インクル153号 2024(令和6)年11月25日号 特集 いろいろな集い Contents 第16回 視覚障害者向け総合イベント サイトワールド2024 2ページ ADシンポジウム2024開催報告 4ページ 第22回 千代田区ふれあい福祉まつり 知ってますか? 福祉のマークで出展 5ページ 東京人権啓発企業連絡会「人権啓発担当者研修会」 6ページ 創立30周年を迎えて 8ページ (公財)交通エコロジー・モビリティ財団の30年の歩みとこれから 9ページ 公益財団法人すこやか食生活協会40年の歩みとこれから 10ページ キーワードで考える共用品講座 第143講 11ページ 電話リレーサービス「よかったこと調査」 12ページ 全日本葬祭業協同組合 松本勇輝(まつもとゆうき)専務理事に伺う 13ページ 改訂増補版『アクセシブルデザイン』 14ページ ボードゲーム専門店「すごろくや」コンショルジュ 15ページ 事務局長だより 16ページ 共用品通信 16ページ 2-3ページ 第16回 視覚障害者向け総合イベント サイトワールド2024 入口に長蛇の列  11月1日(金)午前9時、東京錦糸町駅南口にあるすみだ産業会館サンライズホール(8階)の入口には、白杖、盲導犬で単独で来られる視覚障害者、同行援護者と共に来られている人たちが、 これから3日間行われる「サイトワールド」の初日10時の開場を待つため長蛇の列を作っていた。 その時会場内では、42のブースの各出展者が、同展示会の事務局長である荒川香織(あらかわかおり)さんの朝礼での報告を真剣に聞いていた。 荒川さんの連絡事項では、サイトワールドには、視覚障害者が一人で来られる方が多くおられること、「その方々が白杖を上にあげたり、手を降っていたら、各出展者の人も積極的に声をかけていただきたい、 そして、各社のブースでの説明が終わったら、次はどのブースに行かれたいかを聞き、そのブースまで誘導していただけたら大変ありがたい」と依頼した。 16年ぶりの出展  共用品推進機構は、今年で16回を迎える視覚障害者向け総合イベント「サイトワールド」に、12年ぶりに出展させてもらった。 このイベントは、視覚障害者用の電子ノートの開発を行っていた会社の社長をされていた榑松武男(くれまつたけお)さん(現同ベントの副実行委員長)と、日本点字図書館の館長をされていた田中徹二(たなかてつじ)さんが、 ドイツで行われていた視覚障害者向けの製品展示会「サイトシティ」を訪問、感銘を受け日本でも行おうと決意し、多くの関係者に働きかけ16年前にはじめて開催された。  初回の出展者は、日本盲人社会福祉施設協議会の盲人用具部会に参加している企業が主だった。 点字ブロック、触知案内図、白杖、各種日常生活用具、そして普及が本格的になる前のパソコンを初めとするIT機器が並び、3日間の会期中、北海道から沖縄まで数多くの視覚障害者と関係者が押し寄せた。 そしてどのブースにも、長い場合は1時間も足をとめ、各ブースの製品に触れ、音・音声を聞き、自分の生活に役立つかを確認している姿が印象に残っている。 その光景が16年たった今回もどのブースでも見受けられた。 共用品推進機構のブース  機構以外のブースでは、製品・サービスを販売している企業・機関が、歩行誘導、拡大読書器、活字読み上げ器、パソコン、ソフトウェア、 点字プリンター、携帯電話・スマホ、家電製品、UD製品、サービス、日常生活用品、研究、などを紹介したり、一部販売も行っている。  機構は、製品を製造・販売しているわけではないが、多くの企業と連携し、視覚障害の有無に関わらず共に使いやすい製品の普及に務めてきた。 今回は、その中から包装・容器、公共トイレの操作部の位置のルール、玩具、帽子、靴など46点を2ブース使って紹介した。 トイレの流すボタンの位置  共用品・共用サービスに関する日本産業規格(JIS)は、国際標準化機構(ISO)に提案し承認された時に「アクセシブルデザイン」と訳され、現在JISは48種類制定されている。 今回、ブースではトイレの操作部の位置(JIS S 0026)の模型を作成している日本レストルーム工業会にご協力をいただき、模型の展示とともに、来場者への説明をお願いした。  この規格は、公共トイレの流すボタンの位置を探すのが難しいという複数の当事者の声がもとになってできたもので、トイレットペーパーホルダーの上に「流すボタン」その左横に「緊急の呼び出しボタン」を配置するものである。 包装・容器  中身が異なるが包装容器の形状が同じものは、以前のシャンプー・リンス、缶アルコール、家庭用ラップ、ジャム、ソース、ふりかけのように、世の中には沢山ある。 今回は、その中から「識別方法になんらかの工夫がある包装・容器」を紹介した。 玩具  玩具は、視覚障害児も共に遊べる「共遊玩具」を最初に手掛けたタカラトミーの「剣を刺す度に音が鳴り、4色の剣が触って区別できる」などの工夫がある黒ひげ危機一発を紹介した。 さらに、ブラザー・ジョルダン社が扱っている書いた文字や絵が浮き出てまた消せる小型のボードも紹介した。 靴と帽子  靴「あゆみシューズ」(徳武産業)と、帽子「アボネット」(特殊衣料)は、視覚障害者だけを対象とした商品ではないが、サイトワールドの他のブースでは対象としていない分野のため、紹介させていただいた。 封筒と不在連絡票  さらには、ポストに入ってくるものとして、富士山のマークが凸表示になっている静岡県の封筒、ネコの耳の切り欠きがあるヤマト運輸のご不在連絡票を紹介させてもらった。 アンケート  今回の出展の目的は、視覚障害者に共用品を知ってもらうと共に、来場者に展示品に関しての意見を聞くことであった。 どの商品も便利だが、知らなかった人がまだ多く、さらには、あとひと工夫(種類も知りたい)など多くの要望も聞くことができた。 各社にフィードバックして次にどう進むか、各社、各業界と考えていくのが楽しみである。 星川安之(ほしかわやすゆき) 写真1:ブース写真 写真2:公共トイレの操作部の模型展示 写真3:工夫がある包装・容器 写真4:玩具 写真5:靴や帽子 写真6:封筒やご不在連絡票 4ページ ADシンポジウム2024開催報告 はじめに  2003年に発足したアクセシブルデザイン推進協議会(ADC)は、(一財)家電製品協会、(公財)交通エコロジー・モビリティ財団、(公財)テクノエイド協会、 (一社)日本ガス石油機器工業会、(一財)日本規格協会、(公社)日本包装技術協会、(公財)共用品推進機構の7団体が幹事となり活動を続けている任意団体です。  ADCでは、アクセシブルデザイン(AD)・福祉用具関連の調査、開発、標準化、普及、国際化等の事業について、業界横断的に定期的な情報交換・共有を行っています。 特に普及事業の一環として行っているシンポジウムは毎回好評をいただいているイベントです。テーマは、その年にふさわしい(ニーズのある)内容を設定しています。  本誌では、2024年10月4日(金)にオンラインで開催し、約100名にご参加いただいた「ADシンポジウム2024」についてご報告します。 今年度のテーマは「スポーツ」  基調講演は、スポーツジャーナリストとして活躍中の増田明美(ますだあけみ)さんをお迎えしました。 「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」、「パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会」を通して、パラスポーツの配慮や工夫、選手の人としての面白さについてご講演いただきました。 また緊急企画として2025年11月に開催される「東京2025デフリンピック」について、倉野直紀(くらのなおき)さんよりご講演いただきました。 ADCの活動報告については、星川安之ADC幹事が行いました。 参加者の感想  ここでは多数寄せられた参加者の感想を一部ご紹介します。  「増田さんらしい語りの中に、大変重要なメッセージがたくさんあり参考になった」、「パラスポーツに限らず、増田さんの選手への応援はいつも温かいと感じた」、 「放送やニュースでは伝えられない現地の様子を知ることができ、興味深く勉強にもなった」というコメントが寄せられました。  倉野さんの講演については、「デフリンピックの歴史や競技の特性など分かりやすく理解でき大変良かった」、「メッセージが良く伝わった。 当事者のみの運営ではなく、協働運営で取り組みたいとのお考えに強く賛同した」、「デフリンピックや2025年の東京大会について知ることができた。 もっと広くデフリンピックについて、デフスポーツについて、デフアスリートの活躍について広まっていくと良いと思う」という感想をいただきました。  ADCの活動については、「各団体が多様な活動をしていること、それだけでなく互いに交流しながらより豊かな社会創造を目指されていることが良く分かった」、 「日本発信の規格が国際標準となったものが、自分が思っていたよりも多くあることに、少し誇らしく思えた」などのコメントをいただきました。 おわりに  来年度のシンポジウムは、いただいたご意見を参考にテーマを設定したいと思っています。 今回ご参加が難しかった方も、次回を楽しみにしていただけますと幸いです。 森川美和(もりかわみわ) 写真1:増田明美さん 写真2:倉野直紀さん 5ページ 第22回 千代田区ふれあい福祉まつり 知ってますか? 福祉のマークで出展  10月12日(土)10時~15時、今年で22回目となるふれあい福祉まつり実行委員会主催の「ふれあい福祉まつり」に、本年も共用品推進機構として出展しました。 例年は、十数点の共用品を展示し、それらに関係するクイズに答えてもらい、正解すると景品を渡す参加型のブースを展開し、人気のコーナーになっていました。 今年は、数あるマークの中でも福祉に関係するマークを紹介するコーナーに決め、準備を始めました。 準備段階  マークをテーマにすることに決めたきっかけは、百円ショップで、マークに関する「カルタ」を見つけたことでした。 知っているようで正確には何を示すか分からないマークもありました。次に、図書館に足を運び「マーク」と題名に付く本を探すと10冊ほどが見つかり、 その10冊に共通して紹介されている福祉関係のマークを探したところ、32種類のマークを抽出できました。共用品推進機構に与えられたスペースは、3メートル×2.5メートル内で、長テーブルが2台です。 はじめに考えたのは、各マークを10センチ四方の厚紙の表面に描き、裏返すとそのマークの名称や意味を表示することでした。 実際に32種類のカードを作って行ってみると、裏返すのに少々時間がかかることが分かりました。 そのため、裏返しにしやすいように、三角型の立体にし、前後にマークを描き、上部を持って裏を見ると答えが書いてあるしかけにしました。 クイズ  次は、クイズづくりです。例年は、A4の用紙に3問出題、一つの問題に選択肢を3つ用意し正解と思うところに〇印をつけてもらっていました。 今年は、4種類のマークを左側に示し、右側にマークの意味をランダムンに配置し、正解を線で結ぶ仕様にしてみました。これをA4サイズで、8種類作りました。 工夫したのは、問題は違いますが、正解の線の引かれた方は全部同じになるようにしたのは、正解か不正解かを、当日担当者がすぐに判断できるためでした。 マークは平面  ここまで準備をしてきて、マークは全て平面に印刷されていて、視覚に障害のある人が、来られた時に、触って確認することができないことに気付きました。 そこで、平面の紙の黒い部分だけ1ミリ程度、盛り上げてコピーできる機器が、日本点字図書館にあることを思い出し常務理事の伊藤宣真(いとうのぶざね)さんに相談したところ、 視覚障害に馴染みの深いマーク10種類を立体コピーで作って下さり、会場で展示することができました。 当日  そんな準備段階を経ての当日は、開場と同時に子どもから高齢者まで多くの人が閉会まで途切れることなく、マーククイズに熱中してくれました。 さらには、世の中の実際のマークづくりを行っているマーク博士である児山啓一(こやまけいいち)さん、竹島恵子(たけしまけいこ)さんも応援にかけつけてくれ、 「マーク講座」も実施することができました。 星川安之 写真1:ブース写真 写真2:ふくしまつりクイズ 6-7ページ 東京人権啓発企業連絡会「人権啓発担当者研修会」 株式会社帝国ホテル  原田昌彦(はらだまさひこ) 日本電信電話株式会社 小野寺淳子(おのでらじゅんこ) 人権啓発担当者研修会  私ども東京人権啓発企業連絡会は、本年9月27日に公益財団法人共用品推進機構様から四名のみなさんを講師にお迎えし、東京都品川区立総合区民会館(きゅりあん)において、終日にわたる「人権啓発担当者研修会」を実施いたしました。 本研修会は当会で活動する会員企業の人権啓発担当者を対象に実施する研修の一つとして3年毎に開催するものです。今回は113名が受講いたしました。 東京人権啓発企業連絡会とは  東京に本社を置く企業を主体に122社(グループ企業を含め約150万人)で組織されている任意団体です。 1979年11月に発足して以来、「自主的運営と全員参加の精神」の基本理念をもって、企業の立場から同和問題(部落差別)をはじめ、さまざまな人権問題の解決に向けて取り組んでいます。 本年で設立45周年を迎えました。 当会の活動の目的  人権はCSR(企業の社会的責任)の基盤との認識のもと、会員各社等が社内の研修啓発に取り組み、人権意識を高め、差別のない企業づくり、働きがいのある職場づくりを通じて、人権の尊重が企業文化として定着することをめざして相互研鑽していくことです。 同時に、企業の立場から社会啓発につながる活動に取り組み、人権の輪の広がりを図っていくことです。 研修会を実施するにあたり  当会は会員企業が9つのグループに分かれ活動しております。本研修会の企画・運営は、私たちが所属する第一グループ(14社15名)が担当いたしました。 本研修会は、①会員企業の担当者が、社内の人権啓発に役立つ研修スキルや専門知識を学ぶ。②担当者間の情報交換、相互啓発により、当会全体のレベルアップを図ることを目的に開催しております。 今回、私たちは、「伝える・表現する」を研修テーマとすることに決定しました。議論を重ねる中、グループメンバーの一人が受講した共用品推進機構 事務局長・専務理事 星川安之(ほしかわやすゆき)さんの講義が、今回のテーマに沿った内容で有意義だったとの推薦があり、 早速ご相談させていただきましたところ、ご快諾いただくとともに、星川さんから「共用品」を通して、アクセシブル社会を考える一日になる研修会をご提案いただきました。 研修会に向けては、事前にワークショップの体験を当グループに実施いただくとともに、グループの議論にも参加、研修会の内容を一緒に考えていただき、私どもの要望にマッチした研修内容にブラッシュアップしてくださいました。 研修プロブラム  午前は基調講演として「アクセシブル社会を考える」と題し、星川さんから製品とサービスに工夫を加えることで、誰もが安心・安全に社会生活を過ごせることに繋がることを学びました。企業と共に試行錯誤を繰り返し、良い社会を作りあげていく努力を知りました。 午後からはワークショップ「誰もが行きたくなるイベント~障がいの有無、年齢の高低、さまざまな違いに関わりなく行ける、楽しめる、イベントを企画する~」を実施、 「町内の夏祭り」と「ファミリー感謝デー」の二つのテーマでグループ討議(各グループ5~6名、四会場に分かれて実施)に二時間じっくり取り組みました。 討議後、各会場において、各グループが考えた「誰でも行きたくなるイベント」を発表、各会場をご担当いただいた講師(星川安之さん、望月庸光(もちづきのぶあき)さん、森川美和(もりかわみわ)さん、金丸淳子(かなまるじゅんこ)さん)から講評をいただくとともに、 自分自身が参加したくなったイベントを参加者が投票し、各部屋の代表グループを決定しました。全体の発表会では、代表グループによる、誰でも楽しめる工夫を盛り込んだユニークな発表で盛り上がり、最後に星川さんによる総括の講評で研修を締めくくりました。 「共用品」展示を通じて  今回の研修会では、共用品推進機構様から38点の共用品をお借りし、「触ってわかる」「見てわかる」「片手でできる」「いろいろな工夫」「点字がついている」の五つのカテゴリーに分け、会場ロビーに展示し、共用品を知る機会といたしました。 説明は共用品推進機構様を訪問し、展示品の用途や使用方法の解説を受けたメンバーが担当いたしました。「基調講演で紹介された共用品を実際に『見る、触れる』ことができたことは貴重な体験となった」 「何気に知らずに使用している日用品にも共用品が含まれていることに驚いた」などのコメントが受講者から聞かれました。 研修後のフォローアップ  本研修会後、共用品推進機構様作成の解決ヒント集「みんなのまつり」、「スポーツ施設編」及び「みんなの会議」を受講者へ共有し、研修での学びを深める一助となるようにいたしました。 研修受講者の声  受講者の感想を一部ご紹介いたします。 「共用品という切り口でのお話は初めてお聞きし、星川講師自身の体験談を多く交えたお話がわかりやすかった」 「講演に感銘を受けたこと、その講演で得た知識をグループワークで楽しく深めることができ、大変有意義な一日でした」 「共用品について考えるきっかけになった。障がい者の困りごとを想像するということは普段できていないので、そのような考えで一日を過ごすことができたのは大変有意義でした」 「午前中の講義で学んだことを午後のワークで応用できた。テーマ設定が日々の啓発活動に活かせる内容だった」など。 研修会を実施して  「共用品」との出会いは、一人ひとりの違いを理解し、困りごとに気付いたらどうすればよいかを考える、という人権尊重のベースとなる考えに触れる貴重な機会となりました。 当会の会員各社における人権啓発活動に役立つ大きなヒントをいただきました。  星川さん、望月さん、森川さん、金丸さんに多大なるご協力を賜りましたこと感謝申し上げます。 写真1:基調講演 写真2:ワークショップ(発表) 写真3:全体会(発表) 写真4:共用品展示 8ページ 創立30周年を迎えて 公益社団法人日本網膜色素変性症協会(JRPS)副理事長 加納猛彦(かのうたけひこ)  弊協会の創立は1994年の5月、今年で30周年を迎えました。 網膜色素変性症の多くは夜盲から始まり、徐々に視野・視力等の視機能が低下し、失明する可能性もある進行性の難病です。次に弊協会がどのように創立されたのか振り返ってみます。  30年以上前から、網膜色素変性症の治療法を確立するために国際網膜色素変性症協会(現国際網膜協会)がありましたが、日本にはそのような組織はありませんでした。  その国際会議に千葉大学の足立恵美子(あだちえみこ)先生が出席されて、日本支部の創立をその会議の中で強く要請されました。 帰国後、足立先生は千葉のライオンズクラブに相談したところ、ちょうど同クラブの創立30周年を向かえるところで、周年事業として寄付をいただきました。 それを基にして、当時国立障害者リハビリテーションセンターへ通っておられた患者の小野塚有可(おのづかゆか)さんを会長として、学術・支援・患者の三位一体の組織として、千葉大学の医局で産声を挙げました。 それ以降「私たち自身で治療法の確立とQOLの向上を目指す」をスローガンに掲げてこれまで活動をして参りました。  このQOLのL(Life)は一般的には生活と訳しておりますが、私はここでいうLは人生とか生きることと思っています。この病気を宣告された折に、思いもつかないこれまで聞いたこともない病名を聞かされて非常に悩みました。 さあ今後年老いた父母を抱えて幼い二人の子供をいかにして育て上げるかを妻と真剣に話し合い、どう生きていくか、どんな人生にしていけるかを考えました。  最初のスローガンである治療法の確立ですが、難病ですので、いくら研究しても成果が挙がりません。つまり研究者が少なくなっていきました。それではいくら待っても治療法は見つかりません。 どうしたらいいのか、どうしたら研究をしてもらえるのかを考えました。それには、研究者を増やすこと。若い情熱のある研究者を一人でも多く増やしましょうと、新たに賞を創設し研究助成をしてはどうか、となりました。 これまた千葉ライオンズクラブが、バックアップを申し出てくださいました。  1997年度から研究助成を公募で行い、学術の先生方にはメインで厳正な審査をしていただき、研究助成をすることが始まりました。今年度まで28回継続することができ、受賞された先生は60名を超えています。  組織も当初は任意団体でしたが、2016年5月からは公益社団法人として活動しています。公益法人が認められたのも、発足以来、地道に活動してきた結果かと思っています。  今では全国に40ほどの都道府県のJRPSが活動しており、それぞれ年間多くの交流会・医療講演会・各種研修会等を開催しています。  また、本部としてもQOL向上推進委員会の下に共用品WGを設けて、共用品推進機構の星川安之さんに協力していただき、 視覚障害者の日常生活において「お勧めのモノやコト」、「お勧めの工夫」について検討を重ね、情報を協会誌やHPへ掲載する等、患者のQOLの向上に努めております。  最後に、私たちはいつまでも患者ではいたくありません。患者から抜け出たいのです。その一念で日々暮らしております。  弊協会は治療法の確立は必ず実現してもらえると信じており、その折には発展的解散をして、OB会・ OG会へ移行することを最終的目標にしております。  どうぞ皆様のご理解とご支援を宜しくお願い申し上げます。 公益社団法人日本網膜色素変性症協会 https://jrps.org/ 9ページ (公財)交通エコロジー・モビリティ財団の30年の歩みとこれから 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団バリアフリー推進部 澤田大輔(さわだだいすけ)  公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団はその前身である交通アメニティ推進機構の時代を含め創立30周年を迎えました。 1994年9月、当時の運輸省、日本船舶振興会や交通事業者、地方公共団体等の幅広いご支援とご協力によりに設立された交通アメニティ推進機構の目的は、 高齢者や障害のある方々が安全かつ快適に公共交通機関を利用して移動できるよう鉄道駅等のエレベーター・エスカレーターなどのバリアフリー施設整備に対する支援や啓発、広報及び調査研究等を行うことでした。 阪神・淡路大震災が当事者参画の原点  設立直後の1995年1月に阪神・淡路大震災が発生しましたが、当時の機構は震災により甚大な被害を受けた「阪急伊丹駅」と「神戸港中突堤中央ターミナル」をバリアフリー・ターミナルとして復興することになりました。 利用者の意見を取り入れ先進的なモデルとなる成果を上げることができましたが、その経験は、誕生間もない組織にとって自らの使命を再確認する機会となりました。  その後、京都議定書が採択された1997年には国内外における課題である運輸部門における地球環境問題への対応のための事業を追加し、「交通エコロジー・モビリティ財団」に名称変更しました。 交通バリアフリー法  2000年に公共交通機関の施設や車両のバリアフリー化を総合的に進める交通バリアフリー法が成立しました。 当財団は法律の移動円滑化基準に基づくバリアフリー整備ガイドライン策定の事務局を担ったほか、標準案内用図記号(ピクトグラム)の作成、 法律の指定法人としての情報提供(鉄道駅などの乗り換えバリアフリールートを案内する「らくらくおでかけネット」の運営)などに着手し、 わが国のバリアフリー環境が目覚ましい進展をする時に合わせて、組織としても大きな力を付けることができました。 交通バリアフリーのこれから  現在バリアフリー推進事業では、さまざまな調査研究、情報提供、施設整備助成などに取り組んでいます。 今後はICTを活用したナビゲーションや自動運転など省力化された世界でのバリアフリーはどうあるべきかなど新しい課題が出てきています。 業務の進め方にもバージョンアップが必要ですが、当事者参加でより使いやすい交通の実現を目指すという基本は変わりません。  去る10月15日に創立30周年を記念して式典とレセプションを開催することができました。 これまでご支援、ご指導いただいた関係の皆様に感謝を申し上げるとともに、より一層社会のニーズに応えられるよう努めて参ります。 30周年記念特設サイトhttps://www.ecomo.or.jp/30th.html 写真1:会長挨拶 写真2:レセプション 10ページ 公益財団法人すこやか食生活協会40年の歩みとこれから 公益財団法人すこやか食生活協会 専務理事 廣田明(ひろたあきら) 当協会の創設の経緯  私共の公益財団法人すこやか食生活協会は、昭和59年に活動を開始し、本年6月に創立40年を迎えました。  当協会の創立者の故堤つつみ恒つねお雄氏は、農林水産省を退職してまもなく50歳代半ばで中途失明し、様々な困難に直面されました。 こうしたご自身の体験をバネに、堤氏は視覚障害者の食生活改善問題に取り組むための任意団体「視覚障害者食生活改善協会」を設立しました。  その後、中高年の中途失明者の増加で視覚障害者の高齢化が進みました。 また、誰もが加齢によって小さな文字が読みにくくなるなど、高齢者と視覚障害者の抱える問題には共通性や類似性が存在しますので、活動の対象を高齢者にも広げて、「すこやか食生活協会」に改称して現在に至っております。 声の食生活情報  私共の協会は、大活字の上に透明点字を載せた料理レシピ集の作成やシニア層を対象とする食育活動を実施しており、中でも音声版の食生活総合誌「声の食生活情報」の発行は当協会の原点であり基本的活動です。  昭和60年4月に創刊された「声の食生活情報」はコロナ禍でも休止することなく毎月発行している長寿番組で、ボランティアの方々に録音や発送作業を担っていただき、視覚障害者の方等に直接郵送しています。  当初はカセットテープでの提供でしたが、その後CDでも提供を開始し、現在はホームページやインターネット図書館「サピエ」から音声データのダウンロードも可能です。 バリアフリー化への取り組み  また、当協会は調理用機器や食品の容器・包装のバリアフリー化へも取り組んできております。その一つが牛乳紙パックの識別用「切欠き」です。  当協会が農林水産省や関係業界に働き掛け、平成12年度にJAS制度(日本農林規格)の加工食品品質基準に取り入れていただき、平成13年末にはほぼすべての乳業メーカーに切欠きを導入いただきました。  このような活動は共用品推進機構様の活動とも相通ずるものです。実は、専務理事の星川さんがE&Cプロジェクトを立ち上げてご活躍されていた頃から当協会と交流していただいていたと伺っており、 その後の星川さんの活動が共用品推進機構の創設につながり、さらに大きく活動の範囲を広げておられることに敬意を表するところです。 協会のこれまでと今後  中途失明による視覚障害者の増加や高齢化の進行を考えますと、当協会の活動の重要性は一層増していくと考えています。  一方、当協会の財務状況は長く赤字が続き、基本財産の取り崩しによって対応していましたが、賛助会員の皆様に賛助会費の増額をお願いするとともに、新規賛助会員の勧誘、事業助成の開拓に努めて参りました。 この結果、ここ数年で財政状況は改善してきましたが、引き続き将来に向けて支援の輪の広がりに努めていく必要があると考えています。  当協会を取り巻く環境は依然として厳しいものがあります。この40周年を機に決意を新たにし、50年、60年と息長い活動を継続できるよう努めていきたいと考えています。 写真1:ボランティアの皆さんの作業風景 11ページ キーワードで考える共用品講座 第143講「集いと共用品・共用サービス」 日本福祉大学 客員教授・共用品研究所 所長 後藤芳一(ごとうよしかず) 「集い」は、ある目的や同じ関心をもつ人たちが集まって情報や意見の交換、交流を行う。会議、集会など様々な形式がある。 1.集いのいろいろ  集い(X)を大別すると、関心が参加者自身、集まること自体が主目的というもの(XI)と、外部への働きかけをめざし、集まることは手段というもの(XO)がある。 前者には開催が1回でもよいもの(XI1)と連続して行われるもの(XI2)がある。後者には調査や研究などの事業を行うもの(XO1)と政策や社会に働きかけるもの(XO2)がある。  集いを運営する主体(Y)には、恒久(常設)ではない組織(YT)と恒久・専門の組織(YP)がある。 前者には個人的活動(YT1)と非常設ながら組織や団体(YT2)が運営するものがある。 後者にはその分野専門の組織(YP1)と他の分野の組織(YP2)がある。 (記号が多いのでXを縦軸、Yを横に、図に描いてお読みください) 2.集いの例  集いの形がXI1(求心的・単回)であるものには記念事業(受賞記念祝賀会)(主体はYT2、以下同じ)、周年事業(日本生活支援工学会設立20周年講演会)(YP1)がある。 XI2(求心的・複数回)には、サイトワールド、シーティング連携マトリクス研究会(いずれもYT1)、ADシンポジウム、人権啓発担当者研修会、福祉機器コンテスト(いずれもYT2)、 国際福祉機器展(HCR)、パラリンピック(いずれもYP1)、千代田区ふれあい福祉まつり(YP2)がある。  XO1(外向き・事業)には日本点字図書館用具事業部、日本網膜色素変性症協会、交通エコロジー・モビリティー財団、すこやか食生活協会(いずれもYP1)がある。 共用品推進機構や日本福祉用具・生活支援用具協会(JASPA)もYP1である。XO2(外向き・働きかけ)には日本障害者協議会(JD)、社会福祉協議会、日本生活支援工学会、ミライロ(いずれもYP1)がある。 3.集いの発展  2にあげた例は、いまの時点での整理であり、続けるうちに組織化が進むこと(X→Y)があり、運営主体の性格が恒久化する(YTからYPへ)こともある。福祉用具分野を代表する2つの例を見よう。  福祉用具法(1993年施行)のもとで発足した新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、福祉用具関連企業とともに、「福祉用具産業化フォーラム」を開いた(XI2・YT1)。 毎月のように開いて福祉用具の産業化について議論し、理論的な整理を行った。 この運営は、通商産業省に発足した医療・福祉機器産業室にひき継がれ、結果的に当分野の業界団体であるJASPAの組織化(XO1・YP1)につながった。  共用品の分野では、デザイナ有志によるRIDグループ(1972年、XO1・YT1)が先駆的に活動した。 分野をまたがる有志による風の会(83年、XI2・YT1)の活動が、市民団体として幅広い関係者が参加して交流するE&Cプロジェクト(91年、XI2・YT2)につながった。 その後、法人化して共用品推進機構(99年、XO1・YP1)になった。 4.他の分野への活用  3の事例はいずれも、課題自体を整理する段階からボトムアップで始め、事業としてとり組み、政策を動かすに至った。 その過程では、集いを活動の場として利用し、その形を柔軟に変えつつ活動を深めた。  具体的には、問題意識を持つ有志が意見交換や交流の場を設け、その活動を通じて課題の整理を進めた(XI2・YT1)。 事例をもとに活動しつつ理論的な整理を進めた。活動は交流から、事業を行うまで深まった(XI2→XO1)。 路線の共有が進み、活動の規模や頻度が増したこともあって恒常的な運営組織を設た(YT1→YT2)。 さらに法人として恒久化させた(YT2→YP1)。混沌の状態(XI2・YT1)から取組みを恒常化させる(XO1・YT2)まで、円滑に段階を進めた。  社会課題は山積している。共用品で行った、草の根から始め、集いの形を柔軟に変化させ、取組みを恒常化させるという方法は日本ではお得意のやり方だ。他の分野にも活用できそうだ。 12ページ 電話リレーサービス「よかったこと調査」 一般財団法人日本財団電話リレーサービス 親松紗知(おやまつさち) 電話リレーサービスとは  電話リレーサービス(以下、サービス)とは、聴覚や発話に困難のある人(以下、きこえない人)と、きこえる人(聴覚障害者等以外の人)との会話を通訳オペレータが「手話」または「文字」と「音声」を通訳することにより、電話で即時双方向につながることができるサービスです。 24時間・365日、双方向での利用、緊急通報機関への連絡も可能です。当財団は、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律に基づき、総務大臣から電話リレーサービス提供機関として指定を受け、令和3年7月1日より公共インフラとしての電話リレーサービスを提供しています。 よかったこと調査の実施  本調査は、サービスを使ってよかった点に着目し、実際にサービスを利用する人がどのように使い、どういった効果や変化を実感しているかを調査し、利用登録増加につなげることを目的に国立大学法人筑波技術大学の協力を得て実施しました。 令和6年1月時点の利用者約1万4500人を対象にしたWEBアンケートにより、全4115件の回答を取得し、サービスの総合的な満足度の他、サービスを使ってよかったと思う具体的な出来事や、サービスを使う以前と比較しよくなったと感じていることへの回答も多数得られました。  総合的な満足度においては、個人利用者の75・4%が満足しており、仕事で利用する個人や法人利用者も60%以上が満足していると回答するなど、高評価であることが示されました。 サービスを使っている人のうち、10%は緊急通報の場面でサービスを使ってよかったと実感しており、「緊急通報ができることで家族の命を助けることができた」という声もありました。 サービス利用前と比べると、「急ぎの用事も自分で対応できるようになり生活利便が向上した」、「きこえる人と変わらない生活の質を得ることができた」といった回答の他、 仕事においては「周囲に頼らず自分で業務を果たせるようになった」など、業務改善を実感する声も多くみられました。 今後の取り組み  本調査結果を踏まえて、より一層のサービスの普及に努めると共に、法人利用の促進にあたっては、仕事で使うきこえない人のみならず、会社等のきこえる人への取り組みも進めてまいります。 また今回のような調査を今後も継続していくことで、取り組み結果の検証及びさらなるサービス向上につなげてまいります。 写真:電話リレーサービスの仕組み 写真:電話リレーサービスの総合的な満足度結果 13ページ 全日本葬祭業協同組合 松本勇輝(まつもとゆうき)専務理事に伺う 全日本葬祭業協同組合  共用品推進機構では、令和4年度から、コロナ禍におけるモノやサービスのアクセシビリティに関する配慮事項を規格化する事業を行い多くの団体に意見をうかがった一つが全日本葬祭業協同組合(全葬連)です。  日本には葬儀社設立のための許認可制度がないため法人登記すれば葬祭業が始めることができ、現在4~5千の葬儀社が日本に存在しています。  全葬連は、葬儀社が利用者への信頼と共に葬祭文化の発展を目指し、1956年に発足、現在全国に56の共同組合と1201社が加盟しています。  全葬連に加盟するためには、情報の守秘義務、説明責任、料金体系の明確化、見積書交付の義務化などが盛り込まれた「葬祭サービスガイドライン」を守ることを基本としています。 ガイドライン  同ガイドラインは23の項目で構成され、尊守することを誓約した所属員は「葬祭サービス尊守事業者」となり「マーク」を表示することができ全葬連の名簿に記載、公開されます。 事前相談  葬儀の説明を分かりやすくしてくださった全葬連の松本勇輝専務理事は、葬儀社への事前相談の重要性を強調されました。  「事前相談をするきっかけは3つあります。一つは元気な時、二つ目は高齢者施設等への入所が決まった時、最後は病院で病状が厳しくなった時です。 多くの方は、自分や大切な周りの人の『死』を考えることは避けたいと思われています。 しかし、死や葬儀に正面から向き合って考えると、残された時間をどのように生きていくのかという思考になり、前向きに考えるようになるい人がとても多くおられます。 昔は、近所付き合い、親戚付き合いも今より密だったこともあり、その人たちに教わってきた葬儀のやり方ですが、その関係が変化してきているため、その役目を葬儀社が担っているといっても過言ではありません。 最初に相談した葬儀社との相性がよければ、次の段階に進めることもできますし、合わないと思ったら複数の葬儀社と話し、ご自分の意向にあった葬儀社を『元気なうち』見つけることは、とても重要です。」と教えてくれました。 葬儀の形態  コロナ禍も大きな影響もあり、限られた親族のみで行う「家族葬」が増えてきました。 しかし、葬儀社は、「葬儀の依頼を受ける」、「ご遺体の搬送・安置」、「お通夜・お葬式内容の打ち合わせ・見積もり」、「お通夜の手配」、「葬儀・告別式の手配」、「葬儀・告別式終了後のサポート」などは、 災害がおこった場合も含め、平常時と変わりなくエッセンシャルワーカーとして仕事に従事しています。 「家族葬」で行った場合、参列できなかった家族以外の故人と親しかった方々は、最後の別れと、ご自宅を訪問され、その訪問は一年間続く場合もあるとのことです。 合理的配慮  「葬儀では、昔から高齢の人たちも参列されることが多く、葬儀社は常にハード・ソフト両面のアクセシビリティを考慮しながら働いています。 しかもマニュアル通りでなく、個別ニーズがあるのがあたりまえの現場です。そのため『合理的配慮』は以前から実施していると言えますね」と、松本さんは話してくれました。  共用品推進機構で行っている「良かったこと調査」、葬儀業界を対象として行うと、他業界にも参考になる事例がたくさん出てきそうです。 星川安之 写真1:葬祭サービスガイドライン 14ページ 改訂増補版『アクセシブルデザイン』 早稲田大学人間科学学術院 倉片憲治(くらかたけんじ)  共用品推進機構と国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)が過去20年以上に亘って取り組んできたアクセシブルデザイン(AD)。 その概要をまとめた書籍『アクセシブルデザイン』は2019年に発刊された。そして2024年9月、早くもその改訂増補版『アクセシブルデザイン~高齢者・障害者に配慮した人間中心のデザイン~』が出版されるに至った。 この改訂増補版では旧版発行後のADの動向に関する情報を更新するとともに、新たに二つの章が追加されるなど、内容の充実化が図られている。  本稿では、改訂増補版を概観し、旧版から何がどのように変わったのかを紹介していこう。ADに関心のある読者の方々の参考になれば幸いである。 改訂増補版の構成と特徴  本書は、次のような章立てで構成されている。まず、第一章で「高齢者・障害者配慮デザインの経緯と社会的背景」について説明したあと、第二章で「アクセシブルデザインの基本概念」が語られる。 続いて、第三章では「高齢者や障害者の不便さ」を概観し、第四章で「複数の提示方法および操作方法」というADの基本的なデザイン手法が紹介される。ここまでの章を読み通すことで、入門者にはADの基本的知識が身につくことであろう。  第五章から第十章は、それぞれ「視覚特性」「聴覚特性」「触覚特性」「味覚・嗅覚・温熱感覚特性」「身体特性」「認知特性」についてである。それら人間特性の加齢による変化および障害の種類と程度による違いと配慮デザインの例が、順次解説されていく。 この中で「味覚・嗅覚・温熱感覚特性」と「身体特性」は、改訂増補版で新たに追加された章である。また、これら人間特性に関する章では、産総研にて日本人を対象に測定されたデータが数多く引用されている。身近な製品・環境のデザインに直接、適用することができるであろう。  第十一章は「標準化と普及」についてである。ADの特徴であるJIS(日本産業規格)やISO(国際標準化機構)規格等の作成を通した普及策とその最新の動向が紹介されている。標準化活動にあまり馴染みのない読者にも、ADの普及における標準化の意義と効果を実感していただけることであろう。  最終章では、全章のまとめとしてADの「ガイドライン」が示されている。製品・環境・サービスのADに取り組む読者にとって、デザイン上、考慮すべき事項を簡潔にまとめた手引きとして活用できるはずである。  その他、改訂増補版には“こぼれ話”的なコラムが随所に入れ込まれている。堅苦しくなりがちな専門書を少しでも楽しく読んでもらえればと期待しているが、いかがであろうか。 ADを手がける次世代のために  ADは決して一過性のブームではない。高齢者や障害のある人々が存在する限り、今後も世の中から広く求められ続けるはずである。 蓄積されたADの知識と技術は、次の世代にも伝えていかなければならない。  そこで、新たにADを手がける次世代の若者らのために、本書には安価な電子教科書版も作成されている。 筆者は勤務校での講義にて、三百名以上の学生たちの教育に使用している。デザイン学はもちろん、人間工学や高齢者・障害者心理学の講義の教科書・副読本として他校でもご活用いただければと思う。 写真1:改訂増補版『アクセシブルデザイン』佐川賢(さがわけん)・倉片憲治(くらかたけんじ)・伊藤納奈(いとうなな)(著)、エヌ・ティー・エス(刊)、40,000円+税 15ページ ボードゲーム専門店「すごろくや」コンショルジュ ボードゲーム専門店  東京神田神保町の書店街にある神保町古書センターのエレベータで7階に向かい扉が開くと「すごろくや」の表札と共に、約700種類のボードゲームが一斉に目に飛び込んできます。  吉祥寺と神保町にあるすごろくやの代表の丸田康司(まるたこうじ)さんは、1990年よりテレビゲームの開発に従事。関わった代表作に『MOTHER2』『風来のシレン2』『ホームランド』などがあります。 その後独立し、2006年4月に近代ボードゲーム・カードゲームの専門店「すごろくや」を設立されました。 2010年に法人化し、代表取締役に就任されています。  「いらしゃいませ、ゆっくりご覧ください」の店員さんの一言は、初めて訪問者にとっては嬉しい一言です。  店内は7つのカテゴリーに分かれゲームが見やすく、手に取りやすいレイアウトで並べられています。その7つとは①子どもも手軽に、②子どももじっくり、③大人で気軽に、④大人でじっくり、⑤2人で楽しい、⑥オトナでちょうどいい、⑦協力・チーム戦の7カテゴリーです。 店員さんのサポート  700ものゲームの中で、自分が楽しめるものがあるだろうか?と、不安に思う人も心配ご無用! 店員さんたちは店にあるゲームを熟知していることに加え、希望するゲームを探すためのユニークな「購入相談シート」があるのです。 このシートは、質問(Q)が次の5つあり、それぞれの質問には、ビンゴカードのように、該当する箇所を、指で押して答えていく仕様になっています。 ◎何歳と遊ぶか?(3歳、4~6歳、7歳~9歳、10歳~15歳、大人)、 ◎何人で遊ぶか?(1人、2人、4人、6人、大人数)、 ◎遊ぶ時間は?(30分、1時間、1時間以上)、 ◎ルール難易度は?(簡単、難しい)、 ◎どう楽しむか?(わいわい、戦略、協力、騙しあい、プレゼント) 15分のレクチャー  該当する箇所を示したシートを店員さんに渡すと、店内の多くのゲームの中から、その人にあったゲームを複数もってきてくれます。そしてそれぞれのゲームの概要を教えてくれます。  説明を聞きながら、これは!と思ったゲームに関しては、店内にあるテーブルに移動して実践形式で15分ほどやり方と共に面白さを教えてくれることもあります。 視覚を使わなくても  私が「目の不自由な友人と行えるゲーム」をリクエストするとすぐに、2つのゲームを紹介してくれました。  一つ目の『フォーセンシズ』は、付属のアイマスクを装着し「見えない」状態で、盤面を手探りによって把握しながらコマを置いていき、縦/横/斜めの1列で穴の有無や高さを揃えるゲームです。  二つ目の、『ゴブレットゴブラーズ』は、3×3のマス盤面に自色駒の縦/横/斜めの1列を作ることが目的で、駒を置いたり、動かしたり、小中大のサイズ差を活かして被せたり、被せを外したりしていく対戦ゲームと、教えてくれました。 ゲームのコンシュルジュ  神保町店、吉祥寺店、どちらもアポなしでふらっと訪問しましたが、どちらの店の店員さんも、まさにゲームのコンシュルジュ、他の業種にも広がってほしい仕組みです。 星川安之 写真:購入相談シート 16ページ いろいろな 【事務局長だより】 星川安之  「いろいろボール、いろいろな子どもたちへ」と題した展示会の企画を提出し、東京都社会福祉協議会の主催で飯田橋の同協会の会場で行ったのが39年前。 企画の元となったのがその年、発売した「メロディボール」、目の不自由な子どもたちに話を聞きながら作ったボールは、少しの振動で30秒間メロディが鳴る。 中にICチップを入れたそのボールを開発するまでに、世の中にはいろいろなボールがあることを知り、それを多くの人に知らせたいと思い「いろいろな」をタイトルにつけた。 その後も「いろいろな」が形容詞として付く仕事をさせてもらってきている。  当時、障害のある子どもたちのおもちゃを開発するにあたって、分からないことがあるとすぐに電話して聞いていたのが、福祉に関する風通しをよくすることを目的に発行されていた雑誌『われら人間』を編集していた小島操(こじまみさお)さんだった。 私のように分からないことを彼女に聞いていたのは、私以外にも数名いた。いろいろな分野で働いていたその数名は、直接福祉にかかわる仕事ではなかったが、福祉を媒体に繋がると、今までにない化学反応が起こるのではと考えた彼女は、「風の会」を立ち上げた。 月1回集まり、それぞれが目指していることと、それを実現するために行っていることを話し合った。異なる業種の人たちが上下関係にも気を使わずに、飾らぬ意見を言い合えたのは、何とも貴重な経験になった。 その会には、障害の有無、年齢の高低に関わらず共に使える製品・サービス・環境を普及することに、関心を持つ人が参加するようになり、名前もなかった「共用品」の普及を行うプロジェクトが発足したのが、風の会発足8年目の1991年4月のことだった。  E&Cプロジェクトの第1回の会合には、デザイン、トイレ、家電、玩具、自治体、点字図書館、心身障害者福祉センター、オーディオといろいろな人が集まった。いろいろな人たちは、さらにいろいろな人を連れて参加し、会を重ねるごとにメンバーが増えた。 8年たった時には約400名、組織の数だと350社ほどになり、さらにいろいろな人が同じ目標に向かい、1999年に発展的に解散し、財団法人の共用品推進機構と市民団体を継続する共用品ネットが誕生した。  それからも、いろいろな人、コト、モノと出会い、気づけば25年の時が経っている。いろいろなが、頭に浮かんでくるが、ただただ感謝の日々、そして年月だった。 共用品通信 【イベント(対面)】 第20回千代田区ふくしまつり(10月12日) 第16回サイトワールド(11月1日~3日) 【会議】 網膜色素変性症協会 共用品WG R6年度 第7回(10月3日、星川) 網膜色素変性症協会 共用品WG R6年度 第8回(11月7日、星川) 【委員会】 第1回ADJIS調査WG(10月22日~23日、星川・森川・田窪) 【講義・講演】 日本福祉大学(横浜)(9月14日~15日、星川・森川) 東京人権啓発企業連絡会(9月30日、星川・望月・森川・金丸) 国際福祉機器展(10月2日、星川) 【報道】 時事通信社 厚生福祉 9月3日 イベント「点字にふれる」 時事通信社 厚生福祉 9月10日 喫煙と合理的配慮 日本ねじ研究協会誌 9月号 開けにくいレジ袋が 日本ねじ研究協会誌 10月号 みんなのまつりの作り方 トイジャーナル 9月号 絵本ラウンジ「ループ」 トイジャーナル 10月号 みんなのまつり 高齢者住宅新聞 9月号 信号機 高齢者住宅新聞 10月号 葬儀に関する事前相談のすすめ シルバー産業新聞 11月号 福祉関係のマーク アクセシブルデザインの総合情報誌 第153号 2024(令和6)年11月25日発行 "Incl." vol.25 no.153 The Accessible Design Foundation of Japan (The Kyoyo-Hin Foundation), 2024 隔月刊、奇数月25日に発行 編集・発行 (公財)共用品推進機構 〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2-5-4 OGAビル2F 電話:03-5280-0020 ファクス:03-5280-2373 Eメール:jimukyoku@kyoyohin.org ホームページURL:https://www.kyoyohin.org/ja/ 発行人 富山幹太郎 編集長 星川安之 事務局 森川美和、木原慶子、櫻井眞季、小林友美子、田窪友和 執筆 小野寺淳子、親松紗知、加納猛彦、倉片憲治、後藤芳一、澤田大輔、原田昌彦、廣田明 編集・印刷・製本 サンパートナーズ㈱ 表紙 NozomiHoshikawa 本誌の全部または一部を視覚障害者やこのままの形では利用できない方々のために、非営利の目的で点訳、音訳、拡大複写することを承認いたします。その場合は、共用品推進機構までご連絡ください。 上記以外の目的で、無断で複写複製することは著作権者の権利侵害になります。