インクル157号  2025(令和7)年7月25日号 特集:「初(はつ)」 Contents 令和6年度共用品推進機構 事業報告 2ページ 共用品市場規模 2024年度調査報告 3ページ ともともフェスタ2025~迎賓館からはじまる共生社会~ 4ページ ともともフェスタ2025共用品推進機構・杉並区合同ブース 6ページ インクルーシブを“遊び心”から─Deaf VRと音感字の実験─ 7ページ 誰もが参加できる新たなボッチャのかたち~ともともフェスタ2025に参加して~ 8ページ トイレを気にせず外出できる社会を目指して―モバイルトイレ― 9ページ 包容性のある公共空間づくりを目指して──花博公園共用品実地調査報告 10ページ 共用品実地調査報告キーワードで考える共用品講座 第147講 11ページ シニアにスマホの使い方を!所沢市 富岡シニアスマホ学園の試み 12ページ アクセシブル・ブックスの入り口として~本の総合カタログBooks~ 14ページ ふれる博物館 「キャラクターをさわろう」展 開催中 15ページ 事務局長だより 16ページ 共用品通信 16ページ 2ページ 令和6年度共用品推進機構 事業報告  令和7年(2025年)6月、理事会、評議員会の書面審議により、今年度の事業報告が承認されました。 本誌では、共用品推進機構の大きな三つの事業について一部をご報告します。 調査研究  「調査研究」では、より多くの人々が、暮らしやすい社会となるためにニーズを把握し、製品・サービス・システムに関する配慮・考慮点の基準及び普及に関しての調査・研究を行いました。 「地域における良かったこと調査」では、新たな地域・分野において、「医療機関における良かったこと調査」や、「合理的配慮に関する調査」を実施しました。 さらに共創システム及びモニタリング調査システムの構築・検証として、「まつり企画に関するワークショップ」や「イベント企画に関するワークショップ」等を行いました。 継続して実施している共用品市場規模調査結果については、次頁で報告、ウェブサイトにて公開中です。 標準化の推進  「標準化の推進」では、これまでに行ってきた国際標準化機構(ISO)内のTC173(福祉用具)及びTC159(人間工学)等に提案し承認された案件を、国際規格制定に向けて国内委員会を設置し審議等を行いました。 また不足しているアクセシブルデザイン(AD)規格を明確にするために、共通基盤規格、デザイン要素規格のJIS原案作成における全体像の検証及び整理を行いました。 新規に開発した共用サービス(アクセシブルサービス)の検証を行うとともに、職場、店舗、消費者窓口、医療、公共施設、イベント等の共用サービスに関する既存のガイドライン及び各種ニーズ調査等を整理分析しました。 さらに、開発すべき共用サービスの個別規格の体系図を基に、新規のアクセシブルサービス(共用サービス)ガイドライン作成の検討を関係する業界団体等と連携して行うとともに共用サービスのパンフレットを作成しました。 普及・啓発  「普及・啓発」の展示会等の実施については、展示会主催者に協力し、展示会における高齢者・障害者配慮の実践を継続しました。 また、共用品の展示に関しては共用品展示セットを作成し、関係機関と連携した展示会を実施し、より多くの人たちに共用品及び共用品の考え方の普及を継続して行いました。 主な展示会は以下の通りです。 ①視覚障害者向け総合イベント「サイトワールド」(東京都墨田区) ②東京人権啓発企業連絡会・特別講演会(東京都品川区) ③「台湾福祉用具・長期介護展」(台湾台北市) ④全日本盲学校教育研究大会・熊本大会で共用品教材セットの初回(熊本県熊本市) 令和6年度もご支援をいただきありがとうございました。 今年度も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。 QRコード:共用品市場規模調査結果:https://www.kyoyohin.org/ja/research/report_marketscale.php イラスト:ワークショップなどのイメージ 3ページ 共用品市場規模 2024年度調査報告 日本能率協会総合研究所 経営ソリューション研究部 凌竜也(しのぎたつや)  本調査は、共用品の出荷額ベースの市場動向を把握するために、1996年に経済産業省(当時は通商産業省)の委託事業としてスタートし、以来現在に至るまで共用品推進機構によって継続して実施されてきた、国内唯一の共用品市場規模に関する定点調査である。 調査対象と手法  調査開始当初に検討した考え方に基づき、具体的な対象品目約30品目について、2023年度の共用品国内出荷額に関する調査を実施した。 調査手法は、対象品目の製造企業に対するアンケート調査に加え、公的統計、業界団体調査統計等も活用し、推計値をとりまとめた。 今年度の結果・傾向  2023年度の共用品市場規模金額は、3兆1688億円と推計され、前年比で0.5%(151億円)増とほぼ横ばいとなったが、4年連続で全体金額は上昇した。  個別の品目の状況について、出荷額の上位からみると、最も金額が大きく全体出荷額の1/3以上を占める「家庭電化機器(1兆1125億円:▲2.6%、302億円減)」は全体では出荷額をわずかに減らした。 5月に新型コロナ感染症が5類に移行し、消費者の旅行や外食等のサービスへの志向が高まる一方、物価高騰による節約志向も影響したと考えられる。 外出機会の増加やインバウンド需要で出荷額を伸ばした電気シェーバーのように例外を除き、多くはほぼ横ばいか微減で推移した。  品目別の出荷額では2番手となる「ビール・酒(5356億円:6.9%、345億円増)」については、ビール系飲料(ビール、発泡酒、新ジャンル)で、単価の高いビールの需要が、猛暑の影響や10月からの酒税改正の減税効果もあって数量を伸ばした。 対照的に新ジャンルは増税となったことで、出荷額を大きく落とした。 一方でビール系以外のジャンル(缶チューハイ等)は、コロナ禍以来の家飲みの定着等を背景に堅調に出荷額を伸ばし、ビールと合わせて全体金額の引き上げに貢献した。  上記に次いで高い出荷額となっている「住宅設備(3417億円:4.1%、160億円増)」については、新設住宅着工戸数が減少を続ける中、原材料費高騰によるメーカーの価格転嫁が進んだこと等により、出荷額を増やした。 今後の調査のあり方について  市場規模調査の対象品目は、2018年度のユニバーサルタクシーを最後に新たな品目は追加されていない。 これまでに対象としていなかった品目領域の中で、共用品としての配慮が普及することで生活にインパクトがあると思われるものの代表として、前回報告書では、PCやスマートホン等のIT機器についての周辺情報を紹介した。 この他にも、情報技術を基盤とする分野としては、たとえば「セルフレジ機」「電子書籍」「宅配ボックス」等があり、一方で「牛乳パックの切欠きの配慮」のように、アクセシブルデザインの関連JISにも登場する、馴染み深い品目も存在する。  実際に出荷額として報告するためには、各種調査による説明力のある情報収集に加え、品目によっては共用品となるための配慮点を定義付けすることも必要になるが、調査実施の目的の達成への貢献の視点から、新たな品目を継続して検討していきたい。 画像1:市場規模金額の推移 4ページ ともともフェスタ2025~迎賓館からはじまる共生社会~  5月30・31日、迎賓館赤坂離宮(東京都港区)にてイベント「ともともフェスタ2025~迎賓館からはじまる共生社会~」(内閣府主催)が開催されました。 きっかけ  きっかけは昨年10月、イタリアで行われたG7「包摂と障害に関する担当大臣会合」に出席された三原じゅん子(みはらじゅんこ)特命大臣が、会期中に行われた、共生社会を表現するイベントに感銘を受け、国内での開催を提案されたことでした。 障害のある人とない人が、共に考え、共に準備し、共に楽しみながら相互理解を促進することを目的としたイベントです。 準備  内閣府障害者施策担当部門に、実行委員会が組織され、企画が開始されました。 会場は「特別な雰囲気のある環境」での実施を目指し迎賓館赤坂離宮の前庭と決まりました。 公募により(株)JTBが運営事業者となり、全体構成、ブースの配置、メインステージの設置、情報保障の手配、ボランティアの募集、各種広報など、多岐にわたり短期間で準備を行いました。  当機構は、前身である市民団体E&Cプロジェクトの時代に、「バリアフリーは銀座から」というタイトルのイベントを銀座界隈15か所で2週間行った経験を思い出し、企画段階から協力させていただきました。  機構では、実行委員会が開催される前に、会場となる迎賓館を訪れました。 その印象は、都会の真ん中にある、とても落ち着いた、まるでオアシスのような空間で、この場所で過ごす二日間は、誰にとっても高揚感につながると感じました。 しかし、会場となる前庭は、一面10センチ角の石畳が敷き詰められており、特に車椅子を使用する方々にとっては、前輪が溝にはまってしまうので、配慮が必要でした。 また、多機能トイレも、来場者の想定数に対しては不足すると思われました。 対策  多機能トイレについては、日本トイレ協会から、トヨタ自動車を紹介していただき、普通車でけん引できる多機能トイレを提供していただくことになりました。  石畳には真っ赤なパンチカーペットが敷かれることになり、車椅子使用者である実行委員会と実行部隊であるワーキンググループのメンバーが、事前にカーペットを仮設した動線を確認し、何とか前輪が溝にはまらないことを確認しました。 マニュアル  出展者、出演者、ボランティアの人たちに、「知っておいてほしいこと」というマニュアル作成を申し出て、作成しました。 同マニュアルには、各障害の特徴と、コミュニケーションのポイントを取り上げ、事前の説明会で紹介、配布されました。 初日  30日の開会セレモニーでは、石破茂(いしばしげる)内閣総理大臣、小池百合子(こいけゆりこ)東京都知事、三原じゅん子(みはらじゅんこ)特命大臣、そして障害当事者を代表して大河内直之(おおこうちなおゆき)氏が、このイベントの意義をそれぞれの言葉で伝えられました。 石破総理は「障害者への社会的障壁を取り除くことは社会の責務です」と述べられました。 準備段階で「ともにイベントを作り上げていると実感している。開催を、相互理解を深めるきっかけにしたい」と話していた三原大臣は、関わったすべての人に感謝を伝えられました。 ステージ  ステージでは歌や音楽、お笑いライブ、落語、和太鼓パフォーマンスなどが繰り広げられ、モニターによる手話通訳や字幕表示を行いました。 ブース  展示ブースには30の団体が出展し、障害の有無にかかわらず楽しめるおもちゃ「共遊玩具」でのキッズプレイスペースや、聞こえないVR体験、聴導犬体験、手話教室、メイク教室、ボッチャやeスポーツ体験などが展開されました。  日本ホスピタル・クラウン協会のピエロ達が会場内を巡り、また、大阪・関西万博公式キャラクターのミャクミャクも登場し、皆を和ませてくれました。  両日とも大粒の雨が叩きつけ、気温も下がり、予想以上に困難な状況となりましたが、「ともに楽しむイベント」は、様々な立場の人たちがともに声を掛け合い、「自ら」楽しむことの大切さの気付きにつながったと思います。 櫻井眞季(さくらいまき) 写真1:ともともフェスタ2025チラシ 写真2:知っておいてほしいことマニュアル 写真3:オープニングセレモニーの様子 写真4:ステージプログラム 写真5:日本ホスピタル・クラウン協会のピエロ達 写真6:ブースの様子 6ページ ともともフェスタ2025共用品推進機構・杉並区合同ブース ともともフェスタ2025では共用品推進機構もブース出展を行いました。 誰もが共に生き、共に楽しめる「共生社会」の実現をするための合理的配慮をテーマに展示を行いました。 パネル  展示するにあたり、パネルは杉並区と制作したガイドブック『合理的配慮って何だろう?』を参考にしました。 合理的配慮を提案サイドと実施サイドが端にあります。 それぞれが中央の丘を登っていき、頂上の「対話の丘」にたどり着きます。 対話の丘では、共に解決策を検討し、合意した解決策から共用品が生まれてくる流れになっています。 展示製品  展示した共用品は、かしわ餅、クロワッサン、コンビニエンスストアのレジカウンターにある指差しシート、紙パック飲料、高台に溝があり持ちやすい汁椀、左利き・右利き・兼用のトランプ、 片手で紙が切れるトイレットペーパーホルダー、音声で薬の説明を聞くことができるQRコード、軽い力で開くダブルクリップやコンセントプラグ、アルコール缶飲料、シャンプー・リンス・ボディソープ容器、 絵本『てんじつき さわるえほん まんじゅうこわい』と絵本に出てくるモノの立体模型、家庭用ラップ、一体オセロ、玩具(紙パック飲料、シャンプー・リンス)等、約20点を展示しました。  また、製品だけでなく公共トイレのボタン配置や身長の高低にかかかわらず取りやすい縦並びの商品配列の提案をミニチュアサイズで展示しました。  二日間とも雨の降るあいにくの天気でしたが、沢山の来場者が共用品を手に取り「へー、そうなんだ」「そうそう」と熱心に説明を聞いてくださいました。 中には、ステージの春風亭昇吉師匠の落語を聴いて、展示品のさわってわかる絵本『まんじゅうこわい』を見に来てくださる方もいらっしゃいました。 屋外での展示は今回が初めてでしたが、今後も様々なシチュエーションでの展示をすることで多くの人に共用品を知ってもらえたらと思っています。 田窪友和(たくぼともかず)・関戸菜美(せきどなみ) 写真1:『合理的配慮って?』パネル 写真2:展示の様子 写真3:写真:ミニチュアサイズの公共トイレのボタン配置(写真左)、縦並びに変えた商品配列(同右) 写真4:来場者の様子 7ページ インクルーシブを“遊び心”から─Deaf VRと音感字の実験─ 株式会社シー・エヌ・エス 牧村正嗣(まきむらまさつぐ) 1.Deaf VRとは  『Deaf VR』は、聞こえづらさを“体感”できるVRコンテンツです。 日常生活の中で、たとえば「名前を呼ばれても気づけない」「背後からのアナウンスが聞こえない」「テレビの音が雑音にしか感じられない」――そんな“聞こえにくさ”のリアルを、視覚効果と振動を通して再現しています。 私たちが「当たり前」と思っている音のある世界が、実はとても限られた体験であることに気づいてもらうために、あえて〝音のない感覚〟に身を置いてもらう。 『Deaf VR』は、そうした「共感の入り口」をつくるための試みです。 2.開発のきっかけ、実績  きっかけは、私自身の娘が先天性の難聴をもって生まれてきたことでした。 さらに、てんかんや発達の遅れ、身体のコントロールが難しいなど複数の困難が重なっており、遺伝子検査の結果、世界で12例しか報告されていない希少な症例であることが判明しました。 その中でも、難聴と重なっているのは娘ただひとり――。 どう育てたらいいのか、どう寄り添ったらいいのか。 正解がない中で私が出した答えのひとつが、『Deaf VR』の開発でした。 「彼女の世界を、自分自身も〝体験〟してみたい」――それが原点です。 2018年夏にローンチして以来、教育機関やイベントでの展示を通じて1500人以上が体験。 NHK「難聴者の世界をVRで体験」でも特集され、世の中の関心が少しずつ広がっていくのを感じました。 3.ともともフェスタ2025でのDeaf VR  このたび参加したともともフェスタでは、あいにくの天気となりましたが、たくさんの方に足を運んでいただき、Deaf VRを体験してもらうことができました。 来場された方々の中には、障害についてあまり知らなかったという方も多く、「初めて〝聞こえない〟感覚を意識した」と感想をくださった方もいました。 VRゴーグルを外したあとに見せる表情や沈黙に、私は毎回、小さな変化が生まれる瞬間を見つけています。 天気は悪くても、心の中に残る時間は、とても温かいものでした。 4.今後の展開  Deaf VRは、単なる教育ツールではありません。 「聞こえない人が困っている」ことを知るだけでなく、「聞こえる人がどう関われるか」を考えるきっかけをつくる装置でもあります。 今後はさらに、 ・学校や企業研修での活用 ・視覚・触覚に特化したインターフェースとの連携 ・難聴者やろう者との共創による改善・発展 などを進めていく予定です。  また、『Deaf VR』をもとにした新しい取り組みとして、「音おとかんじ感字」プロジェクトにも力を入れています。  これは、音を〝見える言葉〟で表現することで、音のある世界とない世界をつなぐ試みです。  擬音語や色・動きなどを使い、音を「想像できる」かたちにしていく辞典のようなプラットフォームを、SNSなども活用しながらみんなで作っていきます。  いまの社会には、「気づけないこと」がたくさんあります。 でも、気づいたその瞬間から、優しさや共感が始まると、私は信じています。  Deaf VRや音感字が、その「気づき」の最初の一歩になれたら――それが、私の願いです。 写真1:Deaf VR体験の様子 8ページ 誰もが参加できる新たなボッチャのかたち~ともともフェスタ2025に参加して~ 株式会社ユニコーン 引地晶久(ひきじあきひさ)  2025年5月に開催された「ともともフェスタ2025」で、ユニコーンはeBOCCIAの体験ブースを出展させていただきました。 本記事では、eBOCCIAのご紹介と、ともともフェスタでの体験の様子をご紹介させていただきます。 eBOCCIAの開発のきっかけ  ボッチャは身体障害者のために考案されたスポーツで、パラリンピックの正式種目となっています。 現在では障害の有無に関わらず、多くの方が楽しまれているスポーツとなっています。 しかし、自分の力でボールを投げる、転がすことが困難な重度の身体障害の方にとっては参加しにくいスポーツでした。 そんな中、「クラスメイトとボッチャがしたい」という重度障害のお子さんの願いからeBOCCIAの開発は始まりました。 この願いを実現するために、視線入力やスイッチ操作などの多様な入力方法を取り入れ、誰もが競技に参加できるようなシステムを作り上げました。  販売を開始した2024年以降、eBOCCIAは全国に導入が進み、イベントや大会などで多くの方々に体験していただいています。 また、広島県ボッチャ協会主催の大会において、オンラインで出場したeBOCCIAのチームが手投げ選手に勝利する活躍を見せてもらいました。 誰もが参加できるeBOCCIA  eBOCCIAは、障害の有無に関係なく、誰でも参加できるボッチャを実現するために開発されたスポーツシステムです。 そのためにeBOCCIAは様々な手段で競技ができることが大きなポイントです。 例えば、身体のわずかな動きを受け取れる入力機器や、目線の動きで操作できる視線入力など、操作する方の状態に応じて操作方法を選択できます。 これらの入力方法は、eBOCCIAを使っている当事者の声を反映して改良されており、みなさんが自分に最適な方法で競技を楽しめるように進化を続けています。 さらにeBOCCIAのもうひとつの特長として、遠隔で操作することが可能です。 外出することが困難な方でも、遠く離れた地域の方でも、自宅や病院などから一緒にボッチャを楽しむことができるのです。 今後は、障害の有無や住んでいる場所といった垣根を超えた競技の場が広がっていくと実感しています。 ともともフェスタ2025  「ともともフェスタ2025」では、eBOCCIAの体験ブースが設けられ、多くの来場者に実際に視線入力やスイッチ操作、ゲームコントローラーを使用してのボッチャを体験していただきました。 さらに、開発のきっかけになった重度障害のお子さんが遠方から駆けつけてくださり、参加された方に上手な操作の様子を見せてくださいました。 来場者の方々は、身体的な制約があっても、誰でもボッチャを楽しむことができることに驚き、感動してくださいました。  ともともフェスタでは、eBOCCIAが提供するインクルーシブスポーツとしての力強いメッセージを多くの人々に届ける貴重な機会となりました。 ともともフェスタのテーマでもある「共生社会」、それを私達はeBOCCIAや様々なテクノロジーを通じて実現していくことを、これからもチャレンジし続けます。 写真1:eBOCCIA体験ブースの様子 9ページ トイレを気にせず外出できる社会を目指して―モバイルトイレ― トヨタ自動車株式会社 CJP企画部 内山田はるか(うちやまだはるか)  2025年5月30と31日、迎賓館赤坂離宮で開かれた「ともともフェスタ2025」に、自社で開発したバリアフリートイレ車両「モバイルトイレ」を1台提供させていただきました。 モバイルトイレとは  モバイルトイレとは、移動型のバリアフリートイレトレーラーです。 特徴は「いつでも、どこでも、だれでも」使えるということ。具体的には以下のような仕様です。 ■いつでも:災害時だけでなく、平時のイベント等での使用も可能 ■どこでも:普通免許でけん引移動でき設営撤去が簡単 ■だれでも:介助用ベッドやスロープ等を備えており車椅子を含めた多くの方が利用可能  稼働には1500W以上の電力と洗浄1回当たり0.5リットルの水が必要ですが、電源が無い場合でもけん引する電動車からの給電でトイレを動かすことが可能です。 きっかけは車椅子高校生の声  企画の始まりは2019年、とある車椅子の高校生のつぶやきでした。 「トイレがあれば、もっと気軽に外出ができるのに」。 健常者にとってはあまり気にすることのないトイレが、障がい者にとっては外出の障壁であることに気づき、動くバリアフリートイレづくりがスタートしました。 車椅子利用者と介助者、運用者となりそうな行政関係者などの意見を聞いて改善を重ね、2024年夏に販売を開始しました。 能登半島地震と関心の高まり  同年1月から8月まで、試作車1台を石川県能登町と珠洲市の避難所に提供しました。 現地では、障がい者だけでなく、高齢者や子供連れも、トイレの段差や、個室の広さなどに苦労しているという話を多く耳にしました。 そのような影響もあってか、自治体を中心に25年度末までに全国で20台が導入される予定です。 保有自治体間で、災害時に車両を提供しあうネットワークも形成されました。 より一層の普及を目指して  一方で、我々はもう少し欲張りな目標を掲げています。 このようなバリアフリートイレが「平時から社会の中で普通に使われる一般設備」となることを目指しています。 キーとなるのは平時の稼働率の向上です。 導入に際して平時の活用方法を広げていただくために、私たちも、就労(農福連携)や教育(特別支援学校の校外学習)の場での活用など、いくつかの実証実験を通して可能性を探索しています。 ともともフェスタに参加して  今回参加の機会をいただいたともともフェスタに、私たちは大きな期待を寄せています。 同様のインクルーシブなイベントが国内のあちこちで開催され、そこには当たり前にバリアフリートイレがあるといいな、と思います。  トイレに困らずに外出をする、就労をする、教育を受ける、避難方法を選ぶなど、本来どれもすべての人が当たり前に享受できる環境づくりに、私たちも少しでも貢献して行ければと思っています。 写真1:モバイルトイレ QRコード:モバイルトイレ製品HP 10ページ 包容性のある公共空間づくりを目指して──花博公園共用品実地調査報告 社団法人台湾共用品普及協会 藍佩君(らんぺいじゅん)  台湾共用品普及協会は、日本の共用品推進機構に触発され、障害者や高齢者を含む多様な人々が安心して利用できる製品やサービスの普及を目的に2025年3月8日に正式設立されました。 本調査は、その一環として台北市の花博公園および周辺施設において、「良かったこと調査」の手法を用いたフィールドリサーチを実施したものです。  花博公園は、展示館、商業施設、福祉用具センターなどを擁し、バリアフリー整備が進んだ公共空間です。 調査では、視覚・聴覚・身体・精神障害者および高齢者など103名が参加し、交通手段、施設利用、案内表示、スタッフ対応などについての体験を共有しました。  回答者の多くは公共交通機関を利用しており、全体の94.2%がスムーズなアクセスを実感していました。 一方、情報表示の分かりづらさや動線の不明瞭さ、スタッフの場所が把握しづらいといった課題も浮き彫りとなりました。 補助具の利用状況では約3割が使用しておらず、日常の外出頻度も個人差が大きく、社会参加の格差が存在しています。  「良かったこと」として最も多く挙げられたのは、清潔なトイレ、親切なスタッフ、福祉用具センターの専門性、空間の快適さ、明確な表示などでした。 これらは、利用者にとっての安心感や満足度を高める重要な要素です。  障害種別に応じた分析では、身体障害者からはスロープや歩道整備の不備、視覚障害者からは点字・音声案内不足、聴覚障害者からは字幕や筆談対応の欠如、 精神障害者からは過度な刺激や休憩スペース不足、高齢者からは情報理解の困難や身体的負担への懸念が指摘されました。 これらの課題に対し、各利用者からは環境調整や情報支援、スタッフ研修の必要性など、具体的な改善提案が寄せられました。  調査を通じ、花博公園は全体的にバリアフリー性が高く、共用品の理念が実践されていることが確認されました。 しかしながら、利用者の多様性に応じた細部の改善余地も残されています。 今後は「良かったこと」を積極的に収集・共有し、単なる「不便の解消」に留まらない、前向きなデザインと運営への転換が求められます。  本調査は、台湾における共用品推進の実践モデルとして、他の公共空間や施設への応用可能性を示す重要な先例となりました。 高齢社会と多様性社会が進展する中で、共用品の理念が社会全体に浸透するための一助となることが期待されます。 写真1:台北市の花博公園および周辺施設での実地調査 11ページ キーワードで考える共用品講座 第147講「共用品の普及における『初』の意義」 日本福祉大学 客員教授・共用品研究所 所長 後藤芳一(ごとうよしかず)  共用品は不便さ対応の新しいあり方を提案・普及する取組みだった。 よって活動の多くが社会にも共用品関係者にも「初」だった。 取組みによる社会の変化が普及活動の次のあり方に影響を与えるという相互作用で進んできた。 1.「概念」を創る  共用品推進機構の前身の一つであるRIDグループが活動を始めたのは1972年、同グループは82年に世界に先駆けて「グレーの部分」を提唱した。 その後、推進組織はE&Cプロジェクト(91年発足)から共用品推進機構(99年同)に発展し、共用品の原則や定義を定め・改定した。 2018年には「共用品」が広辞苑 第七版(岩波書店)に初めて収載された。 共用品を提唱したE&Cプロジェクトの発足から30年近くを経て社会的な認知を得ることとなった。 2.「不便さ」を共有する  不便さの実態を明らかにするため、E&Cプロジェクト発足の当初から「不便さ調査」(1992年から、感覚障害、知的障害、高齢者、妊産婦ほか)を始め、次の段階として「良かったこと調査」(2013年から)を行っている。  E&Cプロジェクトが企画して、銀座を舞台に展示会「バリアフリーは銀座から」(97年)を開いた。 その後は共用品推進機構として「国際福祉機器展&フォーラム」(毎年)ほかの展示会に出展している。 「ともともフェスタ2025」(2025年)もその延長にある。  調査事業には不便さを調べて産業界(モノやサービスの提供側)や行政と共有する意味があり、展示会にはそれらを整理・概念化して発信する意義がある。 こうした直接の目的とともに、事業として行って対外発信し、社会の受け止めから学ぶことが、活動の発展と組織の強化につながっている。 3.産業が取り組む「環境」を創る  1995年に市場規模の公表を始めた。 市場規模を調べる前に、調査対象の定義(何が共用品に該当するか)、さらにその前に福祉用具や一般品などと対比しつつ共用品の概念を整理した。 調査と結果の公表は、現在も共用品推進機構が行っている。  プリペイドカード(96年)から始めて産業標準化を進め、サービスを含む多くの品目に広げている。 国際標準化にも取り組み、日本が提案して横断的ISO/IECガイド71「規格におけるアクセシビリティ配慮指針」(現在名称、2001年制定、14年改定)につなげた。  共用品の普及が持続するには産業の活動と調和する必要がある。 市場規模の推移が測定できる形で提供され、産業標準が共有されることは必要条件である。 共用品推進機構はこうした活動を事務局として担っている。 機構は各種の活動を行うとともに経験と組織力を蓄積し、より本格的な活動ができるようになった。 4.「政策」と「社会」に寄与  共用のモノやサービスの普及と活用には、受け手の側も送り手の側も、広い分野の人たちが関わる。 当事者や供給者がともに分野横断的に取り組むことで、すき間のない普及が可能になる。 2003年に共用品推進機構が中心となって後者の横断的な組織であるアクセシブルデザイン推進機構を組織した。 専門性(例:家電、交通、包装)を持つ団体や政府の事業を行う組織(例:福祉用具、規格、製品安全)が参加し、共用品推進機構はその事務局を務めている。  国連障害者権利条約の締結(2014年)に先だって障害者基本法が改正された。 同法が設けた内閣府障害者政策委員会には共用品推進機構からも委員が加わった。 条約の基本である障害の社会モデルでは、環境の不備は障害をつくる一因とされる。 共用品にも責任が生じうる。 政策委員会の都度、機構に関係者が集まって発言を準備して委員会に反映させた。 いま機構では合理的配慮の紹介と普及を行っている。  共用品の活動はこうして分野間連携や、政策への実践の反映を通じて寄与している。 連携や実践は、機構の前身時代からの特色であり、活動の広がりと共にその精神をも社会に普及させつつある。 12ページ シニアにスマホの使い方を!所沢市 富岡シニアスマホ学園の試み 早稲田大学 藤本浩志(ふじもとひろし) はじめに  近年様々な行政サービスの入り口として、情報の取得や行政サービスの参加申し込み等々、スマホの利用を前提としている場合が多い。 その一方で、サービスを受ける側である高齢者の多くは、スマホを持っているが使い方の知識が十分でない場合は多い。 行政サービスは必要としている人々にそれが適切に届いて利活用されることが重要であるが、高齢者にとってデジタルデバイドを生む一種の障壁とも言えるような現状がある。  筆者が所属する早稲田大学人間科学部では、広範な社会課題に対して学際的立場から同僚たちと実証実験研究や社会実装を目指した教育研究に携わっており、キャンパスがある所沢市とも研究のフィールドとして長年連携関係を構築してきた。 そのような中で冒頭の課題に対して、市役所の興味深い取り組みに触れる機会があり、機関誌『インクル』の趣旨にも沿う事例として、紙面を借りて紹介したい。 『富岡シニアスマホ学園』事業  本稿で紹介する所沢市の事業の内容を端的に表現すると、高齢スマホユーザーの質問に若いボランティアが答えるという事業である。 質問する側は地域の高齢者で、回答する側はボランティアの高校生や大学生(以下:学生)である。  私が今回同席する機会を得たのは、市内の富岡地区での高評価を踏まえて、5月下旬に初めて別地区(新所沢)のまちづくりセンターで出張開催された回であった。 相談開始の30分前には学生たちが集合し、担当職員を中心とした『大人』と呼ばれるスタッフから基本的な注意点の説明があった。 学生もリピーターが多く、特に混乱はなく開始時刻を迎えた。 当日は学生20数名で、広い会場には学生の人数分の3人掛けテーブルが並んでおり(学生の協力で短時間で会場作りができた模様)、それぞれのテーブルに高齢者が誘導されると、今回は一枠30分程度として早速やりとりが始まった。  因みに『大人』と呼ばれるスタッフは、まちづくりセンターの担当の方に加えて、他にも専門的な部分に詳しい(株)ジェイコム所沢局の方や、シニア世代との接し方に詳しい地元の地域包括支援センターの方との体制が構成されており、回答に困るような際には学生が挙手して『大人』と一緒に対応する体制が取られていた。 相談中も挙手があればプロフェッショナルである『大人』が関与することでスムーズに対応されていた。 当日の高齢者は学生の2倍強来られていて、特に厳しく制限時間の入れ替えと言うこともなく、2回転強という印象であった。  相談終了後には、学生たちと『大人』が車座になり、毎回30分程度の反省会がある。 対応した質問項目や各学生からの気付きの共有で、高齢者とのふれあいが学生たちにとっても大変意義深い経験であることが伝わってきた。 またこの事業を企画運営している担当の方によると、学生一人一人が次回開催に向けた改善案等の意見を出し合ってそれらを取り入れることで、学生たち自身が事業を作り上げる土壌ができているとのことであった。 若者に市の事業への当事者意識を感じてもらう点からも意義を感じる。 個人的な雑感  以下、現場で学生の様子見ていたり、その中の何人かと話をしたことで受けた個人的な感想を述べる。 学生全員から聞いた訳ではないので、あくまでもそういう学生もいたと言うことで紹介したい。  学生には謝金が支払われないのに、なぜリピーターとしてこの事業に参加するのかを聞いてみた。 謝金は無いがボランティア証明書が発行されるということでそれはうれしいとのことであった。 確かに昨今、受験や就職活動等で役立つようだ。 でもたとえ僅かであってもやはり謝金があった方が良いのではないかと振ったところ、それも否定しないが謝金目当てで来られるのも違うかなという感じで今の条件でも参加する学生たちとこの事業に関わりたいという意見も聞いた。 また、日頃は高齢者と直接話をする機会もたくさんある訳ではないので、話をしていても楽しいという意見もあった。 例えば遠方で暮らすお孫さんと写真のやりとりができるとか喜んでもらえると嬉しいとか、スマホの操作方法の相談に限らず合間に普通の世間話をする時間も楽しいとのことだった。  3人掛けテーブルの両端に座ることになるが、相談中にどんどん距離(距離感も)が近づいていくことを感じた。 また高齢者がテーブルに誘導されてきたら、ごく自然に椅子を引いたり、また一人の相談者が杖をテーブルに立てかけて座ろうとした際にその杖を床に倒してしまってかがんで拾おうとした際に、学生が優しくそれを制して自ら素早く拾う姿が特に印象に残っている。 大学で私の授業を履修していた者が1名いたので少し合間に話をしてみた。 大学のキャンパスは所沢市内の別地域となるが、近くにもまちづくりセンターがある(市内には11地域のまちづくりセンターがある)ので、もしもそちらでも同様のシニアスマホ学園事業が実施されるようなら、大学の友人たちも参加するのではないかとのことだった。 既に多くの学生たちが登録していると聞くが、今後も参加学生の掘り起こしの可能性と共に、事業の持続可能性も感じることができた。 おわりに  決してこのようなことが自然にできる若者たちばかりではないと承知はしているが、今回の事業の様子を実際に目の当たりにして、あくまでも個人的な感想として若者世代への期待感が膨らんだ。 同様の取り組みが、他の自治体でも試みられているであろうことは理解しつつ、少なくとも所沢市のこの取り組みは、広範な行政サービス事業の利活用率の向上を目指す際の、入り口に於けるボトルネックの一つの解決策として機能しているように感じた。 学生たちに感謝の気持ちを伝えて退室される高齢者の表情から満足感が見て取れた。 限られた予算の中で、担当職員ら皆さんの多大なご努力によって、今後も引き続き事業が継続して一つの成功事例をとなることを期待しつつ、ご関係の皆さんの取り組みに敬意を表したい。 写真1:相談の様子 写真2:反省会の様子 写真3:シニアスマホ学園ボランティア募集チラシ(所沢市のホームページより) 14ページ アクセシブル・ブックスの入り口として~本の総合カタログBooks~ 一般社団法人日本出版インフラセンター 落合早苗(おちあいさなえ)  Booksは、1997年に日本書籍出版協会の「「データベース日本書籍総目録」として誕生しました。 2019年に日本出版インフラセンター(JPO)の下部組織「出版情報登録センター(JPRO)」のデータベースと統合、運営もJPOが引き継ぎ、本の総合カタログとして生まれ変わりました。 この年の6月に「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)が成立・施行され、Booksは読書に困難を抱える方にとっても使える道を探りはじめます。 本の総合カタログを目指して  2022年10月には、紙の書籍だけでなく、電子書籍も検索できる(ただし、底本が紙書籍であるものに限る)サイトにリニューアルします。 電子書籍は文字の拡大ができるだけではありません。 キンドルストアなどの一部の書店では、制作の仕方によって、合成音声読み上げ(TTS)ができる電子書籍もありました。 障害の有無にかかわらず、読みたい本の選択肢を増やすことは、読者の利便性につながるものと考えました。  さらに2023年3月には、ウェブアクセシビリティの規格JIS X 8341―3:2016「A」に準拠し、音声読み上げに対応しました。 翌2024年3月には、国立国会図書館のAPIを通じて、国立国会図書館やサピエで閲読可能な点字データやDAISYデータに関する情報も表示できるようにしました。 一方、JPROのデータベースでは、オーディオブックの登録も開始しました。 電子書籍の点数も、さらにはTTS対応の点数も増えていきました。 雑誌の登録も本格的にはじまって、Booksで検索できる出版物は、今や400万点を超えるまでに膨らみました。 文字通り本の総合カタログへと着実に進化しています。 今年2025年4月には、「アクセシブルブックを探す」に絞った機能を付加し、専用コーナーを設置しました。 読書をあきらめないでほしい  盲学校には、サピエ図書館が利用できることや、図書館でリクエストすれば、対面朗読のサービスを受けられることを知らない児童や生徒、保護者が案外多いそうです。 はじめから本を読むことをあきらめてしまっているのでしょうか。大変悲しいことです。  本好きにとってはあたりまえのように手に入る新刊の情報を、誰にでも届けられるようにすること。 アクセシブルブックを今後どう増やしていくかは、とても大事ですが、それ以上に本の情報そのものにアクセスする道を広げていきたいと思います。 写真1:本の総合カタログBooks QRコード:https://books.or.jp 15ページ ふれる博物館 「キャラクターをさわろう」展 開催中 日本点字図書館 伊藤宣真(いとうのぶざね)  くまモン、ドラえもん、今話題のアンパンマン。 晴眼者は姿かたちを容易に思い浮かべられますが、それら有名なキャラクターでさえ、見たことがない全盲の視覚障害者はかたちを想像することはできません。 本誌でもたびたび紹介しております当館附属ふれる博物館では、このたび「キャラクターをさわろう」と題した企画展を9月13日まで開催し、キャラクターにふれていただきます。 ふれる博物館  ふれる博物館は、2018年4月に日本点字図書館分館において開館しました。視覚障害者が、2次元、3次元の情報を理解するための、点字、音声に加えた新たな触察という手段の情報提供です。 大内進(おおうちすすむ)氏(国立特別支援教育総合研究所名誉所員)による「手と目でみる教材ライブラリー」から所蔵物をお借りして展示することからスタートしましたが、今は多くの団体や企業等の協力をいただき、多様な企画展を開催できるようになりました。 展示物の提供依頼  ふれる博物館は、点字図書館事業の延長線上にあり利用(来館)は無料で、収入がない分費用は極力切り詰め、展示する資料は購入ではなく無償で提供いただくことを基本としています。 キャラクターといっても分野が広く、どのように取捨選択し、どこに展示資料の依頼をすればよいか、元おもちゃ博物館館長の久米井靖裕(くめいやすひろ)様、共用品推進機構の星川安之(ほしかわやすゆき)専務理事に相談し展示物を選定、玩具としてあるものは一般社団法人日本玩具協会(以下、日玩協という。)の協力を得ることにしました。 日玩協は、本誌120号でも紹介されていますが、障害の有無に関係なく一人でも多くの子どもたちに楽しい玩具を届けたいと、「共遊玩具」の開発・普及に取り組んでいます。 それだけに本展の主旨にすぐに賛同いただき、ご協力いただけました。 今までの展示会では施設の所蔵品や、私物をお借りしていたため、権利関係には触れず、当館の責任で対応できていましたが、今回は企業から借りるため、いったん版権を持っている会社にお伺いを立てないと企業に迷惑がかかります。 その版権の処理、POPの原稿の監修も各メーカーに行っていただきました。 また、日玩協に加盟していないメーカーへは月刊トイジャーナル特別顧問、伊吹文昭(いぶきふみあき)様にご紹介いただき、とても助かりました。  その他、様々なご協力を得て、「鉄腕アトム」、「ピーポくん」、「ちいかわ」、「スヌーピー」、大阪・関西万博「ミャクミャク」等々、昭和の懐かしいキャラクターから、最近のキャラクターまで約40種類を展示し、分野、世代を超えたキャラクターワールドを紹介しています。 無ければ自ら作る  無いものについてはスタッフが製作します。今までゴールボールの幅9メートルのゴールネットや皇帝ペンギン、ローマにある真実の口などの模型を実物大で作りました。 今回は、日本の縄文時代、古墳時代のキャラクターともいえる土偶・埴輪の模型を製作し展示し、好評を博しています。 ぜひご来館ください。 写真1:企画展「キャラクターをさわろう」 写真2:展示様子 16ページ 共用品3つの「初」 【事務局長だより】 星川安之  今回の特集「初」、共用品推進機構の3つの事業「調査」、「標準化」、「普及」それぞれの初について紹介します。  1991年4月、前身の市民団体E&Cプロジェクトは、日本点字図書館集会室で、初会合を開き、集まった20名で活動目的を確認し、1カ月に1回の会合を開くことを決めました。 2回、3回と会合を重ねる中で、障害の有無、年齢の高低に関わらず共に使える製品・サービスを「共用品」と名づけ、3回目の会合で、国立特殊教育研究所に勤務されていた全盲の木塚泰弘(きづかやすひろ)さんを皆で囲んで、木塚さんの「朝起きてから夜寝るまでの生活」を聞いたことが、調査に関する「初」でした。 多くのメンバーは、それまで外側からしか見ていなかった視覚障害者の内側である生活を初めて知り、目から鱗を落としました。  その体験がきっかけとなり、全国の視覚障害者300人に「朝起きてから夜寝るまでの不便さ調査」を行いました。 アンケート用紙は、点字版、大きな活字版、音声版、電話、対面など、それぞれの人にあった方式で行なったところ、山のように不便さが明らかになりました。  「平面に書かれた文字やイラスト、写真が分からない」、「思い通りに歩きまわることができない」が、2大不便さでした。 プロジェクトでは調査は出発点であり、明らかになった課題の解決案を考える「班」が複数、結成されました。 パッケージ班、操作性班、サービス班、ATM班に加え、カード班等が結成され、それぞれ解決案の検討を行うことになりました。 カード班は当時、全盛だったプリペイドカードが、電話用、交通用、買い物用などが触って区別できないという不便さを受けて、デザイナー、関係企業・業界に加えて、視覚障害当事者が知恵を出し合いました。 その結果、カードの左手前に、電話用は半円、交通用は三角、買い物用は四角の切り欠きを付ける案でまとまり、その後、当該分野初の日本産業規格(JIS)となり、現在48種類になっているアクセシブルデザイン関係のJISの先導役となりました。  増えてきた共用品を知らせると共に、調査結果、標準化の状況を多くの人に知っていただくために1993年に初めて行ったのが、東京銀座のソニービルでの「共用品展」でした。 3回目の97年には銀座界隈15か所の企業等に協力していただき「バリアフリーは銀座から」と題したところ、2週間で約20万人の人たちが参加してくださいました。 今回のインクルで紹介した内閣府主催の「ともともフェスタ2025」の副題「迎賓館からはじまる共生社会」は、共用品推進機構からの提案が採用されました。 共用品通信 【イベント】 ともともフェスタ2025(5月30・31日) 【会議】 台湾共用品普及協会 会議(5月13日、6月3日) ともともフェスタ2025 出展者・ボランティア説明会(5月20日) 第35回通常理事会(書面審議)(6月6日) 第29回定時評議員会(書面審議)(6月26日) 理事、監事、評議員意見交換会(7月3日) 網膜色素変性症協会 共用品WG(6月13日、7月3日) 【講義・講演】 跡見学園女子大学(5月13日) 中国地区信用組合協会(5月19日) 早稲田大学 藤本研究室(6月12日) 慶応義塾大学(6月17日) 台湾 金属工業研究発展中心(6月24日) 【報道】 時事通信社 厚生福祉 5月20日 人を楽しませる仕事 時事通信社 厚生福祉 6月13日 新宿区戸山図書館 トイジャーナル 6月号 未来のひみつの道具 トイジャーナル 7月号 ともともフェスタ2025 高齢者住宅新聞 6月号 メニューの伝え方 高齢者住宅新聞 7月号 集合住宅のコミュニケーション シルバー産業新聞 7月号 迎賓館でのイベント 包装タイムズ 6月16日 包装の力で共生社会に貢献 アクセシブルデザインの総合情報誌 第157号 2025(令和7)年7月25日発行 "Incl." vol.26 no.157 The Accessible Design Foundation of Japan (The Kyoyo-Hin Foundation), 2025 隔月刊、奇数月25日に発行 編集・発行 (公財)共用品推進機構 〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2-5-4 OGAビル2F 電話:03-5280-0020 ファクス:03-5280-2373 Eメール:jimukyoku@kyoyohin.org ホームページURL:https://www.kyoyohin.org/ja/ 発行人 富山幹太郎 編集長 星川安之 事務局 森川美和、櫻井眞季、小林友美子、関戸菜美、田窪友和 執筆 伊藤宣真、内山田はるか、落合早苗、後藤芳一、凌竜也、引地晶久、藤本浩志、牧村正嗣、藍佩君 編集・印刷・製本 サンパートナーズ㈱ 表紙 ともともフェスタ 共用品推進機構・杉並区合同ブース 本誌の全部または一部を視覚障害者やこのままの形では利用できない方々のために、非営利の目的で点訳、音訳、拡大複写することを承認いたします。 その場合は、共用品推進機構までご連絡ください。 上記以外の目的で、無断で複写複製することは著作権者の権利侵害になります。