと期待しています。 写真1:【トイレ】小便器と背面壁の配色 写真2:【手洗い自動水栓】吐水口の方向に配慮 写真3:【階段】踏み面や蹴込み、段鼻などの配色 写真4:【手摺】手摺の存在がわかる色使い 12ページ コンビニエンスストアにおける合理的配慮 株式会社ローソン SDGs推進室  全国に約1万4600店舗展開しているローソンには、1日で1000万人ものお客様にご利用いただいています。 障がいの有無にかかわらず、誰もが安心して楽しくお買い物ができるお店作りをするために、当社では「配慮」・「活躍支援」・「学び」の領域で様々な取組みを行っており、今回は「配慮」ついてご紹介いたします。  「配慮」における1つ目の取組みは、店舗従業員用のマニュアルの改訂です。2024年4月1日より改正障害者差別解消法が施行される際、店舗でサポートが必要なお客様に対して合理的な配慮ができるよう事例を含めて改訂しました。 掲載した事例は、共用品推進機構様より「コンビニで良かったこと事例集」をご提供いただき活用させていただきました。お客様の生の声ですので、接客に即活かすことができ、とても参考になりました。  2つ目は「指差しシート」の展開です。コロナ禍、マスク越しのコミュニケーションがうまく取れないとのお声を受け、「耳マーク」の導入と共に、2022年8月にコンビニエンスストアで初めて「指差しシート」を全国展開しました。 全国の自治体や小売店から指差しシートのデータを共有してほしいとのご要望を受け、同11月に一般公開いたしました。これらの背景をふまえ、「指差しシート」は2023年度グッドデザイン賞を受賞することができました。 また、「ポイント使います/ためます」「コーヒーS/M/L/メガ購入します」などの意思表示11個と数字を表記した「コミュニケーションボード」をローソンアプリから閲覧できるように対応しています。  3つ目として手話の学習ができる環境を整備しました。聴覚障がいの方みなさんが手話で会話されるわけではありませんが、よりコミュニケーションを深めるための環境づくりとして、手話動画を作成しました。 「おはようございます」「いらっしゃいませ」など日常使いのものから、ローソンオリジナルの「からあげクンおススメです」など、現在は10本の動画をインナー向けに配信しています。  4つ目は、人権勉強会の開催です。2023年10月社員向けにオンラインで開催したところ、200名以上の参加者があり、店舗での障がい者のサポートについて事例共有をしました。  今後は、マニュアルや対応方法の動画を使いながら、加盟店オーナーさん・店長さんを含め店舗従業員がお客様のご意向に寄り添い合理的配慮ができるよう、継続して情報発信してまいります。  私たちは、(一社)全難聴様と交流をさせていただいており、先日「全国中途失聴者・難聴者福祉大会」へ参加いたしました。 全国からご参加の方々とのコミュニケーションを通じ、ご満足いただける環境づくりの途中だと改めて認識いたしました。 私たちローソンは、「私たちは〝みんなと暮らすマチ〟を幸せにします」のグループ理念のもと、地域のお客様が安心して楽しくお買い物ができるお店作りに今後も日々精進してまいります。 写真1:コンビニで良かったこと事例集 写真2:「指差しシート」(左)、「コミュニケーションボード」(右) 13ページ ユニバーサルサービス 全国ユニバーサルサービス連絡協議会 代表 紀薫子(きのかおるこ)  全国ユニバーサルサービス連絡協議会は、2004年の設立以来、約20年にわたり、ユニバーサルデザインのソフト面への推進に取り組んでまいりました。  ユニバーサルデザインのモノづくり(施設・設備・製品)をハード面、人づくり(情報の発信・人的対応力・コミュニケーション)をソフト面に位置づけ、多様な他者への関りを豊かなものにするための啓発・研修を行っています。 ユニバーサルサービスとは  年齢や性別、障害の有無にかかわらず、「すべての人」を想定し、個々のニーズを理解し、サービスの受け手目線を意識し展開するサービスです。  サービスにおける人づくりが欠かせない例のひとつに、宿泊施設浴室の詰め替え用ボトルをあげてみたいと思います。  せっかくシャンプーやボディーソープのキザミがついていてもボトル側面と異なるキザミのポンプが据えられている場面に出くわすことがあります。  「製品の工夫を活かすも損なうも人しだい。」であるならば、ここに求められるのは、キザミの必要性を理解し、工夫を活かすことができる人づくりなのではないでしょうか。 「あなたにまた会いたいわ」  白杖を持つ人の案内にガイドヘルプの基本を体験してもらった受講者からうれしい出来事を聞いたことがあります。 横断歩道の手前で困っている様子の白杖を持つ人に声をかけ、渡り終えるまでの案内をしたそうです。 横断歩道を渡る間に、 「あなたはどうしてガイドヘルプができるの?」「ご家族に目の不自由な人がいるの?」 と聞かれ、 「いえ、研修で学びました。」 と答えると、 「今はそんな研修があるのね。助かるわ。」 との会話を交わしたそうです。 そして、横断歩道を渡り終えたところで白杖を持つ人から、 「今日は、あなたに会えてよかったわ。」「また会いたいわ。」 と言ってもらえたという報告でした。 ユニバーサルサービスの今後  今まで接点がなかったためにどう関わればよいのかがわからず、「見て見ぬふりをしてきた。」や「困っていることに気づかずにいた。」を解決していくことがユニバーサルサービスの役割と考えています。  ユニバーサルサービスの広がりが、「あなたに会えてよかった。」を増やすことにつながり、共生社会の実現に寄与することを願って今後も活動に邁進していきたいと思っています。 写真1:アイマスク・ガイドヘルプ体験 写真2:車いす体験でバリアチェック 14ページ キーワードで考える共用品講座 第138講 「共用品からの発展」 日本福祉大学 客員教授・共用品研究所 所長 後藤芳一(ごとうよしかず) 1.共用品からの発展とは  共用品の発展には、①共用品自体の変化と、②体制や枠組という取組みの姿の変化がある。 発展の段階を大筋でみると、最初は、①と②による、共用品自体やその外縁の拡張が中心であり、専門家や中核となる組織が推進した(Ⅰ)、 浸透するとともに担い手がふえて自律的に普及が進むようになった(Ⅱ)、共用品の取組みは他の社会課題対応へも寄与できる可能性(普遍性)を示唆する(Ⅲ)。 2.共用品自体の深まりと外縁の拡張(Ⅰ)(その1:定義との関係)  共用品は「身体特性や障害にかかわらず、より多くの人が利用しやすい製品・施設・サービス」である。この定義に添うと、共用品の発展は「利用者」や「提供の形態」が進化することである。  「利用者」は、当初は障害のある人を想定し→後に何らかの不便さや一時的な不便さのある人(妊産婦、左利き)に広げた→普及が進んで広く提供されるに連れ利用者を特定することから自由になりつつある。 「提供の形態」は、モノやサービスから→建築や交通などインフラに広がり→今後は社会全体に拡張が期待される。  「利用者」を特定しない意義は、提供側が枠を設けないことで利用者ファーストの次元の高い包摂を実現でき、「提供の形態」を社会全体に拡げれば、継ぎ目のない環境で迎えられる。 3.共用品自体の深まりと外縁の拡張(Ⅰ)(その2:取組みの姿)  取組みの姿も次のように変化している。要請に触れる現場の対応(例:家族や当事者の工夫、OTが自助具を提供)(第一段階)→送り手側のネットワーク化(例:E&Cプロジェクト、日本玩具協会)(第二段階) →組織で事業として推進(例:共用品推進機構、交通エコロジー・モビリティ財団)(第三段階)→現場の対応の広がり(例:食品スーパーが買物かごに要支援の表示)(第四段階)。  第二と第三段階で中核組織が求心的・プッシュ型で進めたのは、情報(例:不便さの特性、提供手法)の共有、デザインの標準化(例:識別法)、社会への働きかけ(例:当事者団体と連携、政策へ反映)を要したためだ。第四段階には社会に担い手が広がった。 4.自律的な普及の拡大(Ⅱ)  第四段階が自律的な普及の段階だ。社会の意識が高まると、現場発の工夫が誘発される。その結果、分散型でボトムアップの比重が増す。現場の工夫という点は第一段階に通じるが、第一段階はニーズに直面した現場に限られた。  第四段階は担い手が広がって「だれでもどこでも」になり、専門家任せに陥らず「我がこと」になる、専門家や中核機関からの「民主化」ともいえる。 これらを通じて集団や社会の意思になる(注:集団や社会の意思:集団のメンバーが共有する目標や方向性、正義や公平などの価値観、行動規範)。  その過程で「当たり前」の水準が上がる。障害者差別解消法は今年4月から事業者にも合理的配慮を求める。 これは幅広い合意に基づく社会の意思を要し、「だれでもどこでも」があって初めて可能だ。ただ昨年、市川沙央(いちかわさおう)は「ハンチバック」(芥川賞)で、紙で読める読書が「当たり前」なのか、と、障害当事者の視点から鋭く問うた。 めざすべきゴールはなおはるか先と知らされる。 5.他の課題対応への寄与(Ⅲ)  共用品は日本発で世界をリードする。取組みの背景には人への気遣い、好奇心、意匠の工夫、丁寧なモノ作り、ボトムアップ、当事者や多職種の隔てない参加、楽しくやるなどがある。 これらは日本の取組みの粋でありずっと磨いてきた日本の知恵だ。共用品は、日本の知恵が社会課題の解決に寄与する可能性を示したといえる。  社会課題には環境、水・食料、格差・貧困、災害などが山積する。課題を一度抽象化して日本の知恵のレベルに上げて俯瞰し、その知恵を用いて現実に処する。 4までは「共用品×見えること」だった、本項は「他の課題×抽象(形而上)と往復」という発展策だ。 15ページ DCD(発達性協調運動障害) を便利な道具でサポート 漫画家 オチョのうつつ  息子がDCD(発達性協調運動障害)と診断されたのは、小学5年生の初夏のことです。DCDとは、脳の不具合で運動や動作がぎこちなくなってしまう発達障害のひとつです。  小さな頃からブランコがこげなかったり、縄跳びができない。小学生になると書字の汚さで先生から注意される。 DCDを知らなかった私たち親子は、手探りで練習を重ね戸惑いの日々を過ごしていました。  ある日X(旧ツイッター)でDCDを知り、縁あって青山学院大学の古荘純一(ふるしょうじゅんいち)先生に診断していただくこととなりました。そこで先生のことばに驚きました。  「スパルタは無意味です。字なんか100回練習しても上手になりませんよ」  DCDは治るものではないので、道具の工夫が必要とのこと。すぐに私は使いやすい文房具やリコーダーを購入しました。 本人は使い始めはピンときていなかったようですが、夏休みのリコーダーの宿題で「常識の範囲内の練習量」で吹けるようになったこと、 握りやすいシャープペンシルで勉強すること、握ってでも円を描けるコンパスなど今まで感じていたストレスが軽減されたことで憂鬱だった学校生活が明るいものに変わっていきました。  シャープペンシルはコクヨの「鉛筆シャープ0・9mm」、笛はキョーリツコーポレーションの「ヌーボ」。 穴にシリコンの弁がついていて、細かい指の動作が苦手な息子でも簡単に吹くことができました。 コンパスはソニックの「くるんパス」を使っています。  このように闇雲にスパルタ特訓するのではなく、目線を変えて便利な道具を使うことで親子に笑顔が増えてDCDを知る前と比べて快適な生活を送ることができるようになりました。  今は便利な道具がたくさん作られています。困りごとのある人もそうでない人も、皆がそれらを使って笑顔で過ごせるようになることを願います。 漫画: 1コマ目 [DCDと診断されたばかりの頃]お母さん『便利なグッズを渡したけど使い心地はどうなんだろう』 2コマ目 [1年後]息子「お母さん、この握りやすいシャープペン、赤鉛筆も欲しい」(買って~)。お母さん「あ、そうだね 赤もあるといいね」(ネットですぐ買う) 3コマ目 [コクヨ鉛筆シャープ赤(1.3mm)を購入]お母さん『本人が本当に使いやすいと実感したことがわかるのには時間がかかることもあるのだなあ』 写真:書籍『なわとび跳べないぶきっちょくん:ただの運動オンチだと思ったらDCD(発達性強調運動障害)でした!』(合同出版) 16ページ モノ・サービスからの発展 【事務局長だより】 星川安之 ■モノ  障害の有無、年齢の高低等に関わらず共に使える製品(共用品)の原点の一つは盲人用具である。  その盲人用具が、日本で本格的に普及が始まったのは1964年。点字図書の製作貸し出しを行っていた日本点字図書館の創立者である本間一夫(ほんまかずお)館長(当時)がその年、 ニューヨークで開催された第4回世界盲人福祉会議に出席した際、米国、欧州の盲人用具の販売施設を訪問し、150点ほどの盲人用具を日本に持ち帰り、それがきっかけとなり、日点に用具部が誕生した。 それまでは、日本の盲人用具は、点字を書くための点字盤、歩行のための白杖、そして盲人用に改造された限定生産の手巻き式腕時計くらいであったが、 用具部設立後は、様々な盲人用具が開発、販売されるようになり、1974年には、日常生活用具給付制度が盲人用具まで広がり、その普及はさらに広がっていった。  盲人用具の普及開始から27年たった1991年4月、日本点字図書館の3階の集会室で共用品を普及するための活動が始まった。 E&C(エンジョイメントアンドクリエーション)プロジェクトと会の名前を付けた第1回の会合には、さまざまな分野から20名のメンバーが集まり、未だ名前のなかった「障害の有無、年齢の高低等に関わらず共に使える製品」の普及が開始された。 製品としたのはそこに集まったメンバーが所属する多くの会社が製品を開発・販売していたことも大きかった。 ■コト  その後E&Cプロジェクトが視覚障害者279名へ行った日常生活における不便さ調査では、製品の不便さだけでなく、店、情報に関しても数多くのコメントが寄せられた。 調査で分かった不便さは、プロジェクト内に班を複数作り、課題解決への検討が開始された。当初「家の中」、「家の外」の2つに分けその後、操作性、パッケージ、カード班と並んでサービスの班も作られ検討が始まった。  モノからコトへの発展は、視覚障害から聴覚障害、肢体不自由へと対象を広げていった。その広がりを進めていったのはそれぞれの障害を対象とした「不便さ調査」であった。  サービスは、E&Cプロジェクトが1999年に財団法人になった年に、郵政事業庁(当時)からの依頼で作成した郵便局における障害者・高齢者の応対マニュアルがきっかけとなり、 その後、公共窓口、銀行、万博、店舗などに広がり、機構の事業の一つに位置付けられていった。 ■社会  共用品が始まって33年、共用サービスからは25年、誰もが暮らしやすい社会には、情報、建物、インフラ、地域、国際連携など、多くの課題が残っている。 今までの積み重ねを大切にしながら、飛躍・発展する時期にきていると感じている。 共用品通信 【イベント(対面)】 キムウンニョンさん対談会 共用品展示(11月3日) 障害者週間(千代田区)(12月1日~7日) 練馬区視覚障害者協会(12月10日) 【イベント(ハイブリッド)】 本の街で心の目線を合わせる 第3回(11月16日) 本の街で心の目線を合わせる 第4回(11月23日) 本の街で心の目線を合わせる 第5回(11月24日) 第24回オンライン活動報告会(12月8日) 【会議】 新たな日常生活における障害者・高齢者アクセシビリティ配慮検討小委員会(1月12日) 網膜色素変性症協会 共用品WG(11月2日) 網膜色素変性症協会 共用品WG(12月7日) 網膜色素変性症協会 共用品WG(1月11日) 【講義・講演】 経済産業省(10月30日、星川) 東京都消費生活センター(10月31日、星川) 訪問看護サミット(11月11日、星川) 網膜色素変性症協会 福祉WG(11月12日、星川) 学習院女子大学(11月13日、田窪) テクノエイド協会(11月17日、星川) 東京大学(11月17日、星川) 福祉用具プランナー(11月17日、星川) 東京都杉並区立和田中学校(11月25日、森川) 網膜色素変性症協会 就労WG(11月25日、星川) 富山文化財団(11月26日、星川) 荻窪地域区民センター(11月28日、星川) 港区消費者協会(12月6日、星川) 宮崎県立富島高等学校(12月6日、田窪) 東京都立大学(12月13日、星川) 港区消費者協会(12月15日、星川) 東京都千代田区立九段小学校(12月15日、森川) 【報道】 時事通信社 厚生福祉 11月10日 みんなの会議 時事通信社 厚生福祉 12月5日 袋の口が開けられない 日本ねじ研究協会誌 10月号 視覚障害者用具 日本ねじ研究協会誌 11月号 聴覚障害者用具 日本ねじ研究協会誌 12月号 身体障害の人たちの用具 トイジャーナル 12月号 サイトワールド トイジャーナル 1月号 牛乳パックの切り欠き 福祉介護テクノプラス 12月号 実演 みんなの会議 福祉介護テクノプラス 1月号 千代田区福祉まつり 高齢者住宅新聞 11月号 歩く 高齢者住宅新聞 12月号 家の立体模型 シルバー産業新聞 1月10日 点字表示 アクセシブルデザインの総合情報誌 第148号 2024(令和6)年1月25日発行 "Incl." vol.25 no.148 The Accessible Design Foundation of Japan (The Kyoyo-Hin Foundation), 2024 隔月刊、奇数月25日に発行 編集・発行 (公財)共用品推進機構 〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2-5-4 OGAビル2F 電話:03-5280-0020 ファクス:03-5280-2373 Eメール:jimukyoku@kyoyohin.org ホームページURL:https://www.kyoyohin.org/ja/ 発行人 富山幹太郎 編集長 星川安之 事務局 森川美和、金丸淳子、松森ハルミ、木原慶子、田窪友和 執筆 オチョのうつつ、紀薫子、後藤芳一、関戸亮、山本圭一、渡辺哲也、㈱ローソン SDGs推進室 編集・印刷・製本 サンパートナーズ㈱ 表紙 Nozomi Hoshikawa 本誌の全部または一部を視覚障害者やこのままの形では利用できない方々のために、非営利の目的で点訳、音訳、拡大複写することを承認いたします。 その場合は、共用品推進機構までご連絡ください。 上記以外の目的で、無断で複写複製することは著作権者の権利侵害になります。