インクル119号 2019(平成31)年3月25日号 特集:創立20年を迎えた共用品推進機構 Contents(目次) 創立20周年にあたって  理事長 富山幹太郎 2ページ  評議員会会長 相賀昌宏 2ページ  理事 3ページ  評議員 6ページ  監事 9ページ 共用品推進機構の歩み 9ページ 私と共用品推進機構 後藤芳一 10ページ 川崎アイeyeセンターまつりを開催 杉山雅章 11ページ リニューアルした「化粧品点字シール」 花王株式会社 12ページ 西荻センターまつり 出展報告 13ページ ADシンポジウム2019開催 14ページ 平成31年度共用品推進機構事業計画 15ページ 事務局長だより 16ページ 共用品通信 16ページ 表紙写真・写真提供:自由学園明日館 2ページ 共用品推進機構 理事長・評議員会会長 新時代の機構の姿を求めて (株)タカラトミー 代表取締役会長 (公財)共用品推進機構 理事長 富山幹太郎(とみやま かんたろう) 機構創設20周年、皆さんと共に迎えることを嬉しく思います。 私が会長を務めるタカラトミーで、目の不自由な子どもたちも共に遊べるおもちゃを示す「盲導犬マーク」が登場したのは1990年。 創業者の遺訓である〝世界中のどんな子どもたちも楽しく一緒に遊べるおもちゃづくり〟を目指して、社内にHT研究室が発足した1980年から、実に10年という歳月が流れていました。 それは、いかに高邁な志であろうと、いかに立派な行いであろうと、それを実現させ、継続し、成長させていくことがどれほど難しいことか、身をもって学んだ時間でした。 おもちゃ屋が踏み出した小さな一歩でしたが、周りを見まわせば、同じように前に進もうとする多くの仲間たちとの出逢いがあり、その出逢いの輪は、波紋のように大きく広がっていきました。 共用品推進機構創設20年、私たちはE&C時代を含めれば30年近くの時間を、同じ目標を掲げた仲間同士、一緒に過ごしてきたことになります。 よくぞここまで続けてこられたとの思いと、まだまだこれからだぞと身の引き締まる思いが交錯し、この先の共用品推進機構がどんな進化を遂げていくのか、楽しみでなりません。 近年、障害者を取り巻く環境は大きく様変わりし、社会の変化やIT技術の進歩が彼らの生活や雇用の幅を大きく広げています。こうした動きは、今後ますます拡大していくことでしょう。 時代の変化に取り残されることなく、私たち自身もまた20年先、30年先を見据え、進化していかなければなりません。 新たな機構の姿を模索することはたいへんなことですが、チャンスもたくさんあると信じ、皆さんと一緒にこれからも進んでまいります。 「20年も経ったのですか」 (株)小学館 代表取締役 社長 (公財)共用品推進機構評議員会会長 相賀昌宏(おおが まさひろ) 私が共用品推進機構に係わるようになったのは、正確には憶えていませんが、偶然の出会いが重なった結果です。 視障児向けの雑誌制作に携わっていたことから、当時トミーのハンディキャップ・トイ研究室の星川嘉代子(ほしかわ かよこ)さん(星川専務理事のお母上)とお目にかかったのは、 日本点字図書館用具部の花島弘(はなしま ひろし)さんの紹介によるものだったと思います。 また当時のトミーの富山さんと児童向け出版物の関係で協力関係にあったこともあって、その縁の先で、星川安之(ほしかわやすゆき)さんの仕事を手伝うようになり、今日に至っています。 正直に言って、推進機構での会議の時こそ当該事業のことを考えますが、日頃は頭の中から抜けている状態で、偉そうなことを言える立場ではありません。 常に事業に取り組んでいる関係者の皆さまには本当に頭が下がります。創設20周年をむかえられたのは皆さまの献身的な努力のおかげです。ありがとうございます。 共用品という言葉と考え方を多くの人に知ってもらいたいし、いずれはこの言葉自体がなくなる日の来るのが望ましいという星川専務理事の考えに同感ですが、 共用品の意味・考え方の説明を繰り返し続けることが、この推進機構の役目だとも思っています。 だから、共用品という言葉を捨てる必要はないのですが、同時にアクセシブル・デザインという言葉も広めていきたいと思います。 特に出版界、図書館界ではアクセシビリティという言葉が普通に使われるようになって来ました。 共用品という言葉の後に(AD)と加えて、これ何のことと聞かれるようにするというのはどうでしょうか。 3ページ 共用品推進機構 理事 二歳の幼児が共用品を考える時  ~アンパンマン福祉読本を作成して 臨床発達心理士 池田敬史(いけだ たかし) 私が共用品を知り、機構と関わって、二十年になります。都立特別支援学校二校の校長、都教委の参事、 大学の講師、臨床発達心理士としての相談活動や支援活動などを通して、様々な企画やイベントにご一緒して参りました。 タカラトミーの高橋玲子(たかはしれいこ)さん、共用品推進機構事務局の森川美和(もりかわみわ)さんをお招きしての大学や公立学校での共用品啓発の授業のコラボ、 公開研究会でのPTAとのコラボは楽しくも充実した出来事でした。また、同事務局の金丸淳子(かなまるじゅんこ)さんとの万国博覧会日本館のアテンダントの皆さんへの 「障がいのあるお客様への快適なサポートのための研修会」では、知的障がいや発達障がいのある方の理解と支援についてお手伝いをさせていただきました。 中でも、最も印象深い企画が「アンパンマン福祉絵本」の制作・出版でした。機構からのご依頼を受け、フレーベル館の担当者とご一緒に「介護犬編」と「車いす編」を作成しました。 目の不自由なクマおじさん、ケガをして車いすに乗ったウサコちゃんを主人公に、「アンパンマンのやさしいきもち」二巻は二○○二年九月に出版されました。 その時に、アンパンマンは二歳児を対象に編集されていることを知りました。 今も二歳の子供達がパパやママたちと一緒に「アンパンマンのやさしいきもち」を読みながら共用品を考えている姿が浮かんできます。 共用品思想は今の私の強い味方 ジャーナリスト 大熊由紀子(おおくま ゆきこ) 日々の暮らしの中で自信を失っている高齢者がかなりの数にのぼることが、市民団体、E&Cプロジェクトの調査で明らかになった。 「袋やビン、カンを開ける力がなく、食べられない」「電気製品の機能が多すぎ、途方にくれる」「説明書を読んでも使い方がわからない」 文明社会が犯しがちなこのような過ちを防ぐために、「共用品・共用サービス」という考え方が九〇年に提唱された。 生みの親であるE&Cプロジェクトによれば、その定義は次のようなものだ。 「からだが不自由な人もそうでない人も、ともに使いやすい」「専用ではない」「どこでも、いつでも手に入れたり、利用したりできる」 「一般的な製品、サービスと比べて特に高くない」「継続的に製造、販売、提供されている」。 E&Cプロジェクトはこの春、財団法人・共用品推進機構として再出発した。 これ、一九九九年の敬老の日の朝日新聞に私めが書いた社説のサワリです。 タイトルは、「共用品思想の定着を」。あれから二十年。今年なんと七十九歳になる私に、共用品思想は強い味方です。 私と共用品推進機構 (一社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 理事 小川光彦(おがわ みつひこ) 外見からは障害があることがわかりにくい、重度の聴覚障害者です。 1995年から2010年まで聴覚障害の総合情報誌「いくおーる」編集に携わったのですが、 そこが前身のE&Cと情報交換していたので、会報などで活動を拝見、注目、共感していました。 ディズニーシーやエレベーター、携帯電話店チェックなどに「情報保障」付きで言いたい放題参加させていただき、「当事者が関われる」「当事者意見を社会に反映させる」取り組みを実感。 特にガイド71を頂点とした規格の標準化の取り組みにいたく感心し、後には(一社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会として関わるようになりました。 2012年から理事をさせていただいています。 近年、「障害の社会モデル」が言われるようになりました。標準化の取り組みは、「モノ」の面から社会的に解決するものです。 「ココロ」の面からも解決が必要ですが、人間さまは生き物、簡単に変わりそうにありません。 最終的には共用品推進機構が必要無くなるような社会が理想ですが、それまで息長ーくお付き合いくださいますようお願いいたします。 4ページ 私と共用品推進機構 JASPA監事 垣田行雄(かきた ゆきお) 私はシンクタンクの役員を長く務めていましたので、多くの公益組織の設立に関わりました。 福祉用具関連では、1996年6月設立の日本健康福祉用具工業会〈現在の(一社)日本福祉用具・生活支援用具協会(JASPA)〉、 1999年4月設立の(財)共用品推進機構、2000年9月設立の日本生活支援工学会です。 子供達が、目や耳などに障害のある人達と仲良く遊び・学ぶ方法を知れば互いに楽しい上、大人になり「障害者に優しい社会が当たり前」と考えられる人になって欲しい、との思いから、 国立科学博物館で夏季に開催されるサイエンススクエアに参加して、子供達に共用品の便利さを体験してもらってはどうか、と提案した処、 事務局の素早い行動力により早々と実現し、今も続いていることは喜びに堪えません。 共用品という語彙が辞典に載った今、次に望むのは、小・中・高等学校の教科書に、共用品に関連する文章が記載され、 誰もが暮らし易い社会構築に向けて、底辺の広がりの基礎が醸成されることです。 私と共用品推進機構 (社福)武蔵野 みどりのこども館館長 後藤明宏(ごとう あきひろ) 私が共用品推進機構と関わりだしたのは、機構の前身である「E&Cプロジェクト」の時でした。 その頃はテーマごとに班にわかれ、私は知的障害班に所属し、ほんの数人のグループで活動をしていました。 当時は知的障害についての参加者も少なく、試行錯誤をしながら「不便さ調査」などを行いました。 暗中模索の頃でしたが、その当時の参加者の熱気は今も忘れることができません。 取り組みは地味な活動でしたが、少しでも社会を変えていこうという皆さんの意欲を感じながら毎回通っていました。 機構の活動も大きくなり、社会も大きく変わりましたが、自分たちの常識を問い直し、驚き、不便さとは実は社会の不便さなのだと気づき、必要なところは変えていく。 こうした取り組みは私たちの出発点であり到着点でもあります。このような意思を今後とも持ち続けて行きたいと思います。 推進機構と私 デザイナー 永井武志(ながい たけし) 私は一介の工業デザイナー。産業機器のデザインをしながらE&Cプロジェクトでカード班のメンバーとして活動させていただいた。 これまで二十年間にわたり機構の行ってきた数多くの提案、「モノ作りへの配慮・人へのサービスの在り方」は、 機構メンバーの精力的な普及活動に支えられ、数多くの成果を生み出した。 モノやシステムを作る方、サービス産業に携わる方など、多く職業の人々に影響を与え、社会変革に大きく貢献してきた。 この「共用品・共用サービス」の思想が世界各国に普及・定着して、グローバルスタンダードになることを願っている。 そして、世界が抱えている環境・貧困・格差・人種・偏見・紛争などの多くの問題が、この思想を基に少しでも良い方向へ向かえば良いと思っている。 今後、人類が永続的に生存し続けるには単に「人間生活」への配慮や気配りだけでなく、この地球上で生きている「すべての命」への配慮、気配りが必要になるであろう。 5ページ 私と共用品推進機構 手話通訳士 信井洋子(のぶい ようこ) 設立20周年、おめでとうございます。 私が、機構の前身「E&Cプロジェクト」の通訳依頼を受けたのは、今から20数年前でした。 月1回の通訳を経て、共用品推進機構へと繋がり、これがご縁で現在理事の末席を汚しております。 障がい者の不便さは、当然ですが障害によって違います。 この「不便さ調査」「良かったこと調査」を機構の限られた事務局の方で、当事者の方々との話し合い、 調査を重ね、ハード面ソフト面、多方面にわたる事業の取り組まれたことに頭が下がります。 おかげで、障がいの有無に関係なく、子供から大人まで誰もが、過ごしやすい社会になってきました。 私が関わった、聴覚障がい者は「見えない障がい」「情報障がい」「コミュニケーション障がい」と言われています。 機構の数々の事業のおかげで、手話への理解が広まり、交通機関、金融機関、病院、公共施設など、 私が「E&C」「機構」の通訳を始める前を考えると、聴覚障がい者の方々のバリアは少なくなってきたと感じます。 「良かったこと調査」でも多くの方が述べているように、ハート面でのサポートを必要としている方々への、配慮など当事者の方、携わっている方から学ばせていただければと思います。 合理的配慮の先駆けと実践 (有)でく工房 取締役会長 光野有次(みつの ゆうじ) 今から45年前、仲間たちと「でく工房」を開き、子どもからお年寄りまで、ひとり一人の要望や体の条件に合わせて椅子や遊具などを個別に作り始めた。 それから何年後だったか現在専務理事として八面六臂の活躍をされている星川安之さんが訪ねて見えた。 誰もが遊べるおもちゃをつくりたいという話に、仕事で出会う子どもたちの顔が浮かび、僕らは大変喜んだことを思い出す。 前身となる「E&Cプロジェクト」の活動から財団化をめざすということで僕も誘われたが、理事会では提案することよりも圧倒的に学ぶことのほうが多かった。 特に視聴覚にハンディのある方の暮らしぶりには普段は気が付かない問題に気付かされ、その鮮やかな解決法に驚くことが多かった。 この財団は社会の不合理を糾弾することではなく、障害者権利条約でもクローズアップされた「合理的配慮」を世界に先駆けて実践しており、これからもリードしていくことでしょう。 変化し続けるハードル 共用品推進機構 理事 望月庸光(もちづき のぶあき) 共用品推進機構の二十年間の歩みは、様々な不便さやニーズを見える形にしながら次の対応につなげる取り組みだった。 限られたスタッフでありながら活動分野の範囲を広げ、団体や個人との結びつきを強め共用品推進機構の強みを築いてきたと思う。 自分達でハードルを上げ、楽しさを見出しながら取り組むスタイルは変わらないし、組織の新鮮さを生み出していると思う。 二十年間で変化したことの筆頭にインターネットの普及が挙げられる、利用世帯数が八倍に増え日常生活の中で大きな役割を演じている。 近年IoTが注目され、今後普通に生活の中に溶け込んで行くことを考えると、「共用品的IoT」のあり方などの検討や連携を考える時だと思う。 もう一つの取り組みは共用品の普及に関してで、展開方法や可能性について様々の分野の人たちを交え考えてみたい。 6ページ 共用品推進機構 評議員 リウマチ患者と共用品推進機構 (公社)日本リウマチ友の会 会長 長谷川三枝子(はせがわ みえこ) 日本リウマチ友の会は、1960年発足。当時リウマチは「リウマチ・神経痛・年寄りの病気」という社会通念の時代で、 専門医も少なく患者は関節の炎症と痛みのくり返しの中、関節破壊が進行して日常生活動作が不自由となり、寝たきりになる人が少なくなかったです。 しかし、人の手を借りずに日常生活動作を維持していきたいとの強い思いから自助具等を使って、なんとか生活していました。 長い間〝病気と障害を併せ持った代表的な疾患〟といわれたリウマチでしたが、21世紀に入り、新たな治療薬で「寛解」を目指せるようになりました。 患者の姿が変わりつつある時代でも、患者の不安は「日常生活動作の低下」、つらいことは「何かにつけて人手を頼むとき」です。 そんなリウマチ患者にとって、共用品推進機構との出会いは、長い間、「困ったことばかり」から「良かったこと」に気付いた大きな発想の転換となりました。 広辞苑第七版の「障害の有無や身体特性に関わりなく、だれもが利用しやすい製品」共用品を多くの人に情報発信していきたいです。 私と共用品推進機構 評論家・(公財)大宅壮一文庫 理事長 大宅映子(おおや えいこ) 私と共用品の出会いは、その前身である「E&Cプロジェクト」が、日本クリエイション大賞の福祉賞を受賞したとき(1995年)に始まります。 クリエイション大賞第一回から審査員をやっていた私は、暮らしやすい共生社会をめざして、いろいろな不便さの調査をやっている鴨志田さんたちのグループに大いなる関心を持ちました。 世間ではユニバーサルデザイン、アクセシブルデザイン、バリアフリー等、健常でない人に目を向ける動きが活発になっていました。 とても重要なことですが、何故か「ことば」が 色々あって、一つのまとまりとしてストンと人々に伝わらないもどかしさを感じていました。 共用品ということばも「これだ!」という程のものではありませんが、少なくとも日本流で、説明すれば理解しやすいと思っています。 共用品は不自由がある人向けだけではなく、「あらゆる人がいきいきと暮らせるように」へと一歩前進することと、その活動を説明すると、皆感動してくれます。 これからはもっともっと広く知ってもらえるよう活動したいと思っています。 より多くの人の便利につなげる (株)髙島屋 CSR推進室 室長 加賀信子(かが のぶこ) 公益財団法人共用品推進機構の創設二〇周年、誠におめでとうございます。 昨年、CSR推進室に異動した際に、前任者から共用品推進機構の評議員の立場を引き継ぎました。 社内では百貨店の営業現場が長かったこともあり、ユニバーサルデザインという単語は知っていても「共用品」という言葉にこれまで馴染みがありませんでした。 ここでいう「共用品」とはユニバーサルデザインやバリアフリーデザインを包括した上位概念であると知ったのは情報誌「インクル」を拝読してからです。 星川専務理事が2月2日付日経夕刊「モノごごろヒトがたり」に寄稿されていらっしゃいましたが、 ドアホンの子機の事例を挙げ『ひとつの不便を解決する工夫がより多くの人の便利につながることが多い』とあります。 このことこそが共用品推進機構の活動の本質であると理解しました。 誰も取り残さない持続可能な社会の実現を目指すSDGsの活動は今や世界の潮流となっていますが、 当社でも事業活動を通じて「共用品推進」も含めて具体的な目標を定め実行していく所存です。 7ページ 共用品で育む寛容な精神 (株)数理計画 川上富春(かわかみ とみはる) 出版関連のシステム開発や環境に係る調査解析を主な業務として携わってきました。 評議員になってから「共用品」に関して特に関心を持っていますが、最も身近なのはシャンプー容器のギザギザです。 なんと1992年にすでに発売されていたとのことでしたが、その意味を知ったのは評議員になってからですから遅れています。 おかげさまで、リンスと間違うことがなくなったのですが、もっと「共用品」という言葉が周知されればと思うのです。 誰もが利用しやすいというのは、昨今の特定の方たちを排斥するような不寛容な出来事がはびこる中 「障害の有無や身体的特性に関わりなく、誰でもが利用しやすい製品」に関心を寄せ、 不自由を感じる場面を改善するためにはどうしたらよいかを一人一人が模索することで、 多様性のある寛容な社会が形成されてゆくのではないでしょうか。そしてそこに「共用品」の本当の意義を感じるのです。 共用品推進機構 創設20周年に寄せて (一社)日本福祉用具・生活支援用具協会 会長 木村憲司(きむら けんじ) 「公益社団法人共用品推進機構」が創設20周年を迎えられ、ここに記念号を発刊されますことを心からお慶び申し上げます。 「共用品及び共用サービス」の意義と発展を目指し、推進団体として発展してこられたこの20年間の貴機構ならびに関係者皆様の歩みに、深く敬意を表します。 私が会長を務めます福祉用具のメーカー団体である、(一社)日本福祉用具・生活支援用具協会(通称:JASPA)と貴機構との関係も20年近くになり、 両団体は共用品及び福祉用具の普及・啓発に対し、様々な事業を共同で行うなど非常に緊密であります。 今後日本は超高齢化社会を迎えるにあたり、高齢者が暮らしやすい環境づくりがさらに必要となり、共用品・共用サービスの開発普及がますます必要となると考えます。 その実現に私どもJASPAとしましても、貴機構の活動を側面から支援してまいる所存です。 最後になりましたが、「公益社団法人共用品推進機構」がますます発展されること、皆様のご健勝ご活躍を心から祈念し、お祝いのことばとさせていただきます。 「おもてなし」の思想を学んで (株)講談社 社長室長 高橋明男(たかはし あきお) 創設20周年、誠におめでとうございます。 私が貴機構のお手伝いをするようになったのは、一昨年からです。 それ以前は不勉強ながら「共用品」という言葉すら正しく認識していませんでした。 ところが、会議に参加してまさに目からうろこが落ちました。 「柏餅」の例がよく紹介されますが、共用品とは古くから日本に根付いていた、いわば「おもてなし」「思いやり」の気持ちを形にしたものだったのですね。 私には目に障害を持った肉親がいます。介護を必要とする身内もいます。 共用品という存在を知った上で、体の不自由な人たちとの関わりを改めて見直してみると、じつは身近なところに様々な工夫をされた共用品があることにも気づきました。 出版界も、視覚や聴覚に障害のある人たちにどうやって作品を楽しんでもらえるかを研究しています。 共用品の思想を学び、出版の仕事にも大いに参考にさせていただきたいと考えています。 8ページ 20周年おめでとうございます (社福)日本点字図書館 理事長 田中徹二(たなか てつじ) 共用品推進機構が発足したきっかけになったE&Cプロジェクトが始まったのは1991年4月だった。私が日本点字図書館の館長に就任したときで、図書館業務に慣れるのに忙殺されていた。そのせいもあって、同プロジェクトには、ときどき顔を出すぐらいだった。しかし、大勢集まった人々が、熱心に議論しているのをよく覚えている。 それが今やりっぱな公益財団法人である。私は、不便さ調査や良いこと調査などのほか、主に視覚障害に関わるJISやISOの委員としても参加してきた。目が見えない/見えにくい私だから考えついたとっておきのアイディアコンテストでは、日本点字図書館が共催することになった。その中でいつも感じていたのは、星川専務理事ほか、こんな少人数でよく事業をやっているなということだった。それなのに、共用品という言葉が辞典に掲載されるほど、世の中に普及させた。感服せざるを得ない。 今後どんな道を進むのか未知数だが、これまでの実績が示すように、さらなる発展を大いに期待したい。 私と共用品推進機構 大阪河﨑リハビリテーション大学 副学長 寺山久美子(てらやま くみこ) 大阪河崎リハビリテーション大学で副学長をしています。 専門のリハビリテーション・作業療法の使命は「生活行為の自立促進」ですが、そのための有効な手段として自助具や福祉機器を活用します。 その関係で私と自助具・福祉機器・住環境整備との付き合いはほぼ五十年に及びます。 中間ユーザーとして多くの機器関連の研究開発に携わってきましたが、忘れられないのは「温水温風便座の臨床試験」でした。 研究協力者の重度脳性まひ女性のトイレ自立がこれで果たされた時の本人の笑顔を今でも忘れる事ができません。 以後「福祉機器通?」のひとりとして臨床・研究・教育の他関係各機関団体等との連携が始まりました。 本機構は前身の「E&Cプロジェクト」時代からの付き合いです。障害者高齢者の「福祉機器」から始まった私の認識も「共用品」へと広がりました。 「共生社会へ向けて」日本は本番を迎えていきます。本機構は少ない人数で驚くほどの課題に取り組んできましたが、今後一層の活躍が期待されます。 印刷会社の共用品推進について 凸版印刷(株)情報コミュニケーション事業本部 出版営業統括   鎌仲宏治(かまなか こうじ) 凸版印刷の鎌仲宏治です。情報コミュニケーション事業本部に所属しており、執行役員として出版営業を統括しています。共用品推進機構では評議員を担当しています。 印刷会社にとって、共用品は非常に重要なキーワードです。テキスト、静止画、動画などのコンテンツを扱う際には、 可読性の高いフォントとサイズ、閲覧しやすい写真・動画になっているか等に配慮しています。 また商品のパッケージを作成する際には使い勝手の良いデザイン、機能など共用品としての利便性を常に考慮するようにしています。 共用品推進機構では、共用品・共用サービスの実現に向けて、調査の実施と普及をしてきました。 世の中の不便なものやサービスを便利なものに変えていく活動は、重要なことであり、継続することが大切です。 社会生活、日常生活の中で皆さまとコミュニケーションを取りながら、より良い社会の実現に向けて邁進していきたいと思います。 9ページ 共用品推進機構 監事 共用品推進機構の益々の発展を 弁護士 吉成外史(よしなり とし) 一.今まで共用品推進機構(以下「当機構」といいます)は、星川安之氏をはじめとする各職員の方々の涙ぐましい努力でここまで発展してきました。 私も、非常に尊敬する偉大な功績と思います。 二.今後も以上のような努力を継続することが一番大事です。 その為には、財政基盤を確立し、各職員の方々の給与・待遇面をきちんとしなければ、単にボランティア精神だけでは、当機構を維持継続していくことは困難だと思います。 三.皆さまの知恵をお貸しいただき、未来永劫、存続できるような方策ができることが必要であると思います。 共用品推進機構の歩み ルール作り(ISO) ・ISO/IEC ガイド71 2001年 ・日中韓AD委員会 2003年 ・TC159人間工学 2005年~ ・TC122包装 2008年~ ・コミュニケーション支援用ボード 2008年 ・TC173/SC7 アクセシブルデザイン 2010年~ ・報知音 2011年 ・凸記号 2011年 ・アクセシブルミーティング 2015年 ・トイレ操作部 2015年 ・コミュニケーション支援用絵記号 2016年 ・触知案内図 2016年 ・公共空間の音案内 2016年 ルール作り(JIS) ・包装容器 2000年 ・報知音 2000年 ・JIS Z 8071 2003年 ・コミュニケーション支援用絵記号 2003年 ・触知案内図 2006年 ・トイレ操作部 2006年 ・点字 2009年 ・自動販売機 2010年 ・アクセシブルミーティング 2010年 ・報知光 2011年 ・棚の高さ 2011年 ・凸記号 2013年 ・誘導用ブロック 2014年 ・公共空間の音案内 2014年 ・取扱説明書 2018年 ・アクセシビリティ評価方法 2018年 ・音声案内 2018年 ・包装の開封性 2018年 不便さ調査 ・高齢 1999年 ・弱視 2000年 ・知的障害 2000年 ・子供 2000年 ・聴覚障害 2002年 ・全障害 2004年 ・視覚障害 2011年 ・不便さ検索システム 2001年 ・災害時 2000年 ・サービス 2004年 ・ICタグ 2004年 ・生理用品 2006年 ・家電製品 2006年 ・いつまでも元気で働く10のコツ 2015年 良かったこと調査 ・旅行 ・コンビニエンスストア ・医療機関 ・家電製品 ・パッケージ 10ページ 私と共用品推進機構 日本福祉大学客員教授 後藤芳一(ごとう よしかず) 5つの側面について体験を書かせていただきます。 第1は、産業政策です。通商産業省に勤めていた筆者は、福祉用具法(1993年施行)に合わせて新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に出向し、 医療・福祉機器開発課長(初代)として福祉用具実用化の助成制度を始めました。 リハビリテーション工学カンファレンスでE&Cプロジェクトの講演を聴き、NEDOにお招きして事業者に助言をいただきました。 通産省に医療・福祉機器産業室が発足(95年)し、筆者は室長(初代)として福祉用具産業政策を始めました。 政策には市場規模が必要で、まず福祉用具のコア部分(車いすや介護用ベッド)の統計を作りました。 次に、福祉用具(周辺領域)を作り、そこには共用品を充てることにしました。 統計には集計対象を決める→ベン図で範囲を決める→ベン図を描くための概念を決める、が必要です。 福祉用具産業懇談会(機械情報産業局長の懇談会)に「共用品市場規模推計調査ワーキンググループ」(97年)を設けて検討しました。 万代善久(まんだいよしひさ)座長、星川安之副座長という体制でしたので、実質はE&Cプロジェクトが共用品の定義を考える場でもありました。 いま、コア部分は日本福祉用具・生活支援用具協会(JASPA)が福祉用具市場規模として、周辺部分は共用品推進機構が共用品市場規模として公表しています。 第2は、現場発、日本発の社会の動かし方。右のご縁で94年末からE&Cプロジェクトに加わりました。 個人が所属を離れて活動し、ボトムアップで横断的な規範を生み、世の中を変える…。 法人化後は企業や他の団体との連携も進んでいます。取組みは標準化を通じて世界をリードしています。 この方法は日本発の思想ではと、星川さんとともに「共用品という思想」(11年、岩波書店)にまとめました。 第3は、政策を動かす起点。国連障害者権利条約の締結に際し、改正障害者基本法のもとで第3次障害者基本計画を作りました(13年)。 光野有次さんの発案で星川さんと相談し、大熊由紀子さんの支援を得て筆者が内閣府障害者政策委員会に加わりました。 障害の社会モデルではバリアフリーが重要な論点でした。委員会の都度共用品推進機構で勉強会を開き、その智恵を政策に反映させました。 第4は、研究・教育です。政策を立上げた過程を論文にまとめました(「福祉用具産業政策の評価に関する研究」〈01年、東京工大博士論文〉)。 政策を立案した側からの視点で、共用品を研究対象にしました。経済産業省がまとめた「1980‐2000通商産業政策史7 機械情報産業政策」(長谷川 信編著、13年)も 「福祉機器・用具産業」として共用品に触れています。 共用品推進機構による実践は国内外をリードしてきました。 貧困、環境など国際社会の共通課題に対応が求められるなか、共用品の取組みは先例として寄与できる可能性があります。 それには実践を理論で裏付けて普遍性を示す必要があります。そうした目的で、17年に共用品研究所を設けました。 筆者は責任者として仲間をふやし議論を深める取組みを進めています。 大学でも共用品を論じています。「バリアフリー社会と新産業創出」(日本福祉大、99年から)、「ニーズ型社会と新産業創出」(早大、04年から)、 「基礎セミナー」(阪大、11‐12年)、「高齢社会総合研究学特論」(東大、16年から)です。共用品は実践的方法のみならず、日本発の社会の動かし方という点で学びを提供してくれます。 第5に、個人としての自分が試される場です。第4までは改まった意義ですが、それだけで人は動きません。 機構へ行くと(肩書きでなく)名前で呼ばれます。一方、自分がどう寄与できるかが問われます。 機構はこうして、本業とは別の「もう1人」の自分と向きあう場でもあります。 寄与しなくても温かいです。20年で変わったこともありますが、そこは同じままです。 11ページ 川崎アイeyeセンターまつりを開催! 川崎市視覚障害者情報文化センター 杉山雅章(すぎやま まさあき) 川崎市視覚障害者情報文化センターは、日本点字図書館が指定管理者として運営している川崎市の施設です。 JR川崎駅から徒歩約15分の所にあり、点字図書・音声図書の製作と貸出、白杖訓練・パソコン訓練などの訓練、視覚障害者の自立した生活に役立つ便利なグッズの販売などの事業を行っています。 川崎市には約2200人の障害者手帳所持者がいますが、手帳を申請していない方もまだまだ沢山います。 目に障害をもち不便さを抱えて生活している人たちに早い段階から当センターと繋がってもらうために、様々な形で広報を行っています。 この「川崎アイeyeセンターまつり」も、その一つ。当事者はもちろん、多くの健常者にもセンターに足を運んでもらい、この施設を広く知ってもらうことを目的としています。 センターまつりの内容は盛りだくさん。 今年は視覚障害に関わる様々な体験コーナーとボランティア団体の活動紹介、マッサージやネイルの施術体験、ヴァイオリンコンサート、最新機器体験会など行いました。 2階ホールは催し物会場となっており、11時からは川崎市の音訳グループによる恒例の「朗読ミニライブ」、 午後は全盲のヴァイオリニスト穴あなざわ澤雄ゆうすけ介氏によるコンサートが行われました。特にコンサートは会場がほぼ満席になるほどの人気。 自由奔放でパワフルな演奏に皆さん圧倒され、大変な熱気に包まれていました。 2階の各部屋では、点字、音声パソコン、スマートスピーカー、盲導犬、マッサージ、最新の視覚障害者用機器などの各種体験会が行なわれました。 機器体験会では、眼鏡のように端末を装着し、読みたいものを指さすと文字を読み上げる「オーカムマイアイ2」、 暗い所でより明るく見えるHOYA製の夜盲症向け眼鏡、三菱電機製の音声ガイド付き家電の体験会などがありました。 特に主婦の方にはIH調理体験が人気で、チャーハンやから揚げなどを、音声ガイドを聞きながらおいしく調理していました。 3階は、インターネット上の電子図書館「サピエ図書館」、点字図書・録音図書、iPad、音声解説付きDVD映画、ワンコインネイルなどの体験コーナーです。 また、3階奥の休憩室では、パンの販売、スターバックス コーヒー ジャパンによるコーヒーの無料サービスに加え、 ボランティア団体による紅茶、緑茶、お菓子のサービスもあり、みなさんホッとした様子でくつろいでいました。 今回で5回目のセンターまつりですが、前日からの寒波にもかかわらず約170名もの方にご来場いただきました。 コンサートを楽しまれた方、新しい機器を試された方、iPadの操作を体験された方など、様々な笑顔にお会いすることができました。 また、健常者の方にも、体験しながら当センターの事業をご理解いただけたと思います。 これからも目に障害を持ち戸惑っている方々に、早い段階から関わることができるよう、また、身近な施設として利用してもらえるよう努力してまいります。 写真1:朗読ミニライブ 写真2:IH調理体験 12ページ リニューアルした「化粧品点字シール」 花王(株)コーポレートコミュニケーション部門 社会貢献部 花王では、2001年より、情報のバリアフリー活動の一環として、視覚に障がいのある方に向けて、 洗顔料とハミガキなどのように容器の形状が似ている製品や使用場面などが識別できるよう、「家庭品点字シール」の作成を行ない提供してきました。 その後、「口紅の色の識別ができるシールをつくってほしい」との声が寄せられ、よりおしゃれを楽しんでいただきたいとの思いから、 2006年には、「化粧品点字シール」の作成を行ないました。いずれのシールも、白地に大きな墨字の印字もあり、ご希望の方に無償で提供しています。 点字シールの配布活動の開始から十数年が経過し、製品の種類の増加、コンパクト化、安全性への意識の高まりなどを受けて、 より便利にかつ安全に製品をお使いいただけるよう、2016年11月には、「家庭品点字シール」のリニューアルを行ないました。 このたびは、昨今の製品の多様化やライフスタイルの変化に合わせて、「化粧品点字シール」を、より識別性の高い内容へリニューアルし、2019年2月より、提供を開始しています。 今回のリニューアルにあたっては、まず視覚に障がいのある方々に日々の生活の中で化粧品を使用する際、どのように識別しているかのヒアリングを行ない、 その結果から、従来の「化粧水」や「メイク落とし」、「カラー」など容器やカラーの識別をするためのシールに加えて、 1.使用量がわかるシール、2.より自由な発想で使用できるハート形やひし形の記号のシール、3.ファンデーションのシール、を追加するとともに、4.使用順の「5」のシールをつけ加えました。 「化粧品点字シール」は、全24種類から30種類へ増やしています。複数のシールを組み合わせて使うことも可能です。 点字シールを手にされた方からは、「読みやすく、点字シールの種類も多くあり、組み合わせを工夫して便利に活用したい」、 「今まではゴムをつけたり、自分でシールを貼ったりしていたが、すぐにだめになり困っていた。点字シールが届いてとても助かっている」 「ひとり暮らしを始める際の助けにもなる」などの声も寄せられています。 この点字シールは、視覚に障がいのある方が、便利に安全に日常生活を送っていただけるように作成しています。 これからも、花王グループでは、誰もが暮らしやすい社会に向けて、情報のバリアフリーをめざした社会貢献活動に取り組んでまいります。 【点字シールの申し込み先】 花王(株)コーポレートコミュニケーション部門 社会貢献部 電話:03-3660-7057 FAX:03-3660-7994 メール:kouho@kao.co.jp 写真1:ヒアリングの様子 写真2:写真リニューアルした化粧品点字シール 13ページ 西荻センターまつり 出展報告 地域で共用品を知らせる意味 本年度、「良かったこと調査」で、協力いただいている杉並区が所管する西荻地域区民センター(勤労福祉会館)で3月2日・3日に、開催された「西荻センターまつり」にて 東京の西荻窪駅周辺で手に入る共用品、利用できる共用サービスの展示を行い地域住民約1500名の人たちに見て・体験していただきました。 昨年の同まつりでは、共用品推進機構の展示室の共用品を、20点ほど並べたところ、「へ~!なるほど」、「知らなかった!」とともに、 「これ、西荻のどこで、売っているのですか?」の質問が多くありました。 そこで今回、展示品の紹介カードに、取り扱っているお店のお名前を記載できたらと、西荻商店会連合会に相談したところ、承諾していただき、 家電製品店、書店、和菓子店、文具店、100円ショップの店名を表示させていただきました。 さらに、西荻窪駅前にある西友西荻窪店では、店長に趣旨を説明したところ、本部と交渉してくださり、お店で扱っている共用品、約30点を無償で提供いただくことができました。 さらには、パナソニックには軽い力で抜き差しできるコンセントなど4点を、岩田美津子(いわた みつこ)さんが代表を務める「点字つき絵本の出版と普及を考える会」には、 点字付き絵本を10冊お借りし、JR東日本の西荻窪駅では、同駅のバリアフリー配慮を写真で紹介させていただきました。 そして、今回の展示を行うにあたり、杉並区主催の「大人塾」で共に学んだ仲間が、「西荻人にやさしいモノ・ことプロジェクト」をこの展示会のために結成してくれ、 二日間の会期中、ブースでの説明を私とともに、パネルのデザインを行ってくれました。 普段は、共用品の展示会等で、説明を受ける側の人たちが、こちらと共に、説明する立場になってくれたことで、多くの発見がありました。 具体的には、点字の存在を知っているけれど、書かれている点字が何と書いてあるかを知らない、けれど、知りたい気持ちがあること、 イベントにクイズを持ち込むときは、展示をまんべんなく見学しないと、クイズに答えられないようにすることが有効的など貴重なアドバイスを受けることができました。 今回も、さまざまな人が熱心に共用品の展示をみてくださいました。 「私は、林家こん平(はやしや こんぺい)師匠と同じ、多発性硬化症で、いずれ手の自由が利かなくなるので、このような展示会があると、希望が持てる」や、 一人暮らしの80過ぎの男性高齢者の「シャンプー容器のギザギザは初めて知った!これからは、便利に利用できる!」や、 「ハチミツの容器の中にあるアルミが取れにくい!」といった声も、地域で行うからこそ聞ける貴重なことと、実感したことです。 共用品を広げるには、広げてくれる人を広げることが、とても大切と、この展示会を通じて感じたことです。関係してくださった方々に、改めて感謝申し上げる次第です。 星川安之 写真:販売店が書かれた商品カード(上)、パナソニック社製品(中央)、クイズに答えながらの見学(下) 14ページ アクセシブルデザイン(AD)シンポジウム2019開催 平成31年(2019年)2月4日(月)、YMCAアジア青少年センター(東京都千代田区)にて、「ADシンポジウム2019」を開催した。当日は、123名が参加し大盛況となった。 主催はアクセシブルデザイン推進協議会 ADシンポジウムは、任意団体「アクセシブルデザイン推進協議会(ADC)」が、毎年2月に開催しADに関する情報提供を行っている。 ADCは、2003年に家電製品、ガス・石油機器、住宅機器、福祉用具、パッケージ、公共交通機関、などへのADの普及・促進に取り組む業界団体が、 高齢者ならびに、障害のある人たちへの製品やサービスに関する工夫をどのようにしていけば良いかを業界の枠を越えて検討し、関連する情報を共有するために発足した団体で、 世界でも類を見ない業界横断的な組織である。 発足当初から年1回、その時々の社会的背景とAD・福祉用具が関連するテーマでシンポジウムを開催している。 ADシンポジウム2019のテーマ 今年度のテーマは「誰もが参加する社会を目指して~2020年に向けたアクセシブルデザインの普及~」であった。 基調講演では、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会パラリンピック統括室長 中南 久志(なかみなみ ひさし)氏に、 「共生社会の実現を目指して~組織委員会の取り組み~」と題してご講演をいただいた。 組織委員会としての取り組みについて、様々な事例を基に現状と課題について伺った。 参加者から、「アクセシブルデザインを実現するには、誰もが利用できるよう社会全体を整備することと、個人の状況に合わせて個別対応することが重要だと改めて感じました。」、 「中南さんのお話を聞いて、私達が、当たり前に使っているものを、障害のある方達にも使いやすく変更していく。 パラリンピックが取組の大きなきっかけになっているのだと感じました。」などの感想をいただいた。 ポジティブな姿勢が参加者の参考に 障害のある人に対する考え方に新たな視点を加えたのは、特定非営利活動法人東京都盲ろう者友の会理事長 藤鹿一之(ふじしかかずゆき)氏の講演であった。 盲ろうの立場から、日常生活の中で出会った〝良かったこと〟をユーモアたっぷりに話して下さった。 参加者からは、「藤鹿さんのような盲ろうの方のお話を実際にうかがうのは初めての体験で且つ、お話も上手で、とても興味深く、心にささるものがありました。 お話を伺ったり知ったりすることで、どんどん身近に感じました。色んな人がいて世の中がまわっているのだなと人々が感じていけるようになったらよいと思いました」という意見をいただいた。 最後にADC幹事から、ADの最新情報の報告があった。 参加者からは次年度のテーマに関して、たくさんの要望をいただいており、来年度も有用な情報提供・共有ができるよう努めたい。 森川美和 写真:シンポジウムの様子 15ページ 平成31年度共用品推進機構事業計画 ~歩んできた20年、これからの20年~ 平成31年(2019年)3月8日の第19回定時理事会にて、平成31年度事業計画が承認されました。 今年度は、「調査・研究」、「標準化」、「普及・啓発」の三つの柱で取り組みを行います。 調査・研究 (1)障害児・者/高齢者等のニーズ把握システムの構築・検証 製品・サービス・システムに対して、障害児・者、高齢者のニーズを把握、確認するためのアンケート調査、 ヒアリング、モニタリング調査をシステム化し、製品・サービス・システム供給者と需要者が連携できる仕組み案を検証する。 1.障害児・者/高齢者等の日常生活環境における不便さ等の実態把握(調査方法)の構築検証・実施 「良かったこと調査」を実施する。さらに、これまでに行ってきた障害のある人・高齢者等のニーズ等を把握するために不便さ調査及び良かったこと調査等のアンケート項目を分析する。 また抽出した共通の質問事項の有効性を、実施方法、対象者等の違い等を加味し、実践を通じて検証する。 2.共創システム及びモニタリング調査システムの構築・検証 実施してきた共用品モニタリング調査を基に、障害当事者団体・高齢者団体等と連携し、 関係業界、関係機関(業界団体、企業、公的機関等)が共用品・共用サービス・共用システムに関するモニタリング調査を簡易に実施するための支援システムを試行し、 さらにこの支援システムを恒常化するために必要な事項の分析を行い、合理的且つ有効なモニタリングの実施方法を検証する。 (2)共用品市場調査の実施 実施してきた共用品市場規模調査及び手法に関しての分析を引き続き行い、調査対象の範囲並びに、今後共用品を普及するために必要な事項の課題抽出を行いながら、 平成31年度の共用品市場規模調査を実施する。また、共用サービスにおける市場規模の調査の可能性を検討する。 標準化の推進 (1)規格作成 1.アクセシブルデザイン(高齢者・障害者配慮設計指針)国際規格の作成及び調査・研究 これまでに行ってきた国際標準化機構(ISO)内のTC173(障害のある人が使用する機器)及びTC159(人間工学)に、新規規格作成の調整と共に提案を行い、審議を開始する。 2.アクセシブルデザイン(高齢者・障害者配慮設計指針)JIS原案作成及び調査・研究 3.共用サービス(アクセシブルサービス)の国内標準化に向けた調査・研究 (2)関連機関実施の高齢者・障害者配慮設計指針規格作成及び調査研究に関する協力 普及・啓発 (1)共用品普及のための共用品データベース作成・維持・発展 (2)共用品・共用サービス展示会の実施 (3)共用品・共用サービスに関する講座等の実施・検証 (4)施設における共用サービス・共用品の普及・啓発 (5)国内外の高齢者・障害者、難病等関連機関との連携 (6)障害当事者等のニーズの収集 (7)共用品・共用サービスに関する情報の収集及び提供 配信した情報は、項目ごとに整理し今後の共用品・共用サービスに関するあるべき姿を検討するために分析を行い、各委員会等の資料として提供し、 さらにウェブサイトに共用品推進機構の活動や共用品情報を掲載し広く活動を知らせる。 16ページ 創設20周年は、共用サービスの元年に 【事務局長だより】 星川安之 今年の4月16日、共用品推進機構は設立20周年を迎えます。 今回の表紙は、東京都豊島区にある自由学園明日館、共用品推進機構の前身であるE&Cプロジェクト時代より長きにわたり会合を開いていた、いわば共用品の原点ともいえる場所です。 創設20年を迎えるにあたり今回の機関誌をどんな構成にしようか考えていると、 そういえば今まで、理事、評議員、監事を紹介する機会が少ないというよりも、ほぼなかったことに気づき、今回の構成を思いついた次第です。 改めてそれぞれの方の文章を拝見すると、なるほどと思ったり、こういう考えなんだと改めて気付いたりしています。 20年、短いのか長いのかはさておき、変わったこと、変わらなかったことを改めて感じています。 障害者、高齢者の日常生活における不便さ調査は、新たに当該分野に規格が必要だという風穴をあけました。 いくつかの国内規格づくりをしている中で、政府からの「共用品の国内規格化は、今後、国際規格にすべきではないか?」の問いかけに応えてからは、 国内外の規格づくりに邁進する日々が続きました。 その間に、共用品というモノだけでは解決しない事項を「共用サービス」と名づけ、全国の郵便局の障害者・高齢者応対マニュアル作成を皮切りに、 万国博覧会の日本政府館の同マニュアル、そしてそれらが、2020東京オリンピック・パラリンピックのアクセシビリティガイドにつながっていきました。 共用品関連の規格は40種類になり、それらを活用して作られた共用品の市場規模は、3兆円近くになってきました。 この20年で変わったことは、障害者・高齢者が使いづらかった製品が、障害者・高齢者が使える製品=共用品になってきたことです。 変わっていないこと、コトの部分です。コトは目には見えないことが多いため、規格化はこれまでされてきませんでした。 そのため通常「サービス」と呼ばれることの多い「コト」は、それぞれの解釈で、標準化されずに、独自の判断で行われていました。 それが今年の7月、法律が変わり、通称JISと呼ばれている日本工業規格が、日本産業規格に変わるのです。 JISのIは、Industryの頭文字で今までは「工業」と訳していたのが、「産業」に変わるのです。 工業と産業、そんなに大きな違いがないと思われるかもしれませんが、工業の場合、「モノ」の規格を作るという法律になっているため、 「サービス」などの規格は法律上、作ることができなかったのです。 けれども昨今、国際標準化機構(ISO)で作られる規格の中にはサービス関連も数多く含まれていることもあり、 今回、国内の法改正で、サービスも規格が作れるようになるのです。 つまり、共用品に加えて、共用サービスの規格が大手をふって作れるような状態になるのです。 共用品推進機構が設立して20年間関わってきた共用品の規格作りを、さらに実践へと向け、新たに共用サービスの作成に向かっていけたらと改めて思っているところです。 共用品通信 【イベント】 「ADシンポジウム2019」開催(2月4日) 【講義・講演】 千代田区商店街連合会関連講演会(1月11日、星川、森川) 東京大学教育学部附属中等教育学校 共用品授業(1月22日、森川) (一社)情報通信ネットワーク産業協会 講座(2月2日、星川) 荒川区立赤土小学校 共用品授業(2月2日、森川) 福島県医療福祉機器協議会 講座(2月14日、星川) 【報道】 日本経済新聞 「バイキングカート」(1月5日) 日本経済新聞 「ドアホンの子機」(2月2日) 日本経済新聞 「模型触って見える世界」(3月2日) 時事通信社 厚生福祉「沖縄のバリアフリーネットワーク会議」(2月5日) 時事通信社 厚生福祉「高齢社会での100円ショップ」(2月15日) 時事通信社 厚生福祉「要約筆記利用ハンドブック」(2月22日) 月刊トイジャーナル2月号「サイトワールド」 月刊トイジャーナル3月号「補聴器をつけたバスの運転士」 アクセシブルデザインの総合情報誌 第119号 2019(平成31)年3月25日発行 "Incl." vol.20 no.119 The Accessible Design Foundation of Japan (The Kyoyo-Hin Foundation), 2019 隔月刊、奇数月に発行 編集・発行 (公財)共用品推進機構 〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2-5-4 OGAビル2F 電 話:03-5280-0020 ファクス:03-5280-2373 Eメール:jimukyoku@kyoyohin.org ホームページURL:http://kyoyohin.org/ 発行人 富山幹太郎 編集長 山川良子 事務局 星川安之、森川美和、金丸淳子、松森ハルミ、田窪友和 執 筆 後藤芳一、杉山雅章、花王㈱ コーポレートコミュニケーション部門 社会貢献部、共用品推進機構 理事・評議員・監事 編集・印刷・製本 サンパートナーズ㈱ 表紙デザイン ㈱グリックス 表紙写真提供 自由学園明日館 本誌の全部または一部を視覚障害者やこのままの形では利用できない方々のために、非営利の目的で点訳、音訳、拡大複写することを承認いたします。 その場合は、共用品推進機構までご連絡ください。上記以外の目的で、無断で複写複製することは著作権者の権利侵害になります。