インクル154号 2025(令和7)年1月25日号 特集:新しい挑戦 Contents 公益財団法人共用品推進機構 第25回活動報告会開催報告 2ページ 旭日中綬章の栄に浴し 4ページ 「凸表示」をタカラトミーグループのすべての電子玩具に 5ページ 花王のUD、新たなPR 展開 6ページ 凸マークシールへの新たな挑戦 7ページ すべての人が取り残されないデジタル社会にむけて 8ページ インクルーシブな未来が、すぐそこに 9ページ みんなの自販機、もっとワクワク 10ページ フラット~ “今” が変わる場所づくりへの挑戦~ 11ページ キーワードで考える共用品講座 第144講 12ページ 発達障害のある人の感覚の問題とは 13ページ 公共トイレの操作系設備配置等の標準化の推進 14ページ 「共用ポスター」で風穴を~コレがウチの共用とは?~ 15ページ 事務局長だより 16ページ 共用品通信 16ページ 2ページ 公益財団法人共用品推進機構 第25回活動報告会開催報告  1999年に設立した共用品推進機構は、皆様のご支援・ご厚情をいただき、2024年に無事25周年を迎えました。 本誌では、2024年12月18日(水)に東京ドームホテル(東京・文京区)で開催した活動報告会の一部をご紹介いたします。 開会挨拶  開会に際して、富山幹太郎(とみやまかんたろう)理事長、相賀昌宏(おおがまさひろ)評議員会会長が感謝の意を述べました。  また、今回の活動報告会の司会は、ミス日本みどりの大使/ミス日本ミス着物の安藤きらり(あんどうきらり)さんが務め、終始和やかな雰囲気で進行しました。 報告  星川安之(ほしかわやすゆき)専務理事が、共用品推進機構のこれまでの歩みと今後の取組について報告しました。  弊機構機関誌『インクル』は、設立した年に第1号を創刊してから今日に至るまで休むことなく隔月で発行してきました。 今回は、その『インクル』に掲載された記事を中心に報告を行いました。  これまで弊機構の運営に携わってくださった多くの方々の業績を振り返る良い機会となりました。 記念講演  設立25周年の記念講演として、建築家の隈研吾(くまけんご)氏にご登壇いただきました。  「共生社会と建築」と題したご講演では、小学生の頃の出来事から現在取り組んでおられるプロジェクトまで幅広くレクチャーしていただきました。 40分という短い時間の中で、人との出会いや信頼関係の大切さ、共用デザインの在り方など、数多くうかがうことができました。  参加された方からは、「お話しをうかがってとても興味を持った。紹介いただいた建築デザインを近々見に行こうと思っている」 「今まで何気なく見ていたものの見方が変わった。今度改めて見る時が楽しみ」などという感想が寄せられました。 法人賛助会員活動紹介  法人賛助会員活動報告では、13企業の皆様から共用品・共用サービス・共用施設への取組をご紹介いただきました。  法人賛助会員の方々から「様々な方々の取組がうかがえてとても有意義だった」 「皆さんが自分たちと同じようにこのような(共用品の)活動に取り組んでいることを知りとても心強く思った」などの感想がありました。 閉会挨拶  閉会に際して、森田俊作(もりたしゅんさく)評議員が閉会の挨拶を行いました。 おわりに  5年ぶりに対面での開催となった活動報告会は、感染症対策を継続しながらの開催となりましたが、約90名の法人賛助会員及び関係者の皆様にご参加いただきました。 今後は様々な参加方法を取り入れ、オンライン参加やオンデマンド配信などでの開催も検討していく所存です。  皆様におかれましては、引き続きご支援の程、どうぞよろしくお願いいたします。 共用品推進機構 役職員一同 写真1:報告会会場入口(成果物、共用品展示) 写真2:富山幹太郎理事長 写真3:相賀昌宏評議員会会長 写真4:安藤きらりさん 写真5:星川安之専務理事 写真6:星川専務理事の報告を聞く参加者の方々 写真7:隈研吾氏 写真8:隈氏の講演に聞き入る参加者の方々 写真9:活動紹介の様子 写真10:森田俊作評議員 4ページ 旭日中綬章の栄に浴し 株式会社タカラトミー名誉会長 富山幹太郎(とみやまかんたろう)  新たな年を迎え、皆さま方にはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。 本年も変わらず公益財団法人共用品推進機構にご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。  さてこの度、はからずも令和六年秋の叙勲において旭日中綬章を賜り、身に余る栄誉と光栄に存じます。 またこのように皆さま方にご報告する機会を頂戴し、たいへん恐縮しております。  この度の栄誉は、一般社団法人日本玩具協会の会長として四期八年務めたことにより推挙されてのものです。 改めて旭日中綬章とは、という件を見ると、「社会のさまざまな分野で顕著な功績を挙げた人物を表彰する」とあり、 受章の報に接した時には「はて?私はこれまでどのような功績を挙げてこられたのだろうか」と、自らの来し方に思いを巡らせておりました。  私が社長に就任したのは、プラザ合意による円高の進行で、輸出依存型だった当社が存続すら危ぶまれる経営危機に陥ってしまった時のことです。 私がすべきことは、目の前の燃え盛る炎を消すこと、選択肢はその一択しかありませんでした。大きな痛みを伴う再生の道のりでしたが、 一歩一歩、着実に歩みを進めていくことだけが、会社を託された自分の使命であるとの想いだけに突き動かされていたように思います。  社長に就いてからは、つぶれない会社をつくることだけを心に、そのための「破壊」と「創造」を繰り返してまいりました。 そしてその一つが現在の共用品推進機構につながる「共遊玩具」の取組みだったと思っています。  「誰もが楽しめるおもちゃづくりを」「世の中のためになる会社経営を」という創業者の遺訓をもとに始まった障害児向けの玩具開発でしたが、経営危機の前にあってはやはり維持するのは難しいことでした。 一時撤退もやむなしと考えた私を思いとどまらせたのは、創意工夫による継続、「専用玩具」から「兼用玩具」へという発想の転換が生み出す新たな可能性の拡大という未来図でした。  こうして生まれた「共遊玩具」という発想は玩具業界全体の活動へと広がり、同様にさまざまな業界の至るところで芽吹いていた活動と相和して、「共用品」という豊かな実りをもたらすものになりました。 そして今、改めて思うのは、そのすべての活動は、一人の人間の力で成し得るものではなかったということです。  この度、旭日中綬章を賜ることとなりましたが、もとよりこれは私個人の力によるものではなく、折々にお力添えを賜った皆さま方のおかげであると、改めて感謝申し上げます。 玩具業界に身を置き、私は多くの方々のお力を頂きながら自分に課せられた役割を果たしてくることができたと思っています。  玩具業界も当社も、今や世代交代が進み、その舵取りを若い世代が担っています。彼らが漕ぎ出す先にあるのは、ますます多様化する価値観や社会環境の変化であり、常に正解のない課題に挑戦し続けていく努力が必要であると考えます。 微力ながら、この度の受章を励みに、私自身もまた、社会課題の解決に向けて、何ができるかを問い続けてまいりたいと思います。 引き続き、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。 写真1:富山幹太郎名誉会長 5ページ 「凸表示」をタカラトミーグループのすべての電子玩具に (株)タカラトミー サステナビリティ推進室 サステナビリティ推進部 社会活動推進課 高橋玲子(たかはしれいこ) 「凸表示」とは?  おもちゃの「凸表示」は、電源スイッチのON側に凸点を付けてどちらがONなのかをさわってもわかるようにしたり、 電池蓋を開閉するためのネジ穴の周囲に凸状のリングを入れて、他のネジ穴とさわっても区別できるようにするものです。 視覚に障害がある子どもたちにとっておもちゃが操作しやすくなるほか、視覚障害があり育児をする大人たちにとっても有用です。 「凸表示」をすべての電子玩具に付けることを決めた背景  これまで、視覚障害がある子どもたちを考慮した「共遊玩具」を中心に凸表示を行ってきましたが、タカラトミーグループでは、今後すべての電子玩具製品に凸表示を採用することとしました。 おもちゃの形状の都合で凸表示が入れられないものについてはその旨申請しないと開発プロセスが進められない仕組みを作り、ひとつでも多くのおもちゃに凸表示ができるよう努めます。  視覚に障害がある子どもたちは、共遊玩具以外のおもちゃでも遊びます。また、視覚障害があり育児をする大人たちも、日々さまざまなおもちゃに触れています。 共遊玩具に限らず、すべての電子玩具に凸表示を採用することで、より多くの人たちがより安心して操作できるおもちゃづくりを目指します。 今後の発展  タカラトミーの定番玩具であるリカちゃんシリーズには細かいパーツが多く、たとえば小さなコップやお皿などをテーブルに並べて食事の場面を再現するなどのごっこ遊びが楽しめます。 目の見えない子どもたちも日常生活が再現できるミニチュア玩具は大好きなのですが、細かいパーツはちょっと手でさわると動いてしまったり倒れてしまったり、思うように楽しめないという課題があります。 そういった課題を解消するため、テーブルの盤面にくぼみ、コップやお皿などの底に出っ張りをつけて、置いたものがテーブルにかちっとハマるように工夫しています。 この出っ張りとくぼみの寸法は、小物を並べて遊ぶほぼすべてのリカちゃんシリーズで共通にしています。 おもちゃはその種類が多岐にわたるため、扱いやすくするための具体的な工夫を共通ルールとすることは決して簡単ではないのですが、今後も有用なルール化はできるだけ進めていきたいと考えています。 写真1:スイッチの凸表示 写真2:電池蓋のネジの凸リング 写真3:くぼみを付けたリカちゃんのテーブル 6ページ 花王のUD、新たなPR展開 花王株式会社 PR戦略部門 PR戦略センター 社会貢献部 塩澤聡(しおざわさとし) 1.花王のUD指針  シャンプーボトルの側面にあるギザギザ状のきざみは、シャンプーとリンスを間違えるという生活者のお声に対応し、花王が1991年から世の中に広めた技術です。 視覚障害のある方や高齢者にも便利なことから、UDの代表例として知られています。 花王では、「花王ユニバーサルデザイン指針」にもとづき、生活者一人ひとりに寄り添った製品やサービスの提供を行い、人々が共につながり豊かに共生する社会の実現をめざしています。 「花王ユニバーサルデザイン指針」は、次の3つのモノづくりの考え方にもとづいています。 1つ目は、“人にやさしいモノづくり”です。多様なお客さまに、特別に意識しなくても、ふつうにわかりやすく、ふつうに使いやすく、安心して使っていただけることをめざしています。 2つ目は、“「うれしい」をかたちにするモノづくり”です。毎日お使いいただく製品だからこそ、使うことの先にある“うれしさ”や“感動”をつくりだしていくことに努めています。 3つ目は、“人や社会とつながるモノづくり”です。豊かな生活体験を提供していくことで、人と製品の関係性の中だけでなく、人と人、人と社会の関係性の中に価値を広げてまいります。 2.UD製品の新たなPR展開  花王は、2024年11月1日~3日に錦糸町(東京)で開催された、視覚障害者の総合イベント「第16回サイトワールド2024」にブースを出展しました。 「だれでもラクラク体験」と称したブースでは、ボトルの向きを気にせず片手で使え、肉球やお花の泡のスタンプが楽しめる『ビオレu 泡スタンプハンドソープ』や、 片手で使えて洗剤の計量が不要な『アタックZEROワンハンドタイプ』、歯ブラシに歯磨き粉をのせる手間がいらない『ピュオーラ泡ハミガキ』など、「片手で使える」「軽い力で使える」代表的な花王のUD製品を社員がご紹介しました。 実際に触って体験していただくことで、多くの来場者に、花王がUD指針にもとづき、誰でも使いやすい製品を提供していることを知っていただくことができました。 また、共用品推進機構様をはじめとする皆さまから頂戴したアドバイスをもとに、ブース展示の内容が点字や音声でわかるチラシを配布したり、ハンドソープの泡の形を触ってわかるよう、立体の泡の模型を用意したりするなど、視覚障害のある方に、理解を深めていただく工夫をしました。 来場者の皆さまからは、「こんな製品があるとは知らなかった」「もっと情報が届くようにしてほしい」「障害者のことまで考えてくれているのが嬉しい!」など、多くのお声を頂戴しました。 特に、『ピュオーラ 泡ハミガキ』は、「今日一番の衝撃!」とのお声をいただくなど、一番反響がありました。 3.今後の発展  来場者のお声から、製品の情報が視覚障害のある方に届かない場合が多いことがわかりました。 直接、製品の良さを実感していただく機会を増やしていくとともに、社外の関係者の皆様のご協力を得ながら、視覚障害のある方々に製品情報を届けるための活動を推進していきたいと考えています。 写真1:共用品推進機構様の隣でブースを展開 写真2:一番反響のあった『ピュオーラ泡ハミガキ』 写真3:『ビオレu泡スタンプハンドソープ』(手前:泡の立体模型) 7ページ 凸マークシールへの新たな挑戦 白山印刷株式会社 遠藤伸也(えんどうしんや) 凸マークシールを作るきっかけ  弊社は2018年より点字印刷事業を続けてきましたが、昨年新たに若手のメンバーを追加し、点字事業を推進していくためのプロジェクトチームを立ち上げました。 人数が増えたことで今まで以上に活発に議論が進み、また広範囲への活動が可能になりました。そして十分とは言えなかった視覚障害者の方々へのヒアリングを積極的に行うことができました。 活動してく中で、視覚障害者の方々にお話をお伺いすると、点字だけではなく様々なものを認識するための目印が必要とされているなということに気付かされ、弊社の点字印刷技術を用いて新たに凸マークシールを作っていこうという結論に辿り着きました。 白山印刷の凸マークシールの特徴  凸マークシール自体は従来から作られているので珍しいものではありません。 しかし白山印刷の凸マークシールは、デジタル加飾機を用いて作製するため好きな形状の平面データを用意することで凸マークを作製することが可能です。 そのためデータの変更により形状の変更も容易で、豊富な種類のマークをご提供することができます。 網膜色素変性症協会 共用品WGとの連携  共用品推進機構の星川専務理事に弊社の取り組みをご紹介したところ、網膜色素変性症協会の共用品WGとの定期ミーティング内で凸マークシールをご紹介する機会を設けていただきました。  凸マークの形状が正しく認識でき、日常生活で便利に使用できることが何よりも大切です。 そのため、メンバーの皆様にサンプルを使用していただき、形状のわかりやすさやサイズなどの使用感から、使用方法や希望する形状に関する貴重なご意見をいただきました。 その結果、開発も大きく進展しました。 サイトワールドで分かったこと、今後の展開  昨年開催のサイトワールド2024へ出展いたしました。コロナ禍以前の2019年に初参加してから2回目の参加となります。 前回出展時は点字シールをメインに展示していましたが、今回は新たに開発した凸マークシールを展示しました。  本当に多くの方々がブースにお立ち寄りくださり、凸マークシールを実際に触っていただきました。 判別のしやすさについては、形状自体の問題に加え、点字の読み取り能力や年齢、視覚障害を患った時期などによっても、形状や高さの認識に個人差があると感じました。  また、日常生活で使用したい形状のマークとしては、家電製品に使用したいという意見が一番多く、次いで冷凍食品や缶詰などの保存食、自分の持ち物など身の回りのもの、パソコンのキーボードやスイッチ類などに貼りたいと続きました。  まだまだ改善点はあるものの確かな感触を得ることができました。  今後は、視覚障害のある皆様がより豊かな暮らしを送る一助となるよう、製品化に向けてさらなる開発を進めてまいります。 写真1:凸マークシール(写真は開発中のものです) 写真2:サイトワールド2024の白山印刷ブースの様子 8ページ すべての人が取り残されないデジタル社会にむけて コアジャパン株式会社代表取締役 深谷愛(ふかやあい) コアジャパン株式会社の活動について  コアジャパン株式会社の活動は、私自身の経験から始まりました。私の両親は全盲で、スマートフォン(以下、スマホ)を使い始める際に非常に苦労していました。 当時、相談できる相手がいない中で、基本操作を覚えるのも一苦労でした。私も支えたい気持ちはあったものの、スマホのアクセシビリティ機能には詳しくなく、両親が困っている姿を見るたびに、もっと何かできないかと感じていました。 その後、大手携帯キャリアショップに就職しましたが、勤務する中で、視覚障害者への対応が十分でないことを痛感しました。 こうした経験から、「誰もが安心してデジタル機器を使える社会を目指したい」という思いが強まり、コアジャパンのサービスを立ち上げました。 アイガイドフィルム  「アイガイドフィルム」は、視覚障害者向けに開発された保護フィルムです。指先でテンキーや送信ボタン、予測変換バーの位置を確認できるように設計されています。 透明で画面の見え方や操作に影響しません。特許庁から意匠権も取得しており、iPhone初心者の方の文字入力がとてもスムーズになります。 VoiceOver教室とスマサポカー  「VoiceOver教室」を定期的に開催し、iPhoneの音声読み上げ機能「VoiceOver」を活用した操作方法を指導しています。 iPhone各部位の名称とその位置や向きから始め、基本操作からSNSや便利なアプリの使い方まで、経験豊富なスタッフが丁寧にサポートしています。 教室の参加者からは「基礎からゆっくり丁寧に教えてくれるので、スマホを使うのが怖くなくなった」「何度同じことを尋ねても、毎回笑顔で親切に答えてくれるから教室に来るのが楽しみ」という声をいただいています。 教室は和やかな雰囲気で、参加者同士の交流も楽しみの一つです。  さらに、出張サポートサービス「スマサポカー」も提供しています。 スマサポカーは、ご指定の場所まで伺い、完全個室でプライバシーが守られる車内で、相談やサポートを完結できます。 実際にご利用いただいたお客様からは、「アプリが急に使えなくなって困っていたところ、翌日にサポートに来てくれて助かりました。 操作方法やアップデートの新機能についても詳しく教えてもらえたので、大変助かりました」という声や、「足が悪くてショップに行くのが難しい中、自宅まで車で来てくださるサービスは本当に助かります。 初期設定が終わり、少しずつ練習できるようになりました」との感想をいただいています。外出が困難な場合でも、人目を気にせず安心して自分のペースでサポートを受けられる環境をご用意しております。 今後の展望  今後は、オンライン教室やリモートサポートの拡充を進め、日本全国のニーズに応えていきます。 コアジャパンの信念は、「お客様が満足していただけるまで、最後までサポートを続ける」という姿勢です。 お客様が安心して質問できる環境を大切にし、一人ひとりの困りごとに誠実に向き合います。 これからも、この信念を大切にし、すべての人がデジタル社会で快適に暮らせるよう、努力を続けてまいります。 コアジャパン株式会社 TEL:03-4330-0798 写真1:深谷 愛 氏 9ページ インクルーシブな未来が、すぐそこに 鈴木我信(すずきがしん) 視覚障害者の壁のおはなし  私たちの生活は、急速なデジタル化によって大きく変わりつつあります。タッチパネル式の券売機、無人レジ、スマートフォンアプリによる予約システム―。 これらテクノロジーの進化は、多くの人々の生活を便利にする一方で、視覚障害者にとって新しい壁を生んでいます。  先天性の視覚障害を持つ私は、子どもの頃から様々な「壁」と向き合ってきました。 星が見えにくいが故に生まれた宇宙に対しての漠然とした恐怖心。運動会で、危険という理由で騎馬戦に出れなかった悔しさ。 最初の転機  しかし、中学進学を機に私の世界は大きく広がりました。 進学先は全国から視覚障害のある生徒が集まり、大半が寮生活という盲学校。 そこで初めて、視覚障害があっても楽しく生きられる、何にでも挑戦できるという可能性に気づいたのです。 プログラミングとの出会い  寮生活で今までと大きく違ったのは、自分が「見える方」だった点です。 全盲の友人に毎朝「今日の給食は何?」と聞かれ、その度に献立表を読み上げていました。 その経験が、プログラムへの興味を深めるきっかけとなりました。  「これってプログラミングで解決できるのでは?」と思い立ち、毎朝7時にクラスLINEに献立を通知するシステムを開発しました。 友人たちから「自分で確認できる喜び」を聞いた時、テクノロジーが障壁を乗り越える力を持つと実感しました。  高校生になると、インターンシップなど一般の方々と関わる機会が増えました。しかしまた、新たな課題に直面します。自分の見え方を言葉で説明することの難しさ。 「周辺視野が欠けている」「全体的に曇って見える」―言葉では伝えきれない現実がそこにはありました。大手通信会社でのインターンシップの中で、解決の糸口となる一つのアイデアが生まれました。 視覚障害をシミュレートできるアプリケーションの開発です。私の見え方を再現するところから始め、やがて様々な視覚障害の特徴を表現できる機能を追加していきました。 このアプリを職場で共有すると、「初めて理解できた」という感想をいただき、障害の有無を超えたコミュニケーションツールとしての可能性を見出すことに繋がりました。 これからの私  4月から私は、慶應義塾大学環境情報学部に進学します。大学では触覚デバイスの研究など、視覚に依存しない情報伝達の可能性を探求していく予定です。 視覚障害者と健常者の間にある「見えない壁」を、テクノロジーの力で打破して行きたい。そんな思いが、私の原動力となっています。  将来的には「インクルーシブ広告」の開発に挑戦したいと考えています。これは、視覚障害者や高齢者など、個々の特性に寄り添い、情報を届けるための広告システムです。 視力に応じた文字サイズの自動調整、色覚特性に合わせた配色の変更など、個々のニーズに応じて最適な情報提供を行います。  テクノロジーの進化は、新たな障壁を生み出す一方、その障壁を打ち壊す力も備えています。私の夢は、テクノロジーを通じて、誰もが等しく情報にアクセスできる社会の実現です。そしてそれは、遠くない未来に実現すると、私は信じています。 写真1:視覚障害シミュレーションアプリ『VisionSim』 写真2:インクルーシブ広告の取材で訪れたエストニアの首都タリン市内 10ページ みんなの自販機、もっとワクワク  「コカ・コーラさんの自販機、すごくいいんだよ」(社福)日本視覚障害者団体連合 常任理事三宅隆(みやけたかし)さんに教わった。ユニバーサルデザイン自販機についてのヒアリングでのこと。 「コークオン(Coke ON)」というアプリをスマホに入れると、スマホが振動して対応自販機の場所を知らせ、接続すると商品を読み上げ、キャッシュレスで買えるそうだ。 周囲に聞いてみると、「コークオンね、みんなやってるよ」と大学生、高校生の声。その後、二つの当事者団体代表の方からも、「ポイントがたまったりするとおもしろくて、不便さより興味が勝っている印象」 「すごくいいですよ、こんなアイデアがもっと広がるといいですね」と、かなり浸透していることがわかり、乗り遅れていた感を味わった。みなさんはご存じだろうか。 もっとみんなの自販機へ  早速アプリをダウンロードし、試してみた。スマホのブルートゥース機能により、対応自販機が近くにあることが振動によって知らされる。近づき、スマホを差し向ける。 接続、商品選択、支払い、いずれも手元のスマホで完結した。同時にスマホに何やら煌きらめくものが出現、ポイントが付与された。しかも二つ。偶然の二倍デーになんだか心が躍る。  確かに、今まで飲み物の選択ができなかった視覚障害の方には画期的な仕組みである。また、車椅子使用者にとっても、ボタンに手が届かないという不便さが取り除かれたと言える。  開発の経緯をコカ・コーラ社に尋ねたところ、まずは当事者の声を聴くことから始められたそうだ。 自販機での購入が、コンビニやスーパーでの購入より少ない現状について、その理由をひとつひとつ、不便さを一つずつ取り除いていく取り組みを続けて来られたとのこと。 「知る、変える、拡げる」  まずは現状を知り、最初から百点満点のものではなく、できるところから変え、それを拡げる。すでに50万台設置され、6000万ダウンロードを突破したそうだ。 利用者アンケートには様々な声が寄せられる。「自分で買えた」とのレビューも多いとのこと、提供する側としての手ごたえと喜びも感じられることだろう。共に社会をよりよくしていく、そんな一体感こそが、社会を変える原動力になると思えてならない。 今後も当事者の声を聴き続け、継続的に改善される「開けるたびに新しい情報がある楽しいアプリ」は、双方向性による進化が期待できそうだ。みんなの自販機が、みんなのワクワクを実現することを願うばかりである。 共用品推進機構 櫻井眞季(さくらいまき) 写真1:Coke ON 対応自販機とスマホアプリ画面 写真2:音声アシスト表示画面 ※画像はサービス発表当時 11ページ フラット~“今”が変わる場所づくりへの挑戦~ フラット 木津石生(きづいっせい) 車椅子だけど一緒に  私は杉並区で「フラット」という団体を運営している木津石生です。先天性骨形成不全症という難病があり、車椅子で生活していますが、幼少期から一般校で障害のない人とともに過ごしてきました。 自分とは違う人たちと一緒に車椅子の自分に何ができるかを常に考えながら生活してきました。  またNPO法人みんなのダンスフィールドという団体に所属し、障害の有無、性別、年齢に関わらずみんなと一緒にダンスを楽しむ経験をしました。 そこで私は自分に障害があってもみんなと一緒に楽しめる世界があることに気づくことができました。それが私にとって大きな自信になりました。 障害者が抱える負のループ  2023年には杉並区の「しかけ隊」という事業に参加しました。 「しかけ隊」とは障害を抱えた当事者と杉並区内にある施設の職員さんが「どうしたら使いやすい施設になるか」というテーマで話し合いをし、共に考える事業です。 この事業に参加した私は、こうした様々な立場の人たちとの話し合いの積み重ねが社会を変える可能性があると感じました。 しかし、多くの障害者は外出や他者との関わりに不安を感じ、イベントや交流の参加をためらう現状があります。 こうした不安が障害者と社会の関係を薄くし、障害のない人が障害者に触れる機会を失い、偏見の是正や障害者を受け入れる体制が進まない悪循環が生まれていると感じています。 フラットの立ち上げ  この課題を解決するため、私は「フラット」を立ち上げました。 「“今”が変わる はじまりの場所」というコンセプトのもと、障害者と多様性に興味を持つ人が交流し、お互いの世界を広げる活動を行っています。主な取り組みは以下の三つです。 1.みんなのダンス:障害や性別、年齢を問わずダンスを楽しむ場。 2.ダン.ダン.ダン:ボードゲームを通じた気軽な交流の場。 3.ともなりの場:テーマに沿って意見を共有し、新たな価値を見出す場。 これらを通じて、地域イベントなどにも障害者が積極的に参加できる流れを作りたいと考えています。 フラットの挑戦  2024年3月に活動を開始し、ヘルパーの研修で講師を行なったり、地域のお祭りでダンスの披露を行なったり、区が主催のイベントの運営にも携わらせていただきました。 障害者と障害のない人がお互いに歩み寄り、支え合いながらそれぞれの生き方を模索できる社会を目指し、フラットは挑戦を続けていきます。 写真1:フラットのロゴ 写真2:みんなのダンス 写真3:ダン.ダン.ダン 写真4:ともなりの場 12ページ キーワードで考える共用品講座 第144講「共用品と新しい挑戦」 日本福祉大学 客員教授・共用品研究所 所長 後藤芳一(ごとうよしかず) 「挑戦」は難しいことに挑むこと。挑む相手は競合、敵対的存在、社会の制度などのほか、自分自身のこともある。 1.「挑戦」のいろいろ  挑戦は動機(X)と内容(Y)によって整理できる。①動機(X)には、外的環境への対処(X1)と、内発的なもの(X2)がある。 X1には当局の規制、市場での競争、受け手の期待の上昇がある。要は、外からの要請や強制に促されて取り組む場合である。 X2は、自らの内なる動機が起点になる場合である。社会の課題に働きかける場合であっても、自分から課題を探しに行った場合はここになる。  ②内容(Y)には、全く新しい取組みを立ち上げる(いわば、0→1)(Y1)と、既にあるものを拡げる(1→10)(Y2)がある。 両者で挑戦の姿は違ったものになる。 2.共用品と挑戦  ①:X1Y1は、人口動態の変化、病理・病態の解明の進展、生活者意識の変化など。高齢者・障害者の自立、認知・フレイル、発達系の障害、心的外傷、LGBTQなど。 ②:①のうち制度が対応を求めるものもある(X1Y2)。近年では改正精神保健福祉法(主要部分は2024年4月施行)、障害者差別解消法で合理的配慮を民間事業者に義務づけ(2024年4月)など。  ③:X2Y1は、放置されてきた課題を見つける、不便さの声に気づく、自社のモノやサービスを磨くなど、自らの動機による場合だ。共用品の開発はここになる。 ④:X2Y2は、既存の取組みを深める活動だ。共用品の普及(標準化、啓発と情報発信、幅広い障害や不便さに共用品の手法を活用)がこれにあたる。 3.動機(X)をめぐる論点  応用するには背景も押さえたい。X1は動機が「外からの要請や強制」だった。外的環境は、社会の変化とともに改善/悪化する場合がある。 改善する例は①イノベーションによって高度な機器の提供(例:オリヒメ)や医療・介護技術が進歩、②法制度によって公衆衛生の向上や社会環境のバリアフリー化が進歩など。 環境問題でいえば、技術進歩や公害規制によって大気や水質の環境が改善したことに対応する。  状況が厳しくなる場合もある。要介護高齢者の増加、独居化、介護人材の減少、障害の重度化(周産期や救命医療の進歩)、貧困、技術格差(例:スマホが日常化)などである。 その結果、より重度の障害への対応を要し、技術進歩が格差の原因になる。環境問題でいえば伝統的な公害対応から地球温暖化、生物多様性への変化である。法の違反はなくても「進歩」を求める社会が環境に負荷をかけている。 4.内容(Y)をめぐる論点  課題を最初に見つけて策を示すこと(Y1)は感性と着想、勇気、創造性など「挑戦」と呼ぶにふさわしい。 ただ、最初に手がける人は、何を課題と捉えるかを選ぶ(自分が解ける課題を選ぶ)ことができ、自分の個性や得意技を用いて対応できる。挑戦としては分かりやすい。  一方、普及(Y2)を担う人は、自分の得手と関係なく手法が決まっており、取り組んで自分の名前が残るわけでもない。 シャンプー容器の例では、開発されたギザギザの方式を受け入れた各社がこれに当たる。 手法が普及して定着するのは、普及の仕事があってこそである。Y2は地味ではあるが、Y1に劣らないワザを要し、重要性を持つといえる。 5.挑戦と持続性  挑戦はリスクを伴う。では捨て身の運任せか。確かにその要素もある。他方、意外に事業活動の王道につながる面もある。  自社の商品の効用を再確認する機会(上市後に見直すのは強いきっかけが要る)、消費者との直接の接点(BtoC分野は意外に消費者の直接の声を聞きにくい)、先取りで消費者の満足を創出(目的的にやる方法では状況対処になりがち)など。 時々の概念(例:CSR,SDGs、ESG=これらの賞味期限は10年程度)をかぶせなくても、地に足をつけた歩みで貢献し、ご褒美もいただける(こともある)。 13ページ 発達障害のある人の感覚の問題とは 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 和田真(わだまこと)  自閉スペクトラム症(ASD)に関して診断基準の上では、社会的コミュニケーションの障害、行動・興味の限局が障害特性の中核とされていますが、本人の困りごととしては、感覚の過敏や鈍麻などの問題が深刻であることが知られています。 また、注意欠如多動症や限局性学習症など他の発達障害でも感覚の問題を有することがわかってきています。 感覚の問題とは?  発達障害のある人では、ある感覚刺激に対して強い応答を示す一方(感覚過敏)、ある感覚刺激には応答が乏しいこと(感覚鈍麻)が知られています。 感覚過敏をもつ人が同時に感覚鈍麻も持つのが特徴です。例えば、音や光、触感に敏感な一方で、時に痛みや暑さ・寒さを感じにくかったりするのです。 発達障害のある人の多くが、音に関する困りごと(主に聴覚過敏)を持つ一方、同時にまぶしさを感じやすかったり、苦手な触感があったりするなど特徴は人それぞれです。 私たちの研究では、ASDの診断のある人では、触覚に関する困りごとを最もつらいと感じる人が少なくないことが明らかになりました[1]。他にも、運動(固有覚や前庭覚)に関するものなど多様な困りごとが知られています。 感覚の問題の原因は?  感覚の問題の原因は、全容が解明されたわけではないのですが、神経系の調節機能の特徴が関係すると考えられています。 例えば、聴覚過敏や嗅覚過敏には、感覚刺激に慣れづらいことが関係しているという研究があります[2, 3]。光を受けた時に瞳孔が小さくなるという反射(対光反射)が知られており、ASD者では応答がやや遅いことが報告されています[4]。 これがまぶしさ(視覚過敏)に関係する可能性があります。一方、触覚過敏には鋭敏さそのものが関係する可能性があります。どれくらいの振動を感じられるか調べると、定型発達者もASD者も手のひらは細かい刺激まで感じることができるとわかりました。 ところが、腕では、定型発達者は刺激を感じにくくなる一方、ASD者では手のひらと同じくらい鋭敏であることがわかったのです [5]。またASD者では、指先の触覚の時間的な正確さが感覚過敏に関連する可能性も示されています[6]。 このように感覚の問題には感覚系の調整機能が関係しており、順応や予測など様々な神経調節機構の多様性が関連すると考えられます。 最近では、興奮性神経と抑制性神経のバランスが興奮側に寄っていることが感覚刺激に対する過敏性を生み出しているかもしれないという仮説も浮上しています[7]。 対処するために求められているモノ・サービスとは?  感覚の問題には個別の対応が必要ですが、その中でも、代表的なのは聴覚過敏です。聴覚過敏を持つ方の多くはノイズキャンセリング機能付きのヘッドホンやデジタル耳栓で対応されています。 我々の調査で浮かび上がってきたのは、触覚過敏の併存により、素材によっては長くつけていられない方がいることです。 視覚過敏を防ぐためのサングラスや嗅覚過敏を防ぐためのマスクでも同様の問題があり、装着感の合う素材の調査と開発は今後重要になると考えられます。  聴覚過敏と関連すると考えられますが、騒がしい場所での聞き取りの難しさも大きな問題です。 これについては、強い刺激を遮断するだけでは解決できる問題ではないため、サポートするためのデバイス開発が求められていると考えています。 これらには近年発展が著しいAIやスマホ関連技術が役に立つと確信しており、今後の展開に期待しています。 参考文献 1.Wada, M., et al., Front Psychiatry, 2023. 14: p. 1077542. 2.Gandhi, T.K., et al., J Autism Dev Disord, 2021. 51(7): p. 2218-2228. 3.Kumazaki, H., et al., J Autism Dev Disord, 2019. 49(8): p. 3462-3469. 4.Fan, X., et al., J Autism Dev Disord, 2009. 39(11): p. 1499-508. 5.Cascio, C., et al., J Autism Dev Disord, 2008. 38(1): p. 127-37. 6.Ide, M., et al., J Autism Dev Disord, 2019. 49(1): p. 44-53. 7.Rubenstein, J.L., Merzenich, M.M., Genes Brain Behav, 2003. 2(5): p. 255-67. 14ページ 公共トイレの操作系設備配置等の標準化の推進 (一社)日本レストルーム工業会 ユニバーサルデザイン(UD)委員会  一般社団法人 日本レストルーム工業会は、2015年「一般社団法人 日本衛生設備機器工業会」と「一般社団法人 温水洗浄便座工業会」が合併した衛生陶器や温水洗浄便座など、トイレに関する製造メーカーを会員とする団体です。  UD委員会では、レストルーム空間の質の向上と安心・安全を目指し、UDに関する技術的な課題への対応と、国内・国際規格の標準化推進活動に取り組んできております。 公共トイレ操作部の規格とは?  公共トイレでは、さまざまな設備が充実し利用者にとって便利になってきている一方で、壁面に設置される操作系設備が煩雑になり、操作がわかりにくいという問題も出てきています。 そこで、当工業会が中心となり全国の視覚障害者や車椅子使用者をはじめ、多様な方々の検証により「逆L字型の配置」を見出し、共用品推進機構ご指導のもと操作系設備の使いやすい共通ルールを定めた「JIS S 0026(※)」が2007年に制定されました。 このJISは、高齢者・障害者が初めて利用することも多い外出先のトイレで「流し方がわからない」「洗浄ボタンと間違えて呼出しボタンを押した」などの問題が起こらないよう、各ボタンの壁面配置等の共通ルールを定めたものです。 2015年には「ISO 19026」として承認され、国際規格となりました。 普及に向けた活動  本規格は、建築設計標準等のバリアフリー法関連設計ガイドラインにも盛り込まれ、建築物や旅客施設等のトイレへの普及が徐々に進んできていますが、街中にはJISに合致しないトイレも依然多いのも現実です。  一方で、視覚障害者等の当事者の方も本規格を知らない方が多く、工業会としては建築主や設計者等へのプラン提示や情報提供はもとより、利用当事者への本規格の周知促進の両輪での活動を行っております。 昨年度から工業会のホームページ上で設置事例を含めた同規格の紹介、「日本ロービジョン学術総会」での実機展示説明、国際的な視覚障害者団体の活動紙での周知活動等を行い、 今年度は「サイトワールド」(視覚障害者向け総合展示会)への参画、「公共トイレ使い方勉強会」を日本点字図書館のご協力をいただき開催しました。 実機に触れてもらうことで、体験談や活発な意見が出る中で、「普及促進と当事者への周知拡大」を求める声が多数出ました。 今後の計画  国内の周知活動をブラッシュアップして継続していきます。  海外に向けては、国際視覚援護協会の支援を受け、視覚に障害がある留学生に母国のトイレ事情のヒアリングを開始しました。 今後、各国の規格制定部署へのアピールとともに、当事者への働きかけを行い、本規格の普及を目指していきます。 図1 逆L字型の配置 図2 配置と設置寸法 ※JIS S 0026:2007 高齢者・障害者配慮設計指針-公共トイレにおける便房内操作部(便器洗浄ボタン及び呼出ボタン)の形状、色、配置及び器具の配置 写真1:サイトワールドでの紹介(左)、日本点字図書館での勉強会風景(右) 15ページ 「共用ポスター」で風穴を~コレがウチの共用とは?~ 大和リース(株)本社設計推進部(東京) 犬飼正樹(いぬかいまさき) 共用品推進機構設立25周年おめでとうございます。この記念すべき節目の年に「共用ポスター」を企画し、活動報告会でお披露目できたことを大変嬉しく思っています。 大和リースにとっても共用品・共用サービスの考え方に共感し、社内で推進を始めてからちょうど5年という節目の年でもあり、 実践し蓄積してきた共用デザイン(大和リースの設計ガイドライン)を、公に発信できたことも大変意義のある機会となりました。 共用ポスターとは…?  弊社会長の森田俊作が、「品」・「サービス」だけでなく、建物や設備機器、エンタメなどにも「共用」が広がってきており、 もっと多くの人に、多くの「共用」を知らせるべきだと公言していたことが、今回のわが社の「共用」を一枚のポスターにしたきっかけになっています。 また、マジョリティとマイノリティの距離を近づけることが、「互いを思いやる良い社会」になると信じています。 もっといろんな人の目に触れてもらいたい、気づいてもらいたいとの思いをポスターに託しました。 今回の取り組みを通じていろんな人の共感を育む好機となり、ソーシャル・イノベーションに繋がることを期待しています。 コレがウチの共用とは…?  大和リースの共用デザインは、設計する上で配慮する30項目の共用デザインリストにより成り立っています。 この共用デザインリストをよりどころに実践し、蓄積された実績を参考事例集として社内リリースできるまでになりました。 その中でも今回のポスターにトイレを選んだ理由は、建物用途や場所に関わらず誰もが利用する大切な空間だと考えているからです。 ポスターには黒い壁に便器と可動式手摺だけを写していますが、「コレがウチの共用」になります。 壁(黒色系)と便器(白色系)の明度差を際立たせることで、見えづらさを感じる人たちが、より直感的に便器や手摺の位置を認識しやすいように配慮しています。 トイレ利用者のさまざまな使いづらさに向き合う中で生まれた誰にでも使いやすい共用デザインだと考えています。 今後の発展  今回の共用ポスターは、社内外に向けてAD利用促進のための啓発活動のツールや、共用品推進機構様と連携して誰もが生きやすい生活の貢献活動を行っていることから機構様のPRとしても使用します。 第1号の共用ポスターは大和リースでしたが、この先には参画企業様との関係領域を活かし、100社分のポスターを社会に解き放つことができれば共用ムーブメントが起きると確信しています。 写真1:共用ポスター 16ページ 新たな挑戦 【事務局長だより】 星川安之  2024年も、共生社会の実現に向けて「新たな挑戦」をしている多くの人たちに出会った。  高校生3年の鈴木我信さんは将来、ITを活かしながら共生社会を構築するための起業を考えている。 その準備は始まっており、ITのアクセシビリティに考慮された政府がある国エストニアを、夏休みを利用して訪問した。  深谷愛さんは、視覚に障害のある両親にスマホが使えるようにと、スマホの販売店での経験を経て、視覚障害者にスマホの使い方を支援する会社を立ち上げた。 講座と共に、平面で凹凸のない液晶画面に、凹凸のあるシールを機種ごとに作成し、受講する視覚障害者に提供している。  玩具メーカーのタカラトミーは、スイッチがある玩具には全て、オン側に凸点つけることを決め、実施が開始された。 その結果、今までは、目の不自由な子ども一緒に遊べる「共遊玩具」のスイッチのみにつけていたが、目の不自由な両親が、目の見える子どもが遊ぶ玩具のオン側もわかるようになった。  花王株式会社が、目の不自由な人たちへの展示会「サイトワールド」〈2024年11月〉に出展に際しては、さまざまな工夫が行われた。 泡が花びらや猫の肉球の形で出てくるポンプ式の石鹸の紹介は、出てくる形を3Dプリンターで作成し、触って確認できる仕様にする工夫を行った。  12月18日、共用品推進機構は設立25周年感謝の集いを、年次の報告会も兼ねて行った。コロナ禍で中断していた対面式の報告会を東京・水道橋で行うことができた。  後半の法人賛助会員の方々からの「共生社会への取り組み報告」は、どの報告も重みがあり共生社会の実現も遠くないのではと思える報告ばかりであった。  大和リースの犬飼正樹さんは、報告の最後に一枚のポスターを提示された。今号のインクル15ページで紹介したポスターである。  このポスターから私は、2つのメッセージを受け取った。 一つは、共用品、共用サービスだけでなく「共用設備」、「共用施設」などさらに多くのモノ・コトを、「共用」にすることが必要ということ。  もう一つのメッセージは、「知ってもらうことの大切さ」。 財団法人になって25年、各種調査の実施、規格の作成など行ってきたが、それらは道具作り、必要なのはそれらの道具を使いながら、実践していくことと、このポスターを見ながら強く思った次第である。 共用品通信 【イベント(対面)】 第25回共用品推進機構活動報告会(12月18日) 障害者週間(千代田区)(12月3日~12月10日) 【委員会】 令和6年度第2回新たな日常生活における障害者・高齢者アクセシビリティ配慮検討小委員会(12月4日、星川・田窪) 【講義・講演】 千葉県成田市立公津の杜小学校(11月8日、森川) 日本福祉大学(岡山)(11月23日~11月24日、星川・森川) 臺灣 科学技術大学(12月16日、星川) 学習院女子大学(12月16日、田窪) 【報道】 時事通信社 厚生福祉 11月19日 葬儀について考える 時事通信社 厚生福祉 12月13日 おそうしきのえほん 時事通信社 厚生福祉 12月24日 福祉関係のマーク 日本ねじ研究協会誌 12月号 共生社会とマーク トイジャーナル 11月号 福祉のマーク トイジャーナル 12月号 サイトワールドに14年ぶりに出展 高齢者住宅新聞 11月号 視覚障害者へお勧めのモノや工夫 高齢者住宅新聞 12月号 コンサートチケット シルバー産業新聞 1月号 サイトワールドでのトイレの模型 アクセシブルデザインの総合情報誌 第154号 2025(令和7)年1月25日発行 "Incl." vol.26 no.154 The Accessible Design Foundation of Japan (The Kyoyo-Hin Foundation), 2025 隔月刊、奇数月25日に発行 編集・発行 (公財)共用品推進機構 〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2-5-4 OGAビル2F 電話:03-5280-0020 ファクス:03-5280-2373 Eメール:jimukyoku@kyoyohin.org ホームページURL:https://www.kyoyohin.org/ja/ 発行人 富山幹太郎 編集長 星川安之 事務局 森川美和、木原慶子、櫻井眞季、小林友美子、田窪友和 執筆 犬飼正樹、遠藤伸也、木津石生、後藤芳一、塩澤聡、鈴木我信、高橋玲子、富山幹太郎、深谷愛、和田真、日本レストルーム工業会UD委員会 編集・印刷・製本 サンパートナーズ㈱ 表紙 NozomiHoshikawa 本誌の全部または一部を視覚障害者やこのままの形では利用できない方々のために、非営利の目的で点訳、音訳、拡大複写することを承認いたします。その場合は、共用品推進機構までご連絡ください。 上記以外の目的で、無断で複写複製することは著作権者の権利侵害になります。