インクル158号 2025(令和7)年9月25日号 特集:障害学生支援 Contents 『共用品を探そう!』発行にあたって 2ページ 半世紀前の福祉分野からの視覚障害学生支援~事例を中心に~ 4ページ 大学における障害学生支援 5ページ 大学の障害学生支援 6ページ 跡見学園女子大学における障害のある学生への支援 7ページ 「勇気と覚悟」 視覚障害学生の実験教育における技術支援 8ページ キーワードで考える共用品講座 第148講 9ページ 東京2025デフリンピック開幕に向けて10ページ 聴覚障害の視点で歩いて見て感じた大阪・関西万博12ページ ミニチュアサイズの小さな共用品 14ページ 日本ホテル協会のバリアフリー配慮ホテルデータベース 15ページ 事務局長だより 16ページ 共用品通信 16ページ 2ページ 『共用品を探そう!』発行にあたって 2025年7月に、共用品推進機構は冊子『共用品を探そう!』を発行しました。本誌では、紙面の構成についてご紹介します。 クイズ式で共用品を探す  共用品を探す場所は、「街」、「駅」、「リビングルーム」、「キッチン・ダイニング」、「洗面所・浴室・トイレ・玄関」の五つです。  それぞれの場所は見開き(図1)になっています。共用品がどこにあるかのヒントは、紙面の上部(A)にあります。  「共用品」は、イラスト自体にヒントがあるもの(B)、イラスト近くにヒントがあるもの(C)もあれば、イラストだけで見つけなければならないもの(D)などがあります。  回答は次の見開きページ(図2)にあります。ページのどこに配慮があるか、その配慮はどのようなものかが分かるようにしました(E)。配慮は大きく二つに分けました。 「知る・知らせる共用品」、「操作・取扱いしやすい共用品」です。それぞれ、「見てわかる配慮」、「聞いてわかる配慮」、「触ってわかる配慮」、「使いやすい配慮」に整理しました。 一つの製品でも二つ以上、三つ以上の配慮があるものもありますが、ここでは探すときの目安として主なものを中心にしました。  それぞれの配慮が分かると、最初に見たときには気が付かなかった配慮も探しやすくなります。そして、ここに書かれていない様々なモノや配慮にも気付きやすくなります。 標準化への道  冊子では、クイズ式で共用品を探すほか、「だれかの不便」を「みんなの便利」にするための日本産業規格(JIS)であるアクセシブルデザイン規格48種を紹介しています。 カテゴリーは、基本規格(3種)、視覚的配慮規格(4種)、聴覚的配慮規格(3種)、触覚的配慮規格(7種)、包装・容器(9種)、衣料品(2種)、施設・設備(8種)、情報通信(7種)、コミュニケーション(2種)、サービス(3種)です。 これらの規格の作成の手順は以下のようなイメージです。 1.モノやコトの不便さを、作っている人たちに伝える 2.不便さを受け取った人たちは、どうするか考える 3.利用者と供給者で解決案を考える 4.(3で得た)解決案を基に他の利用者と共に解決案を考える 5.様々な立場の利用者、供給者と中立者(研究者等)と一緒に解決策を作成する 6.考えた解決策を国の公的機関に提出し、認められるとJISとして発効される  日本国内だけでなく、国際的にも必要な規格は、国際規格(IS)として他国の仲間と審議することもあります。  現在も日本生まれの規格がたくさん国際規格として発効されています。今後もますます多くの人が使いやすくなる規格がつくられることが期待されています。  冊子はウェブサイトでも公開していますので、是非身近な方や研修・講座等々でご活用ください。 共用品推進機構事務局 画像1:『共用品を探そう!』表紙 画像2:図表1『共用品を探そう!』「街」の見開き  A.ヒントが書いてあるところ  B.イラスト自体にヒントがあるもの(例)  C.イラスト近くにヒントがあるもの(例)  D.イラストだけのもの(例) 画像3:図表2『共用品を探そう!』回答ページの見開き  E.前のページのどの部分に配慮があるか番号で示したイラスト 画像4:参考:ルール作りの手順 『共用品を探そう!』ウェブサイト https://www.kyoyohin.org/ja/publicity/kyoyohin_sagaso.php 4ページ 半世紀前の福祉分野からの視覚障害学生支援~事例を中心に~ 首都医校 非常勤講師 郷家和子(ごうけかずこ) はじめに  私は、1971年に東京都心身障害者福祉センターに視覚障害専門福祉技術職として入局しました。 当時、センターは更生相談所とリハビリテーション業務を併せ持つ全国でも画期的な障害者総合支援機関でした。 約半世紀前に、私が関わった視覚障害学生支援の一部を紹介したいと思います。 新職業の開拓  1971年に、視覚障害女性が三療以外の職業で経済的自立を目的とした電話交換手養成訓練を開始しました。当時、交換手は電電公社の認定資格が必要でした。 訓練を希望した盲学校高等部三年生5名は、夏休みに学科学習・実技訓練を受講後、受験して資格を取得しました。 この訓練では、交換機操作で着信ランプの点滅位置を確認する視覚補助具感光器(ライトプルーブ)の開発・依託作製しましたが、最も苦労したのは職場開拓でした。 すでに身体障害者雇用促進法は制定されてはいたものの、一般社会は法の十分な理解・認識は未だでした。 普通の文字がそのまま読める 1974年にアメリカから導入された盲人用読書器「オプタコン」は、視覚障害者が普通の文字をそのまま読めるという革新的な器械でした。 小型カメラから触知盤に流れるピンによる文字の振動パターンを読み取るためには、指先の高い触知力が必要であり、習得はやさしいものではありませんでした。 それでも、数学等で特殊な記号の入る専門書や楽譜の点訳者は少なく、点訳が間に合わないために訓練を受講する学生は少なくありませんでした。 なお、読譜では指導書にはない独特なカメラの上下操作方法を考案し、それを習得した全盲の10歳児が世界初の読譜事例となりました。 オプタコンは、技術の進歩により音声読み上げソフトウェア搭載パソコンに代わり、現在は製造されていません。 司法試験受験に伴う支援  1979年10月に、2名の強度弱視者が司法試験に合格しました。受験の際に、点字使用者は問題の点訳や試験時間の延長等の配慮は定着しつつありましたが、弱視者は障害の程度や状況、読書法等が多様であり、受験条件が整備されていませんでした。 そこで2名は、司法試験管理委員会宛に受験条件の配慮事項として試験時間延長と拡大読書器または弱視眼鏡等補助具の持ち込みに関する要望書を提出し、 同時にセンターは視覚障害に関する専門機関としての立場から、配慮の必要性に関する実証的研究結果に基づく理由書を要望書に添えて提出し、側面からの支援をしました。 この要望書によって、2名は両条件が認められ、これ以降、大学入試あるいは公務員試験等でも、補助具持ち込みの弱視者に対する試験時間延長が一般化し、視覚障害者の試験時間延長は全盲1.5倍、弱視1.33倍とされました。 なお、受験までの過程には、在籍大学の教授、点字による司法試験受験経験者、実験の被験者の学生たち、受験場に拡大読書器を搬入してくれたメーカー等の様々な協力がありました。 今後の支援に必要な視点 障害に関する制度の変革や広範な情報収集、視覚を保障する種々のテクノロジーの開発等により、前例のない障害学生支援も挑戦しやすいと思われます。 解決に向けて、関係者や関係機関とのさらなる情報の共有化及び協力を仰ぎ、成功事例は学会や論文で発表し、一般化を図っていくことが重要と考えます。 写真1:オプタコン触読訓練の様子 5ページ 大学における障害学生支援 東洋大学 高橋良至(たかはしよしゆき) 東洋大学では、2013年の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」制定に合わせて障害学生支援の体制整備を始め、2024年4月に施行された合理的配慮提供の義務化への改正に対応しました。 修学支援を希望する学生は、医師の診断書や障害者手帳等の根拠資料を障がい学生支援委員会に示し、コーディネータ、担当教員、保証人を交えて支援の体制や内容について調整した後、委員会の承認を経て支援が開始されます。 法制定以前の取り組み  筆者が在籍する人間環境デザイン学科は、ユニバーサルデザインを基本理念としており、全学的な取り組み以前から学科として障害学生に対応してきました。 2006年の学科設置後すぐに車椅子使用の筋力低下がある学生が入学し、演習などの実技科目で課題の締切を延長するなどの配慮を行いました。 聴覚障害学生に対しては、補聴器での聞き取りをしやすくするために、補聴器用マイクの使用、グループディスカッションで順番に発言するなどの配慮を行いました。 また大学では、学生ボランティアによるノートテイク、UDトークの法人契約などの支援を行っています。 さらに、2020年のライフデザイン学部移転に伴い建設された赤羽台キャンパス新校舎の計画にあたり、車椅子の行き違いに対応した通路幅、エレベーターのかご寸法、 大教室におけるサイトラインの確保、車いす対応トイレへのユニバーサルシートやオストメイトの設置といった、ハード面での対応を学科から要望し、可能な限り取り入れてもらいました。 障害種別の変化  日本学生支援機構が実施した「令和6年度 大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査」によると、 「精神障害」、「発達障害」の割合が年々増加しています。これらの障害種別では、生活習慣や時間の管理、周囲の雑音などが気になり集団内にいられない、緊張が過度に高まるため発表や議論に参加できない、などの困難があります。 出席や課題の代替措置などで対応しますが、例えば、グループワークが免許や資格の取得のために必須なカリキュラムに組み込まれている場合などは、適用が難しくなります。 合理的な配慮へ  大学における講義や演習は、個々の担当教員の責任で運営されていますが、すべての教員が障害について十分な知識を持ちあわせているわけではありません。 学生が教育を受ける権利を尊重し、できる限り要望を叶えられるような支援を試みますが、大学における学びや、単位認定の公平性が確保できない場合、対応に際して教員や大学に過重な負担が生じるなどの場合は、応じられないこともあります。 そのような場合は、コーディネータなどとも協力して、「落としどころ」を探っていきます。 「合理的配慮」には、障害学生と教員や大学の双方にとって理にかなった(合理的な)支援(配慮)への調整プロセス、一方通行ではない、建設的な対話が何より重要であるといえます。 写真:キャンパス内の車椅子対応トイレ 7ページ 大学の障害学生支援 福岡女子大学1年 山野里紗(やまのりさ)  大学生活と聞いて思い浮かぶのは、友達との交流やサークル活動、そして新しい学び。そんな毎日を「安心して楽しめるかどうか」は、どの大学生にとっても大事なことである。 特に、視覚や聴覚、車椅子などのサポートを必要とする学生にとって、大学の支援体制は生活を左右する大きなポイントになるだろう。私自身、大学生になり、自由度の高さに戸惑う場面が多々あった。 そして、この自由度の高さから生まれる障壁があるのではないかと考えるようになり、「どんな支援があれば誰もが快適に学べるのだろう」と気になるようになった。 そこで今回は、実際に学生の声を交えながら、いくつかの取り組みを見ていこうと思う。 大学の障害学生支援の現状  日本学生支援機構(JASSO)の令和6年度(2024年度)障害のある学生の修学支援に関する実態調査によると、大学において障害学生は約1.62%を占める在籍率を有しており、彼らに対し支援できている割合は6割程度となっている。 このことから、障害学生は確実に存在し、その多くが支援を受けているが、まだ4割近くの学生は取り残されている現状があるため、さらなる環境整備が必要だと分かる。 障害を持つ学生の声  では、実際にどのような支援が行われてるのか、数人の学生に対してヒアリングを行ってみた。 調査をする中で特に驚いたのが、想像以上に個別最適化された支援を受けることができているという点である。 難聴の学生は、「配慮申請」を行い、担当教員やアドバイザーの教員と配慮内容を確認したうえで座席の位置を決めることができたそうだ。 他にも、車椅子ユーザーは受験時から大学側と面談を行うことができ、どのような配慮が必要かすり合わせることができたそうだ。 このように、大学側の「目の前の学生が」何が必要かという個人のニーズを大切にする姿勢が、学生の過ごしやすさのカギになると感じた。 また、調査をするなかで些細なことが学生の快適な学習環境を阻んでしまう実態があることも分かった。 難聴の学生によると、コロナ流行後はマスクをつける教員が増え、授業内容の理解は友達の助けや質の悪い文字起こしアプリに依存しているため、学びにくいという声も聞こえた。 このように障害のある学生への支援は大切である。だが、大学生活の中での「困りごと」は必ずしも障害に限定されるものではない。 例えば「トイレで中に人が入っているかどうかが分かりにくい」という声があった。 これは障害の有無に関係なく、多くの学生が感じうる不便さだ。こうした課題は、誰か特定の人のためだけではなく、すべての学生にとって快適な環境づくりにつながる。 いわゆる「ユニバーサルデザイン」の視点が求められているといえるだろう。 「支援」は特別なものではない  今回、大学における多様な支援の取り組みを見てみた。初めて知る支援も多く、これから大学生活を送る中で気にかけてみよう、と思うものがいくつもあった。 しかし、私がこの調査を通して感じたことは支援は特別なものではなく「誰もが学びやすく、暮らしやすい」環境を実現するための工夫にすぎないということだ。 一番大切なのは、その工夫を利用して障害の有無にかかわらず、学生が快適に、楽しく大学生活を送れる風潮をつくることなのではないだろうか。 私も学生の一人として、「支援」という工夫に注目しつつも目の前の共に学ぶ仲間に寄り添って楽しい学校生活を送りたい。 8ページ 跡見学園女子大学における障害のある学生への支援 跡見学園女子大学マネジメント学部 赤松瑞枝(あかまつみずえ) 支援の背景と概要  本学では2019年より障害のある学生に対する合理的配慮の提供を開始した。 そして2024年の障害者差別解消法改正を機に、改めて基本方針や支援プロセス、留意事項等を文書化し、全教職員(常勤及び非常勤)に配布。授業等での配慮の徹底を図っている。 対象は視覚・聴覚・身体・内部・発達・精神障害とその他の心身機能障害で、障害手帳や診断書の提示が条件となる。 支援の申し出は入学前後を問わず可能である。受験時には入試課が対応し、別室で個別受験ができる環境整備や、文字や解答欄を拡大した問題用紙と解答用紙の作成等を行う。 また就職活動時には学生支援室が就職課と連携して、各自の特性や長所に合う就職先を探していく。 本人や保護者と綿密な面談を重ねた上で、障害者手帳を獲得し障害者雇用枠で一部上場企業に就職した事例もある。 学修支援対象者と支援プロセス  とは言え、やはり中心となるのは日常の学修支援である。支援対象には精神障害が最も多く(6割)、精神障害は四分の一を占める。 身体的疾患(月経困難症、慢性頭痛、過敏性腸症候群等)への支援も行っている。支援プロセスは左図の通りである。「配慮願」発行には時間を要するため、略式の「連絡票」も活用し支援の継続を保つ。 建設的対話と対話への支援  本学には授業の目的変更や評価基準の引き下げをしない、他の学生との不適当な区別をしない、教員や大学の事務及び財務の過重な負担とならないように実施するという方針があるため、「配慮願」記載内容の提供が困難な場合もある。 この時、教員は「できない」として終わらせるのではなく、授業の目的に応じた同等の効果が得られる代替え手段を見つけるため「どのような形であれば学修に取り組めるか」という視点で、学生と建設的な対話を行う。  ところが、支援を必要とする学生の中には不登校の経験があったり、通信教育を経て入学したりする人も多く、対人コミュニケーションへの苦手意識から教員との対話が難航するケースがある。 そのため学生支援室の職員は学生と一緒に、各自が取り組みやすい伝達方法を考えている。多くの場合、オンラインから始めて徐々に対面で質問できるようにしていく。 ある担当者は「自己表現する力や援助養成力は社会でも必要。制度を活用して困難を乗り越える力を育てることを意識しています」と話す。また「面談では学生との波長合わせを何よりも大切にしています」とも語ってくれた。 こうした支援が学生に届いた証として「焦らずに目指したいものに進んでいきたい気持ちになりました」、「真摯にご対応いただけてすごく心も救われました」、「娘の突然の連絡にも温かくご対応くださりありがとうございました。 電話を受けていただき、気持ちを落ち着かせることができました。」といった感謝の声が学生からも保護者からも寄せられている。  以上、本学の支援状況をご紹介したが、改めて学生サポートセンター、入試課、就職課等職員の皆様が、お忙しい中丁寧にお力添えくださるお陰様で成立していることが分かった。 この場をお借りして深謝申し上げたい。そして今後も一教員として誠実に支援に携わっていきたい。 画像1:本学における学修支援プロセス 9ページ 「勇気と覚悟」 視覚障害学生の実験教育における技術支援 早稲田大学理工センター技術部 地神貴史(ぢがみたかふみ)  2019年4月に早稲田大学先進理工学部応用物理学科に全盲の学生が入学した。本学の理工学部の1年生約1800人は全員が必修で受講する実験科目がある。 本稿では、本学でも前例のなかった全盲の理系の学生が実験科目をどのように受講したかにフォーカスし、大学における就学支援の一例として紹介したい。 実験教育における技術支援とは  本学の必修の実験科目は教員や大学院生のTA(ティーチングアシスタント)らに加えて技術職員が組織的に関わり教職協働の下、科目運営を行っている。 技術職員は各々が専門分野を持ち、個々の実験科目においてその専門性を活かして業務にあたっている。 しかし、当然ながら視覚障害教育のプロではない。そこで、初めに情報収集を行い実験授業科目に何が必要かの検討を行った。 そしておおまかな支援方針を固めた。その中では、最大限安全に配慮すること、評価基準を変えないが手段は変えてもよいこととする、実験日前に本人や当日スタッフを含めたプレ実験を行うこと、などである。 そして、原則実験操作は学生本人が行うこととし、できないことは知恵を絞り、工夫をすることでできる方法に変更することとした。 このような取り組みの中で我々は、実験の本質として学生に伝えたいことは何かということを考えるために立ち止まったり、普段のスライドにおいて無駄な情報が多かったということに気が付いたりした。 あるいは普段何気なく使っている「あれ」、「これ」といった指示語は本人には通用しない。そのような点を正確な言葉で伝えるということは、目の見える学生にも正確な言葉で伝えることの重要性についても改めて認識することができた。 合理的配慮が求められる社会情勢の中で、これらを遵守しなければならないものといった義務感ではなく、大学の存在意義の下で教育の公平性を担保すべく「使命感」と「教育熱」を持った技術職員らが未経験の壁に向き合い、学生とともに乗り越えて行った。 インクルーシブ教育の未来  教育界でインクルーシブ教育という言葉が謳われて久しい。教育も社会の一部であることを考えると、社会が変わると教育も変わるということでもある。 教育の制度設計と社会の制度設計が両輪となり、社会をインクルーシブにしていこうとすることがインクルーシブ教育の実現の後押しとなろう。  本学の支援の形は大学における学生支援の一例に過ぎない。しかし、今後視覚障害者の教育に携わる人たちに限らず、全ての教育関係者にこの事例から何か精神的な、実用的な示唆を感じ取ってもらえたら支援に関わった者として大変うれしく思う。 本支援の取組は技術職員を中心に組織的に行われ、その体験を言語化、書籍化することができた。『勇気と覚悟 ―視覚障害学生の実験教育における技術支援』(2023年・早稲田大学出版部)。 本稿の執筆にあたり、支援に関わった学内外のすべての関係者に改めて深く深く感謝を申し上げたい。このような経験ができた本学だからこそできること、やらねばならないことを今後社会にも還元していきたいと考えている。  最後に、取組についての客観的な視点はNHKテレビ番組「バリバラ」による以下の記事を参照されたい。『「学びたい」を諦めない!理系×障害者』(2024年12月12日放送) QRコード1:早稲田大学出版部HP https://www.waseda-up.co.jp/newpub/post-865.html QRコード2:NHKバリバラHP https://www.web.nhk/tv/an/baribara/pl/series-tep-8Q416M6Q79 写真1:『勇気と覚悟―視覚障害学生の実験教育における技術支援』(早稲田大学出版部) 9ページ キーワードで考える共用品講座 第148講「精神障害を中心とする学生対応-現場の実践から」 日本福祉大学 客員教授・共用品研究所 所長 後藤芳一(ごとうよしかず) 1.学びの過程で  筆者が担当する講義を「脳機能障害があるAさんが受講希望」と事務局(学生部/スチューデントダイバーシティセンター障がい学生支援室)から配慮依頼がありました。 問題なくできましたが、周囲に影響した場合への対応は準備しました。(私大・理系・講義) 精神保健福祉職の院生Bさんは、修士論文を担当しました。その分野の文献を集め(中井久夫先生が他界した翌年で、書店は「フェア」のように著書が並んでいました、Bさんの専門はオープンダイアローグでしたので少し流儀が違いましたが)、集会(「トラウマティック・ストレス学会」「家族療法学会」「改正精神保健福祉法による長期入院者のアドボケイト」)に同行、支援する犯罪被害当事者にも共にお会いしました。(私大院・文系・修論)  筆者の研究室で卒業論文を書いたCさんは、学外の大会で入賞するレベルの運動選手でした。競技が不調になると心を傷めて不登校、連絡も絶えました。 本人に唯一連絡できる友人を通じて連絡を続けました。時系列に記録して学生相談室へ行きました。相談室は記録を見て瞬時に所見を教えてくれました。(国立大・理系・研究室) 2.学びへの入口  教養で留年した学生は卒論段階で繰り返すと言われていました。Cさん(既出)が教養で留年したことは知っていました。 教員皆が拒否すると行き場(研究室)がなくなる、理解のない教員に当たると壊滅する、何とか導くのが教員のウデマエ、と准教授と相談して受け入れました。 我々の研究室は学科内の“保健室〟の役目と考えました。やはり右のとおり問題を生じました。  Dさんは別の研究室で教員と関係を築けず卒論を中断。学科の責任教員から打診があり我々の研究室で受け入れました。 適応の課題があって意思疎通に工夫を要しましたが、無事に卒業しました。(2件ともに国立大・理系・研究室) 3.社会への出口  修論を担当したEさんは性格が繊細でうつ病を時折生じました。就職活動で悪化する懸念があったため修士1年での中退・就職を勧めました。 知人のオーナ経営者に連絡すると、前年分の採用が終わった時期で欠員がでた由で採用されました。福祉大手の人気企業でした。(私大院・文系・修論)  Fさんは別の研究室の学生でしたが、就活の相談にきていました。大変立派な先に就職し、その後も折々に会っていました。 30歳の手前で統合失調症を発症しました。今も折々に連絡をとりあっています。(国立大院・理系) 4.まとめ  個別性が高く、かつ、学びの途中で発症・変化が多い点で、精神科系の障害学生には教員や環境側の深い配慮を要します。 障害対応自体は広がりつつあるので、今後はこうした分野に向き合う必要があります。そうした視点から、本稿では精神関係を選んで紹介しました。  整理すると第1は、全学での対応手順が整備されつつあるものの、これは最低限の原則です。 個別性が高いので、結局は現場での臨機の対応が鍵になります(本稿1)。 第2は、学びと暮らしに日々接して伴走できるのは研究室です。それには教員側に踏み込んで受け入れる姿勢が要ります(本稿2)。 第3は、学生は学びで得た知と精神を、自分の存在の一部として歩んでいきます。卒業後も立ち戻る人間形成の原点として、一生のつき合いです(本稿3)。  障害の専門職をくまなく配置することはできない一方、社会常識で対応できることも多いです。つまり、専門家でないことは言い訳になりません。 まずは出会った人が向き合うこと。なお「合理的配慮」は国連障害者権利条約(第2条)により「提供する側の過剰な負担にならない範囲」で個別対応を求めるものであり、産業界や全学共通で最低限の対応を確保するための線引きです。 学びの現場には「その先」が必要になります。 10ページ 写真:東京2025デフリンピックの見どころ 東京2025デフリンピック開幕に向けて  11月15日から12日間、東京でデフリンピックが開催されます。Deaf(きこえない・きこえにくい)アスリートの国際スポーツ大会、デフリンピック。 日本財団パラスポーツサポートセンターの調査によると、その認知度は、38.4%にアップしたものの、東京開催について知っている人の割合は9.9%にとどまるとのことです。 開催が決定した2022年9月以来、運営主体となる全日本ろうあ連盟と東京都は、大会運営の様々な準備の中で、周知活動に力を注いでこられました。 7月31日に行われた選手団記者会見には多くのマスコミが参加し、情報発信に期待が寄せられました。 リーフレットや啓発動画、プロ競技大会でのPR、多くの人が集まる場所でのイベント開催などに加え、新しい応援のスタイル「サインエール」も考案されました。 サインエール  声援は嬉しいがあまり伝わっていない、もっと応援を感じられたら力になるのに…、というデフアスリートたちの声を受け、目で世界を捉える人々の身体感覚と日本の手話言語をベースに「サインエール」が誕生しました。 「行け!」「大丈夫 勝つ!」「日本 メダルを つかみ取れ!」の3つの基本要素で構成されています。基本要素の動作は、左のチラシ画像にあるQRコードから確認できます。 きこえる・きこえないにかかわらず、全ての人がデフアスリートに想いを届けることができるよう、各種イベントや動画、SNSでの周知が進められています。 新たな情報保障  視覚的情報保障がなされた環境で競技が行われることが、デフリンピックの大きな特徴の一つです。スタートのピストルや、審判の笛の音は、ランプや旗などで伝えられます。 「スタートランプ」は、ピストルと連動し、ランプの色(オン・ユア・マークス「赤」、セット「黄」、号砲「緑」)によって示されます。 サッカーでは、合計5人の審判員がフラッグを持ち、多方向から選手に伝えます。空手ではフラッシュライトの点滅で審判の「やめ」を伝え、柔道の「待て」は、審判が選手の肩をトントン叩いて知らせます。  これらに加えて、今回は大型ビジョンやサイネージの活用、音声文字化などのデジタル技術も、新たに取り入れられます。 「誰もが大会を楽しめる技術」として競技の音(打球音や選手の動きなど)を擬音文字で表示するなどの実証も行われます。 手話言語や視線が交錯する熱いコミュニケーションというデフスポーツならではの魅力に加え、新たな技術の導入も見どころです。 トライアウトの実施  もう一つ、大きな取り組みとして、全国から有望な選手を発掘するためのトライアウトが実施されました。 全ての競技に日本選手を出場させる試みとして行われ、その結果、ハンドボール5名、テコンドー1名、射撃1名、レスリング3名の選手を発掘、新たに4種目の出場が叶いました。 これにより、21種目の競技すべてへの日本人選手の出場が実現しました。日本選手の全種目への出場はデフリンピック史上初めてのことです。  選手団は391名(選手273名、役員・スタッフ118名)、前回のブラジル大会でのメダル獲得数30個を超えることが目標とされています。 東京開催の意義・期待すること  今回は、1924年にパリで第1回デフリンピックが開催されてから100周年となる記念すべき大会となります。 70~80の国と地域から、約3000人の選手の参加が見込まれており、参加者は過去最多のサムスン大会(2021年)に匹敵または上回る勢いです。  記者会見では、選手団の方々から、「東京開催を機に、より多くの人々にデフリンピックが認知され、情報保障の充実が進み、きこえない・きこえにくい子どもたちが夢と希望を抱くことを希望する」 「ろうの子どもが挑戦するモチベーションにつながれば嬉しい。現状の社会には、できないという思い込みや、一方で支援の仕方がわからないという迷いがまだまだある。お互いの歩み寄りにつながることを期待する」との発言がありました。 共生社会実現への大きな一歩になることが期待されています。 櫻井眞季(さくらいまき) 写真1:サインエール 3つの基本要素(チラシより)東京都(C) 写真2:視覚的な情報保障 写真3:選手団記者会見 12ページ 聴覚障害の視点で歩いて見て感じた大阪・関西万博 聞こえる世界と聞こえない世界をつなぐ ユニバーサルデザインアドバイザー 松森果林(まつもりかりん)  大阪・関西万博(以下万博)初日に行けるという貴重な機会に預かりました。 閉幕までカウントダウンとなったタイミングで初日のレポってどうなのと思いつつ、その後6月と9月に再訪した計4回の万博体験を、聴覚障害の視点でお届けします。  初日といえば大雨強風の悪天候、さらに通信障害発生で入場できない人で溢れた日です。  聴覚障害の視点から重要なことは主に2つあります。①音声情報と同等の内容をリアルタイムで受け取ること②コミュニケーションは音声以外の方法でも受発信できることです。  万博の公式Webには「万博会場はすべてがバリアフリー」だと書かれています。 まず行っておきたいアクセシビリティセンターが、長蛇の列  車椅子や歩行補助器具のほか、高齢者用イヤホンの無料貸出しや筆談、手話による対応など様々な配慮を必要とする方への総合サービス拠点です。  ゲート入場前に入れるのですが、長蛇の列。ここで必要なサービスを受けた後は、再度直射日光の下で並び直し入場ゲートへ。車椅子の方や高齢者は見るからに辛そう。並ばない万博どこへ? 多様なコミュニケーションツールの選択肢と課題  「しゃべり描きアプリ」は話したことが、タブレット画面をなぞる指先から、文字になってふわっと表示されるものです。 「コミュニケーションそのものを楽しめる」アプリですが、話す→なぞる→文字表出という3工程があるため、 「早く」「正確に」が求められる場ではリアリタイムに文字表出する音声認識アプリを使うなど、目的に合わせて適切に活用すると良いと思いました。  次に紹介されたのは「透明ディスプレイVoiceBiz(R) UCDisplay (R)」。 音声認識した言葉が表示されます。透明なので相手の表情と文字が一緒に見えるのが良いところ。 13言語対応できるユニバーサルコミュニケーション翻訳サービスです。 先述のしゃべり描きアプリもそうですが、音声認識を使用する場合、先方からの受信はできても、手話を第一言語として声を使わないろう者が発信する時には、キーボード等で打ち込むなどの方法になります。 不慣れな人や高齢者にはハードルが高く、「受信ができても発信ができない」という課題は残ります。 そんな時に活躍するのが「遠隔手話通訳サービス」です。タブレット画面を通して手話通訳をしてもらい双方向でコミュニケーションが取れます。  また、便利だと思ったのは「テキストアナウンス」です。 2次元コードを読み取ると、万博内の音声アナウンスがリアルタイムで文字表示されるものです。 「足元が滑りやすくなっています。走らず歩いてください。」など、最大7言語対応し、専用アプリは不要です。  しかし初日といえば、混雑による通信障害。音声認識も遠隔手話通訳も結局使用できなくなり、最終的にはメモ用紙に手書きというアナログな方法でのやり取りに。 2日目以降Wi-Fi設置など対応されましたが、コミュニケーションツールは選択肢を用意するだけでなく、それらを効果的に活用するための通信環境等の整備も重要です。 パビリオンごとに違うアクセシビリティ  つまり、パビリオンに行くごとに、聴覚障害があることを申し出て手話や字幕などのアクセシビリティを確認をする必要があります。これによって受けられるサービスに差が出てきます。聴覚障害は外見で分からないためここは厚かましくもどんどん「耳きこえないアピール」をします。  手話で挨拶をしてくれるスタッフ、字幕と音声ガイドの用意、映像の字幕、振動で感じることができる触覚体験、展示物の二次元コードを読み取ると説明の文が見られるなど、パビリオンによって様々な違いがありました。理想は、すべてのパビリオンにおいて障害のある人もない人も、共に楽しめたり、情報にアクセスできるための共通したガイドラインがあることです。  印象的だったのは外国のパビリオンスタッフでした。各国の方なのですが、聞こえないことを伝えても臆することなく、表情やボディランゲージで自然と対応してくれます。カナダ館のスタッフは、「こんにちは」「ここでお待ちください」「ありがとう」など日本のカタコト手話が出てくるので驚きました。カナダのスタッフなのに、日本の手話ってコミュニケーションレベル高っ! 長期間運営のメリットは期間中にスパイラルアップできること  どんな企画もそうですが、最初から完璧な運営は難しいものです。運営後に分かった課題を改善につなげていくことが重要です。 折しも8月13日万博会場と大阪市内を結ぶ地下鉄が運転を見合わせ、約3万人が足止めされました。 その時、聞こえる人でも音声アナウンスが聞き取れないなど、多くの人が情報が得られなかった課題が浮き彫りになりました。 自分があの場にいたらどうするだろうかと考えました。重要な情報や最新の情報を、音声だけでなく視覚的にも伝える必要があります。  また、万博は最先端の技術を紹介する場であるというなら、広大な夜空をスクリーンとして万博の地図を表出し、水の配給、涼しい場所、解放しているパビリオンなどの情報提供をしたり、 音声アナウンスを多言語で文字表示するなど、個人的にはそれくらい期待したいと思いました。災害時や非常時こそ、最新の技術を発揮してほしいと思うのです。 万博の技術を持続可能な社会のインフラに  デジタル万博を一過性の盛り上がりにすることなく、その後どんな社会になっていたいのかを考える必要があります。  最新の技術も、単体としては素晴らしいのに、使用される場が限定される現状では私たちの生活は変わりません。 先述したテキストアナウンスなどの技術は、万博だから、デフリンピックだから、ではなく、駅や空港、電車の中などいつでもどこでもだれでも利用できるよう「社会のインフラ」として実装し「持続可能な仕組み」にしていかなくてはなりません。 単なるレガシーではなく社会の中で脈々と受け継がれていくものとして。 写真1:アクセシビリティセンターのツール 写真2:しゃべり書きアプリ 写真3:透明ディスプレイ 写真4:遠隔手話通訳 写真5:テキストアナウンス 写真6:ドローンショー 14ページ ミニチュアサイズの小さな共用品  「共用品」「ユニバーサルデザイン」「アクセシブルデザイン」どの言葉も数十年前とは比較にならないほど一般的になっています。 それらは実際、どのようなものが世の中にはあるのか、多くの人に知ってもらいたい。そこで当機構には展示室を設け実物を展示しています。 展示室は「触ってわかる」「見てわかる」「聞いてわかる」「操作しやすい」という身体的な分類と「食べる」「着る・装う」「まなぶ・遊ぶ・伝える」「移動する」というシーンのコーナーに分けて展示しています。 大きなものを展示したい  展示室の中では建物の大きな設備や公共物は展示することができません。写真パネルなどで、紹介する方法もありますがそれでは、書籍やネット検索で済んでしまいます。  そこで、大きなものはミニチュアを作ることにしました。  現在、ミニチュアの共用品を展示室で展示しています。  次に、今までに制作したものをご紹介します。 2センチの段差  車椅子で乗り越えられ、白杖で触れて境界を認識できる段差の展示。  車椅子使用者にとって段差はない方が良いですが、目の不自由な方は、歩道から車道に出たことに気づける段差が必要です。 この2センチは、両者にとって、つまずかず安全に進めるちょうどいい高さです。 安心広がるエレベーターの鏡  車椅子使用者やベビーカーが後ろ向きのまま降りるときに、振り返らなくても、周りの様子がわかるエレベーターの鏡。 この鏡があることで、「開いているのか、閉まりそうなのか」「ぶつからないか」という不安が解消します。狭い空間の中でも、視野が広がりスムーズで安全な移動をサポートします。 ちいさな共用品  そのほか色々なミニチュアにした共用品を展示しています。  展示室だけでなく、いろいろな展示会場に持っていきたいと考え、今年の国際福祉機器展(10月8~10日)にて一部展示を予定しています。 また、絵本専門店(神保町ブックハウスカフェ)に提案したところ、展示する機会をいただきました。この展示は「ちっちゃな共用品展」の名称で10月末~11月末まで展示する予定です。 「この模型は何だろう」という疑問から興味を持っていただけるとうれしいです。 関戸菜美(せきどなみ) 写真1:2センチの段差 写真2:エレベーターの鏡 写真3:ちいさな共用品 15ページ 日本ホテル協会のバリアフリー配慮ホテルデータベース ホテルの選択  障害のある人たちが宿泊するホテルは、共用部分、客室が自分たちに利用できるハード、ソフトになっているかで決めることができます。 しかし、その人に必要な配慮があるかは、それぞれにホテルに問い合わせるというハードルがありました。 日本ホテル協会  一般社団法人日本ホテル協会は、1909年に28の日本を代表するホテルが集結し、ホテル業の健全な発達を促し、観光事業の発展に貢献することを目的として設立されました。  設立から116年たった現在、全国12カ所に支部があり、10の委員会が設置され、目的にむけて各種事業が行われています。 共用品推進機構は、ホテル協会の歴代事務長に、規格作り委員会、各種調査事業で多大なるご協力をいただいています。 バリアフリーデータベース  ホテル協会の社会福祉委員会では、バリアフリーに取り組まれています。その一環で障害の種類や必要な設備・サービスに応じて、対応している会員ホテルを検索できるデータベースを作られています。  日本ホテル協会・バリアフリーで検索すると、大きな文字で「バリアフリー」とあり、その説明として「障害の種類や必要な設備・サービスに応じて、対応している会員ホテルが検索できます。」と書かれています。 その下を見ていくと「確認したいバリアフリー情報を選択してください」とあり、「肢体不自由の方・車いす使用の方」、「視覚障害者の方」、「聴覚障害者の方」と書かれた3つのアイコンが横に並んでいます。 検索方法  それぞれのアイコンを押すと「共用部分」、「客室」、「人的対応・サービスの可否」の大項目が表示されます。そしてそれぞれの場所で、それぞれの障害に応じて必要な配慮点・モノが書かれています。 視覚障害×共用部分では、 ・建物入口の視覚障害者誘導ブロックまたは音声案内 ・館内案内図の点字表示 ・音声案内(エレベーター) ・共用トイレ内の触知図 などが書かれています。 聴覚障害×客室では、 ・客室内の非常時警報ランプ又は呼び出し用バイブレーション ・字幕対応テレビ・字幕表示ボタン付きリモコン などが、書かれています。 肢体不自由の方・車いす使用の方×人的対応・サービスの可否では、 ・従業員による施設内設備や操作方法の説明 ・従業員による施設内移動時のサポート ・従業員による食事会場におけるサポート などが表示されています。  それぞれの項目の右横には、「必要」と書かれたチェックを入れられるアイコンがついています。 それぞれの人が人が必要な項目に、チェックを入れてから一番下の枠にある「都道府県」から該当する地域を選択し「検索」ボタンを押すと、該当するホテルが表示され、そのホテルのホームページを閲覧できる仕組みになっています。 多くの人にとても便利なサイト、より多くの人に知ってほしいサイトです。 星川安之(ほしかわやすゆき) 日本ホテル協会 バリアフリーデータベース https://www.j-hotel.or.jp/barrierfree/ 16ページ 障害学生支援と合理的配慮 【事務局長だより】 星川安之  今回インクルで特集した「支援」を広辞苑で引くと「支え助けること」、「援助すること」とあり、援助を引くと「助けること」とある。  さらに、支援が後ろにくる単語を探してみると、「在宅支援」、「自立支援」、「介護予防支援」、「特別支援教育」など、馴染みの言葉が出てくる。  それぞれの言葉で表される支援は、それぞれ事業となっており、条例、法律、ガイドライン等で定められたルールが文書化され、それらのルールを元に事業を遂行する組織がある。 そして、それぞれの組織には、支援を実行する人たちが存在し、冒頭の「支え助けること」が実行されている。  今回の特集である「障害学生支援」に関しても、各機関で実施方法がそれぞれルールとなって可視化されている大学が大半である。  しかし多くの大学のルールには、2024年4月に民間機関にも、努力義務から義務へと格上げになった「合理的配慮」が適用されることになっている。  今まで文書化された支援の方法では、利用や使用できない学生のニーズが叶えられない時に、障害のある学生が学校側にその要望を伝え、コストや人手が大幅にかからなければ、 その要望が叶う方法を建設的対話によって提供しなければならないことに、法改正後に既になっているのは、ご承知の通りである。  大学が日本に生まれ、障害のある学生が入学してきて以来、先駆者たちは、支援方法を模索し実行、成果をあげた方法に関しては、文書化し、大学ごとのルールとなっていったと推測する。  先駆者の先生たちが作ってきた障害学生への支援ルールは、道なき道に道を作ったことでは、大変貴重なものである。しかし、合理的配慮は、それらのルールに書かれていないことを主な対象となっている。  そう考えると、合理的配慮に取り組む人たちは、常に先駆者であり、道なき場所に道を作ってきていることを、今回執筆してくださった方々の原稿から強く伝わってくる。  合理的配慮に関して、共用品推進機構に多くの業界・企業から「どのように対応すれば良いかとの問い合わせをいただいている。  既に実施されていても、企業、業界内でその情報を共有されていなかったりするケースが多い。 大学を含む多くの機関で行われている「支援」は記録に残し、より多くの機関でその事例を共有し、必要に応じてそれぞれのガイドラインへの追加、訂正が今後の支援の通常化につながると思った次第である。 共用品通信 【会議】 第1回AD国際標準化委員会(7月22日) 第1回TC159AD委員会(8月4日) 第1回TC173/SC7国内検討委員会(9月5日) 台湾共用品普及協会(7月15日、8月11日) 網膜色素変性症協会 共用品WG(8月7日、9月4日) 【講義・講演】 跡見女子大学インターンシップ(8月18~22日、田窪・関戸) 日本福祉大学(9月6日~9月7日、星川・森川) 柏市 障害者団体+市役所(8月4日、星川) 日本リハビリテーション工学協会 プレカンファレンス(7月12日、星川) 【報道】 時事通信社 厚生福祉 7月8日 迎賓館からはじまる共生社会 トイジャーナル 8月号 小さな共用品 トイジャーナル 9月号 共用品を探そう 高齢者住宅新聞 8月号 ともともフェスタ2025 高齢者住宅新聞 9月号 小さな共用品展 シルバー産業新聞 9月号 移動式バリアフリートイレ 日本農業新聞 7月18日 触って分かる!かしわ餅 日本農業新聞 7月25日 容器の違いで中身を識別 日本農業新聞 8月1日 牛乳とそれ以外の紙パック飲料の識別 日本農業新聞 8月8日 点字表示付き食品パッケージ 日本農業新聞 8月22日 しょうゆ差しと視覚障害者 日本農業新聞 9月5日 京丸園 アクセシブルデザインの総合情報誌 第158号 2025(令和7)年9月25日発行 "Incl." vol.26 no.158 The Accessible Design Foundation of Japan (The Kyoyo-Hin Foundation), 2025 隔月刊、奇数月25日に発行 編集・発行 (公財)共用品推進機構 〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2-5-4 OGAビル2F 電話:03-5280-0020 ファクス:03-5280-2373 Eメール:jimukyoku@kyoyohin.org ホームページURL:https://www.kyoyohin.org/ja/ 発行人 富山幹太郎 編集長 星川安之 事務局 森川美和、櫻井眞季、小林友美子、関戸菜美、田窪友和 執筆 赤松瑞枝、郷家和子、後藤芳一、高橋良至、地神貴史、松森果林、山野里紗 編集・印刷・製本 サンパートナーズ㈱ 表紙 NozomiHoshikawa 本誌の全部または一部を視覚障害者やこのままの形では利用できない方々のために、非営利の目的で点訳、音訳、拡大複写することを承認いたします。その場合は、共用品推進機構までご連絡ください。 上記以外の目的で、無断で複写複製することは著作権者の権利侵害になります。