インクル120号 2019年5月25日号 目次 賛助会員に支えられている共用品推進機構 2ページ キーワードで考える共用品講座第110講 後藤芳一 3ページ 法人賛助会員 NTTクラルティ(株) (株)オリエンタルランド 4ページ (株)講談社 (株)高齢社 5ページ (株)GKデザイン機構 小学館 6ページ (株)数理計画 (株)DNPビジネスパートナーズ 7ページ (株)髙島屋 (株)タカラトミー 8ページ 直販配送(株) TOTO(株) 9ページ (一社)日本玩具協会 日本能率協会総合研究所 10ページ 日本福祉大学 白山印刷(株) 11ページ (株)日立製作所 (株)ブライト 12ページ (株)UDジャパン (株)ユニ・チャーム 13ページ リクシル(株) 14ページ 漫画で知る障害 解離性障害のちぐはぐな日々 14ページ 耳で巡る はとバスツアー 15ページ 共用品市場規模2018 年度調査の結果~全体金額微増も、わずかに3兆円にとどかず 16ページ 共生社会を目指した地域の取組みに関する調査報告 18ページ 事務局長だより 20ページ 共用品通信 20ページ 表紙:各法人賛助会員ロゴマーク 2ページ 賛助会員に支えられている共用品推進機構 共用品推進機構が、目指している共用品・共用サービスの普及は、共生社会の実現に直結している広く深い目標です。その目標を実現するためには、一人でも一機関でも多くの賛同と共に、協力、支援が欠かせません。 今、賛助会員になってくださっている個人、法人の方々、今までなってくださった方々、そしてこれからなってくださる方々には、感謝の気持ちをいくら伝えても伝えきれません。まずは、この場をお借りして改めて、御礼申しあげます。 財団になる前の市民団体、E&Cプロジェクトの1991年4月の第1回会合では、会費の話は出ませんでした。 これからどのくらい続くかも不透明だったこと、日本点字図書館の集会室を無料で貸していただいてこともあり、費用をかけずに行っていました。 ただ、4時間ほどの会議のため、お茶やお菓子をテーブルごとに毎回配っていました。 3回目の会議の時、「このお茶とお菓子のお金は誰が出しているのか?」と質問がありました。1回目の会議は20名、毎月の会合ごとに人数が増えていきましたが、呼びかけた私としては、その時まで「みなさんに来ていただいている」という気持ちが強く、お茶、お菓子を自腹で調達し準備することに、何の疑問も持っていませんでした。それの3回目の時に出た質問は、「参加している一人一人の会なのだから、お茶、お菓子といっても、一人が負担するのはおかしい」という意図の質問でした。 そこから議論が始まりました。お茶、お菓子代以外にも、会議開催、議事録の発送費、いずれ発生すると思われる諸雑費のために、毎回1000円を徴収することとなり、さらには毎回集めるのは、それだけで作業が発生するので、1000円×12月分として、年会費1万2000円することになったのが、会費の始まりです。会費を払うことによって、参加している人が誰かに頼まれてきているのではなく、自分の意志で参加すると共に、E&Cを自分の組織だと思ってくれるようになっていきました。それは、1999年に発足した財団法人共用品推進機構にも引き継がれました。財団には個人賛助会員に加えて、法人賛助会員制度ができました。 E&Cの会員は全て個人会員でしたが、中には個人での参加ではあるけれど、その人が所属している企業や機関がE&Cの活動に賛同し、会社の仕事の一環で参加される方も増えていきました。そのため、財団発足当初の法人賛助会員の企業、機関は主にE&Cに参加していた人の企業が多く入ってくださいました。 財団発足と同時に、共用品関連の日本工業規格(JIS)並びに国際規格(IS)を作成する事業を受託させていただき、この20年は、共用品・共用サービスを各企業、業界、機関が創出しやすくするために、時間を使わせていただきました。その間、個人・法人賛助会員の方々に支えて下さったことにより、その作業を行うことができました。 具体的には、共用品に関する規格が40種類できました。今後は、これらの規格を企業、業界、各機関に有効に使っていただくために活動できたらと思っています。さらには、この7月からJISの日本語である「日本工業規格」が、Iのインダストリーを、産業と訳し直し、「日本産業規格」となります。そうなると、機構が今までの主にその普及を行っていた共用品と共に、共用サービスも基準づくりができるようになります。 より多くの人から、全ての人に対象を広げ、対象も製品にサービスを含め、さらにみなさまと共に、前進していきたいと思っています。 今後ともどうかよろしくお願いいたします。 星川安之(ほしかわやすゆき) 3ページ キーワードで考える共用品講座第110講 「法人賛助会員と共用品推進機構」 日本福祉大学客員教授 後藤芳一(ごとう よしかず) 法人賛助会員と共用品推進機構の関係は、同会員、機構、社会からの視点で捉えられる。 筆者の日ごろの経験から次のように思われる。 ▼1.法人賛助会員から(その1:目的) 企業が不便さ対応に取り組む目的には、具体策~企業の姿勢自体まで、さまざまな段階がある(W~Z)。入口として、機構では情報が得られ、不便さのある当事者やデザインの専門家と接点ができる(W)。踏み込んで調査や標準化の活動に加われば実践ができ、成果の背景や過程も知った上で活用できる(X)。 直接・具体の成果を目的としない参加もある。機構に集散する、あるいは機構の活動の先にある人や組織とネットワークを広げる目的だ。機構には高度専門組織や公的機関とのネットワークがある(Y)。機構の姿勢や思想に共感し、活動の全体を応援する人たちもいる。機構の活動を通じて社会への寄与になる(Z)。 ▼2.法人賛助会員から(その2:参加の動機と推進力) 賛助会員になる動機は法人の性格によって特徴(A~E)がある。直接の事業成果を求める場合は、機構にある情報や活動への参加(WやX)が動機だ(A)。不便さへの意識の高い企業が、足下の目的はなくても面的接触を維持する参加(W、X、Y)もある(B)。 企業内で問題意識を持つ個人も推進力になる。人のネットワークや情報がある(YやW)と発想のヒントになり、機構の仲間から協力が得られる。同志的関係なので、肝心な時ほど強い解決力を発揮する(C)。オーナー系大企業はトップ経営者が機構の姿勢に共感して支援する。この場合は経営者自身が機構の役員として運営を担う(D)。不便さ対応が専業の中小企業もあり、その場合はW~Zのすべてが同時に揃う(E)。 機構が法人化した当初(2011年)と現在の法人賛助会員を比べると、B~Dが残りAやEは入れ替わっている。Aは機構の中心的機能とは合わない、Eは経営者の交替などが原因と考えられる。 ▼3.共用品推進機構から 機構にはニーズとシーズが集まる。具体的には不便さのある当事者(と団体)、モノやサービスの事業者、専門家(例:デザイン)、行政などの関係者と、その情報だ。機構には、①関係者を点と点でつなぐ、②タテにつなぐ(例:川上(当事者)から川下(提供者)を一気通貫で解決策に)、③ヨコにつなぐ(例:業界横断の連携で規格化)、④臨機の場を設けて課題対応、⑤団体のハブ(例:アクセシブルデザインフォーラム)などの機能をもつ。 法人賛助会員は欠かせない役割を担う。不便さの解決法を考える・モノやサービスとして提供・経済価値を生む・持続的に行うなど。一般の企業にも可能なこともあるが、法人会員は日ごろから機構内で動きを共有することで「漠然とした違和感→〝不便さ〟と認識→どの種の不便さであるか定義→解決方針の設計→具体策の立案→…」という源流(「0から1」の段階)から関わることになる。創造性を実践で試し、それを本業に返すことができる。 ▼4.社会から 法人賛助会員を含むことによって、機構は当事者や業界の団体にはない役割(3.の①~⑤)を担う。そのことによって、社会的にみて次のような価値を生んでいる。①(断片ではない)総合的な解決策を生む、②生みだした解決策を見える化・共有化して社会的な知にする(例:標準化)、③課題を感じ、それを捉え、解決に取り組むことと、一連の取組みが生む社会的な価値を理論・思想として発信する、④関係する各方面(例:不便さのある当事者、産業界、行政、海外)の結節点・窓口になる、⑤ボトムアップで組織化して産業界や行政を動かす先駆的モデルを実践、⑥①~⑤は日本発であり、かつ世界をリードする位置にある。 法人賛助会員はその中心的存在の1つとして共用品の開発と普及を担っている。 4ページ 『共に』 NTTクラルティ(株) 営業部  中野志保(なかの しほ) この度は創立20周年誠におめでとうございます。 私事で恐縮ですが、前身のE&Cプロジェクトの会合に数回参加したのは、まだ一社体制時の20年前。歳月は流れ、3年前にNTTの障がい者雇用の特例子会社である弊社に異動し、視覚障がいの上司の誘導で年次報告会へ。自主的な任意団体は名称を変えそして公益財団法人となり、業務も多角的に深化されていることを知り感銘を受けました。 その後、上司の御機構の会合出席にはいつも付いていきました。会合でのそれぞれの立場からの意見は学びの場であり、なにより道中の上司との時間が大好きでした。上司が話してくれる視覚障がいなどさまざまな障がい者の日常の話は、目からウロコのことばかりでかけがえのない貴重な時間でした。 『共用品・共用サービスとは、身体的な特性や障害にかかわりなく、より多くの人々が共に利用しやすい製品・施設・サービス』は、まさにバリアのない豊かな社会作りの根幹であり、弊社の理念でもあります。 さまざまな障がい者が共に働く弊社は、数年前の御機構広報誌インクルに掲載していただいた『共に』の精神で今は亡き上司の想いを胸に抱きつつ、共生社会の実現に向け着実に地道に歩み続けていきたいと思っております。 確実な発展を遂げられた実績とみなさまのご努力に敬意を表すと共に、御機構の一層のご繁栄を心より祈念いたします。 写真:インクルNo.103『共に働く』は日々学び続けること オリエンタルランドと共用品 (株)オリエンタルランド CS推進部  野口浩一(のぐち こういち) 公益財団法人共用品推進機構 創設20周年おめでとうございます。 ひとつの事を継続し続けることが如何に大切であるか。 私たちが運営する「東京ディズニーリゾート」では、1983年の開業以来、〝全てのゲストがVIP〟という考え方のもと、ゲストのハピネスの創造が沢山のキャストに引き継がれ、実践されてきました。この精神は、今後も「継続」し続けることと確信しています。 開園当時から今日までを振り返ってみると、高齢者や障害者の対応がままならない時期を経て、国内でも多くの高齢者、障害者が滞在する場所となり、私たちキャストの考え方は「知る」から「慣れる」そして「もてなす」へと変化してきました。事務局長星川安之氏の言葉を引用すれば「障害者・高齢者が使いづらかった製品」が「障害者・高齢者も使える製品=共用品」となる、つまり、パークという施設が共用品となりつつあるのではないかと思います。 来園する全てのゲストの「安全」を最優先し誰もが一緒に楽しめるパーク施設という「モノ」創りの環境整備が動き出したのです。しかし、一方で「コト」つまり人の考え方を変化させることは、そう容易いことではありません。モノ創りの成功の鍵となる「ヒト」の考え方が「平等性」を理解し認識することによってはじめて共用品が機能するのではないでしょうか。 これからも、私たちは東京ディズニーリゾートならではの「共用品」活動を継続していきたいと思います。 写真:東京ディズニーランド 5ページ 本の楽しさを届けるために (株)講談社 社長室 髙橋明男(たかはし あきお) 創設20周年、改めてお慶び申し上げます。共用品という言葉、概念、そしてサービスの普及・啓発を真摯に、地道に続けられてきたことに心より敬意を表します。 講談社の取り組み 講談社も誇れるほどではありませんが、アクセシビリティ向上のための活動を行っています。近年、増えているのはオーディオブックの制作・配信です。国土の広いアメリカでは車での移動が多く、以前からオーディオブック市場が充実していましたが、日本でもデジタルオーディオプレーヤーやスマートフォンの普及に伴い、市場が急速に拡大しています。弊社からも遅ればせながら年内に200作品ほどが配信可能になる予定です。 CSR活動としては、「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」という読書推進事業を1999年から行っています。移動図書館仕様に改造した2台のキャラバンカーに各550冊の絵本を載せて、全国の幼稚園や小学校を訪問するもので、約2年かけて全都道府県を一周します。幼い頃から本に親しんでほしいという思いを込めて、絵本の読み聞かせや紙芝居などで楽しいお話を届けています。 おかげさまでこの「おはなし隊」は昨年、メセナアワード2018のメセナ大賞に選ばれました。 読書の楽しさを届けるために今後も様々な形を模索し続けます。 写真:キャラバンカーの扉を開くと「夢の図書館」が現れます(写真上)2台が全国を走り回っています(同下) 高齢社と共用品推進機構 (株)高齢社 代表取締役社長 緒形憲(おがた けん) (株)高齢社は、高齢者のための人材派遣会社です。登録者平均年齢は70・3歳。創業から今日まで20年間、「一人でも多くの高齢者に働く場と生きがいを」の旗の下、事業運営しています。弊社と共用品推進機構様の歩みについて記載します。 創設者の上うえだ田研けんじ二は定年退職した有能な方が時間を持て余している姿を見て、高齢化が進む日本に貢献できる事業を創設しました。パーキンソン病に罹患しましたが、「働く人が第一、人は宝・人は財産」の理念の下、継続、歩んで参りました。 仕事は「電話・店口受付け」、「ガス点検」、「営業」、「家電サービス補助」、「寮・マンション管理人」など多岐に亘り、週2~3日仕事をし、月8~10万円の収入を得ます。 共用品推進機構様とは、2012年9月の「国際福祉機器展」において「片手で使えるモノ展」が大盛況であったことから、翌年4月、高齢社会におけるニーズ調査依頼をいただいたのが最初です。 共用品開発のためには、高齢者の各種ニーズ調査・ヒアリング等が必要であり、高齢社にはぴったりの人材が多数います。ご指導をいただきつつ、社内に「高齢者なんでも調査団」を立上げ、今日まで各種ご協力をさせていただいております。 高齢化が進展する日本で、生き生きと働く元気なシニア達。現場力を活かす一つの形です。今後も共用品推進機構様と共同歩調をとりつつ社会貢献を図って参る所存です。 写真:勉強会(写真上)社長賞表彰(同下) 6ページ モノの共用、コトの共有、人の共生 (株)GKデザイン機構 取締役事務長 手塚功(てづか いさお) GKデザイングループは1952年に設立し、現在では国内外12社から構成され、しょうゆびんから鉄道車両に至る幅広い領域でデザインを提供しています。 GKは当初より「モノの民主化・美の民主化」を標榜し、多くの人にとって、モノを得やすく、使いやすく、そして美しくあるようにすることをデザインの使命としてきました。「民主化」の意味や対象は時代とともに拡大しており、共用品・共用サービスの視点も、デザインの重要な課題となっています。 「モノの共用」の視点は「コトの共有」につながります。GKでは富士通株式会社との共同で、聴覚障害者が健常者との会議に参加することを想定し、音声を視覚や触覚で伝えるデバイスの研究に取り組みました。音を振動で感じる「触音機」、話し始めた人の方向を示す「方向鳥」、会議参加者の映像に吹き出しで発言を表示するソフトなど、様々なプロトタイプを作りながら検証を重ねました。会議という「コト」を、障がいの有無を超えて「共有」する試みです。 2012年のロンドンオリンピックで忘れられないシーンがあります。両足義足のランナーが幾多の困難を超えて出場を果たし、健常者のトップランナーとオリンピックのトラックで競い合ったのです。ありえなかった「人の共生」が実現した瞬間でした。多様さに寛容な社会とともに、人とモノは進化し、デザインの役割も広がっています。 写真:しょうゆ卓上びん 1961 キッコーマン株式会社(写真上)、富山ライトレール トータルデザイン 2006 富山市・富山ライトレール株式会社(Photo by Toshiharu Murosawa (Murosawa Photo Studio))(同下) 小学館と点字つき絵本 小学館第三児童学習局 北川吉隆(きたがわ よしたか) 小学館は、伝統的に点字つき絵本に関わってきた出版社なのではないかと思います。 1983年創刊の隔月刊雑誌『手で見る学習絵本 テルミ』(日本児童教育振興財団発行)の存在がその根幹にありますが、時代を遡ると点字つき『グリム童話集』、近年では『よーい どん!』(2000年)『ニャロメをさがせ』(2002年)、『点字つきさわる絵本 きかんしゃトーマス なかまがいっぱい』『ドラえもん あそびがいっぱい!』(ともに2007年)、さらに『さわるめいろ』(2013年)、『さわるめいろ2』(2015年)など、継続した系譜となっています。 これら小学館の出版物に共通している理念は「目の見える子も見えない子も一緒に楽しめる」「目の見える子とご家族が一緒に楽しめる」という絵本作りです。どの本にも点字だけでなく絵にも盛り上げ印刷が施されており、点字を読めない人にも触るだけで「形」を楽しむことができます。「めいろ」はその意味で究極の形であり、指で線をたどりながらゴールまで進むシンプルな遊びです。『テルミ』でも最も人気のあるコーナーのひとつで、昨年秋には、その傑作選として『テルミのめいろ』が発売となりました。 これらの絵本が、結果的に共用品として機能していることはうれしい限りです。共用品推進機構様には、これらの出版物の認知度を少しでも高めていただきたく、今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。 写真:『テルミのめいろ』(2018年発行) 7ページ 共用品推進機構の益々の発展を (株)数理計画 常務取締役 岡出昌己(おかで まさき) 共用品推進機構の創立二十周年おめでとうございます。 当社はICTを活用して、出版社をはじめとした様々な企業に、システム構築や快適なICTインフラの提供を通して、質の高い業務遂行を支援することを大きな柱としている会社です。 主にシステム構築に携わってきた私は、恥ずかしながら、一昨年に賛助会員として貴機構と関わらせていただくまで「共用品」という言葉や概念を意識することがありませんでした。『共用品・共用サービスの定義と原則〈2000年度版〉』の参考解説に「最初からすべての人々を対象に、適合するよう考えるという共用設計」ということが包括する概念の一つとしてあります。〝最初からすべての人々〟の表現に、誰一人取り残さないという強い信念を感じます。「共用」という言葉は、健全なコミュニティの維持に最も必要な多様性や寛容性をその本質として有しているものだと思います。そしてそれはテロやヘイトスピーチになって表れる独善性の対極にある精神です。大袈裟かもしれませんが、共用品や共用サービスを広めていくことこそ、現代社会の根深いところにある〝病巣〟を治癒する処方箋なのではないでしょうか。そうした意味で共用品推進機構のこれからの益々の発展を心から願うものであります。現在、ADデータベース構築プロジェクトに関わらせていただいていますが、貴機構の発展に当社が少しでも寄与出来ますれば幸甚です。 写真:数理計画 本社受付 DNPグループにおける障がい者雇用と共用品・共用サービスという発想 (株)DNPビジネスパートナーズ 取締役社長 山本達夫(やまもと たつお) 弊社は、大日本印刷株式会社(DNP)のグループ会社として、本年2月1日に発足したばかりの〝障がい者雇用に特化した会社〟で、近い将来に「特例子会社」としての認定取得を目指しております。 DNPグループにおける障がい者雇用は、従前よりそれぞれの会社が単独で採用を行うため、特定の限られた仕事にマッチする方のみを採用するという『仕事ありき』の思想で行ってきました。 しかしながら弊社は、障がい者の特性に応じた仕事を社内で探してマッチングさせるという『障がいありき=障がいファースト』の思想にて採用を行っています。 そしてノーマライゼーションの理念の下、すでに数名の様々な障がいを持った方々が、特性に応じた様々な業務を行っています。 障がい者が業務を行うにあたり、共用品・共用サービスの発想のベースである『「みんなの話し合い」で「みんなの使いやすい」が生まれる』という概念は、今後の我々にとって大変重要なヒントになると思います。 それは「現状の作業方法やルールや仕事用のアイテムには、健常者には気が付かない不便さが隠れている。それを全員で話し合い改善し、効率化・品質維持・使いやすさ・スキルレスにつなげたい」というものです。 まだまだ勉強不足のわれわれですが、共用品推進機構様の〝デリカシー溢れる発想〟を見習いながら、障がい者に「働き甲斐のある仕事」と「自立」を提供していきたいと考えています。 写真1:DBP会社案内表紙 写真2:DBP会社様子 8ページ 髙島屋と共用品 (株)髙島屋 CSR推進室 加賀信子(かが のぶこ) 弊社は主要事業として百貨店を営み、時代の変遷と共に変化する「百貨」の商品を扱い、様々な方々のご要望に応えていくことを使命としております。 自立支援という概念を越えて 特に最近は高齢化社会を象徴する年代のお客様が非常に増えています。髙島屋ではこうした方々の自立支援をサポートする「ハートフルショップ」を展開し、着やすく着脱しやすいウェアや杖、健康グッズなどを揃え、専門知識を持つ販売員がご相談に応じてきました。しかしこれからは、支援や介護という概念を越えて、誰にとってもより自由に、便利に簡単に使えて、かつ生活が豊かになる美しさを兼ね備えた商品の充実を目指しています。 ボーダーレスなファッション提案 例えば、百貨店は婦人服、紳士服、子供服とフロアが分かれていますが、人の体型や嗜好は様々です。もっと一人ひとりのご要望に合わせて買いやすい展開は出来ないかと考え、トライアルとして、「婦人+紳士+子供」1ショップでの展開を今春スタートしました。秋にはボーダーレスな衣料を販売する予定です。ひとつのデザインで7サイズ展開。子供、女性、男性誰もが、自分の好きなサイズを選べる企画です。これからの時代のスタンダードにつなげていければと考えております 写真:ハートフルショップ(写真上)、性別年齢の区別なく自由にサイズで選べるボーダーレス企画(イメージ画像)(同下) 共用品が購入されやすい仕組みづくりを! (株)タカラトミー 高橋玲子(たかはし れいこ) タカラトミーグループが「障害のある子どもたちにも楽しめるおもちゃをつくりたい」との想いを実現する活動を始めて40年が経とうとしています。当初は「目の見えない子どもたち専用のおもちゃづくり」に取り組みましたが、市場規模の小ささがネックとなり、そこから「一般向けのおもちゃに障害のある子どもたちも楽しめるように工夫を!」という「共遊玩具」の理念が生まれました。この理念は玩具業界全体に広がり、現在は日本玩具協会が事務局となって「目や耳の不自由な子どもたちもいっしょに楽しめるおもちゃ」の開発推進活動が続いています。 タカラトミーグループでは、専門の担当者を置いて常に業界最多数の共遊玩具を創出すると共に、共生社会教育活動にも取り組んできました。昨年度からは、新人研修の一環として新入社員が小学校で共遊玩具について子どもたちに伝える出張授業も実施しています。 おもちゃには、手厚い工夫をせずとも共遊しやすい特性を持つものと、全くそうでないものとがあります。しかし、障害のある子どもたちも多様なおもちゃで遊びたいに違いありません。共用品推進機構には、意図的に工夫をして生まれた貴重な共遊玩具や共用品たちが「購入されやすい」仕組みづくり(例えば公共調達など)に今後もご尽力いただければとてもありがたいです。 写真:葛飾区立小学校での出張授業(写真上)、共遊玩具「トミカ4D」(同下) 9ページ 共用品推進機構様との出会い 直販配送(株) 笠井昭弘(かさい あきひろ) 創設20周年を心よりお祝い申し上げます。 今から5年前、既に、我々物流業界では人手不足が問題となっており、その解消が今後の事業継続を大きく左右するとまで言われ始めました。 人口減少、少子高齢化がますます加速される中で、人手不足解消には、女性や高齢者の力が必要であり、継続的に仕事をしていただくためには、女性・高齢者のみならず若い人達にとっても、肉体的な負担が少なく、働きやすい環境を整える必要があると考えていた時、共用品推進機構様とのお付合いが始まりました。 最初に、弊社の業務内容・具体的な肉体的負担(重量物の搬送やピッキング時の腰への負担)と、対策としての機材開発(案)を説明させていただきました。 間髪を入れず、何と星川専務理事自ら現場を体験し、機材メーカーも含めた検討会議がスタートしました。 あれから5年が経過しましたが、①コスト問題②技術的問題③生産性問題など、想定以上にクリアすべき課題が多く、残念ながら機材の開発には至っていない状況です。 しかし、これからの日本は生産年齢人口は減少し、働き方改革関連法による「労働時間上限規制」や「有給休暇5日取得義務」などによる人手不足に拍車がかかり、ますます女性や高齢者の力が必要な時代となります。 引続き、共用品推進機構様のご協力を仰ぎ、当社の改善策である「何か」が、「共用品」として世の中に送り出せることを目指していきたいと思います。 写真:ドッグ付け車両(写真上)、仕分け作業(同下) TOTOと共用品推進機構 TOTO(株) UD・プレゼンテーション推進部 本橋毅(もとはし たけし) 創設20周年、誠におめでとうございます。TOTOは1960年代から障がい者配慮の取組みを開始、90年代の高齢者配慮研究を経て、2000年代には「ユニバーサルデザイン」への取組みをスタートいたしました。E&C時代から情報交換をさせていただきながら、特にパブリックトイレの操作系設備の共通ルール化においては多大なご支援をいただきました事、あらためて感謝を申し上げます。 パブリックトイレ操作系JIS 「大便器まわりの操作系設備が多様化し、トイレの流し方がわからなくて困った」「ボタンを押し間違えてしまった」ある視覚障がいの方からの切実な声を受け、東洋大学(髙橋研究室)と大便器横壁面に設置される3つの操作系設備(紙巻器・便器洗浄ボタン・呼出しボタン)の壁面配置の共通ルール化を目指した産学連携研究が2003年に始まりました。全国の視覚障がい者や車いす使用者をはじめ多様な方々の検証により「逆L字型の配置」を見出し、この研究がきっかけとなり業界を挙げてのルール化の取組みとなりました。 共用品推進機構のご指導のもと、さらに調査研究を重ね、2007年JIS規格制定、このJISを基に2015年ISOの規格が承認され、現在では各種BF関連法規・GLに盛り込まれています。 写真:検証に使用した装置(写真上)、JIS S 0026:逆L字型配置(同下) 10ページ 日本玩具協会の共遊玩具の取組み (一社)日本玩具協会 事務局 中田誠(なかだ まこと) 一般市場向けに作られ販売されている玩具であって、目や耳の不自由な子ども達も楽しく遊べる玩具を「共遊玩具」と言います。 一般社団法人日本玩具協会では、一人でも多くの子ども達に楽しい玩具を届けたいという願いのもと、1990年3月に「共遊玩具」の開発・普及活動を開始しました。現在、17社の玩具メーカーの協力を得て実施しています。 当会は、これらのメーカーから「共遊玩具」認定申請のあった玩具について、視覚や聴覚に障害のある子ども達も楽しく遊べるかどうかを審査し、「共遊玩具」として認定しています。 「共遊玩具」に認定された玩具は、そのパッケージに、「盲導犬マーク」(視覚障害児も一緒に楽しめる玩具)、「うさぎマーク」(聴覚障害児も一緒に楽しめる玩具)を表示して販売することができます。 「共遊玩具」の配慮点は、例えば、電源スイッチのON側に設ける「凸点」などがありますが、その過程で、玩具の枠を超え、異業種の製品づくりとも共有できる配慮項目が多くあると考えています。 業界の枠を超え、共通する配慮点を設け、障害のある人々が使用しやすい製品の普及を指向する共用品運動は、「共遊玩具」と思想を同じくする取組みと思います。 共用品推進機構の活動を通じて、より多くの業界で、障害者に優しい「商品・サービス」が開発され、バリアフリーの「みんなが暮らしやすい社会」が実現されていくことを強く願っています。 盲導犬マーク(写真上) うさぎマーク(同下) 共用品推進機構と弊社 日本能率協会総合研究所 凌竜也(しのぎ たつや) 私共、日本能率協会総合研究所は、1984年、社団法人日本能率協会の調査研究事業部門が分離独立して誕生し、官公庁から民間企業まで様々な業種の顧客に対して調査研究・コンサルティングサービスを提供している会社です。共用品推進機構とのご縁は、かつて弊社の取締役でもあった故・万代善久(まんだいよしひさ)氏が、貴機構の前身であるE&Cプロジェクトのメンバーとなる前後から始まり、四半世紀以上になります。 貴機構の発足当初より現在に至るまでいただいている仕事に「共用品市場規模調査」があります。1995年度に5千億円弱だった市場規模が、2017年度で3兆円弱まで伸びてきた過程を、調査を通じて体感してきました。このほか官公庁等の事業を受託された際に調査研究部分をご支援する等、様々なプロジェクトに参加させていただきました。さらに個人的には、プロジェクトの枠を超え、2003~2005年にかかる2年間、貴機構に出向させていただく形で、事務局スタッフとしてもお世話になった経緯もあります。 必ず次の20年も… 「高齢者・障害のある人々を含めたより多くの人たちが暮らしやすい社会にしたい」という強く明快な目標の下、少人数で直向きに多くの仕事に取り組む貴機構は、多くの人を一瞬でファンにしてきました。次の20年も関係者を瞬殺してしまう稀有な法人として、そこに存在し続けてほしいです。 写真:市場規模調査 11ページ 日本福祉大学と共用品推進機構 日本福祉大学東京サテライト 菅庸郎(すが つねお) 共用品推進機構の創設20周年おめでとうございます。 本学が賛助会員に加えていただいたのは、平成12年のこと。この間、本学の教育や研究にたくさんのご協力をいただいたことに、改めて感謝を申し上げます。 本学は現在、「ふくし」の総合大学となり、約1万2千名の学生が学んでいます。この中には、274名の障がい学生も在学しています(平成30年5月現在)。 「体の不自由な人もそうでない人も、大学で学ぶ意欲と学力があり、本学で対応可能な受け入れ条件を理解していただければ入学を許可し、入学してから共に様々な問題を解決していこう」という本学の基本方針は、貴機構のお取り組みとも共通するものがあります。 この20年の間は、「高齢者・障害者配慮設計指針 アクセシブルミーティング」のJIS規格制定にご協力をさせていただいたこと。本学通信教育部で、スクーリング科目の「ユニバーサルデザインと暮らし」をご担当いただいていること。今年で16回目を迎える本学「福祉機器アイデアコンテスト」にご後援をいただき、不便さを抱える人に対する便利なモノづくりに関心を持つ高校生を増やしてきたことなど、貴機構とご一緒に取組んできたことは本学にとりましてもたいへん意義のあるものでした。 これからも「共生社会」の実現に向けて、ご協力関係を続けていただければ幸いです。貴機構のますますのご発展をお祈りしております。 写真:自助具製作を学ぶ学生たち 共用品の精神と私 白山印刷(株)営業企画部課長 田辺友浩(たなべ ともひろ) 創設20周年誠におめでとうございます。私は印刷会社に長年勤めてきましたが、ふとしたきっかけから共用品推進機構の方々と関わる事になりまして、人と人のつながりや皆様の考え方に感心させられ感銘を受けてきました。 最初は共用品という意味や言葉もよくわからないところからの始まりでしたが、機構の触って分かる柏餅冊子の製作に携わらせていただく中で、星川専務理事よりうかがった共用品のルーツとなる江戸時代からの柏餅の葉の表裏による餡の識別には目からうろこでした。また製作の過程では多くの方々にアドバイスやご協力をいただき完成いたしました事、心より感謝申し上げます。 物を作るということは形を形成することでもありますが、さらにそこに関わる多くの人たちの思いや願いも共に形にしていく事が大事であり、そういった商品と仕組みやサービス(役務)を提供していこうとする人たちの集まりが共用品推進機構だと思います。形だけでも思いだけでも上手くいかないことは多々あり困難な道のりかもしれませんが、共用品の前向きな精神があればより多くの人たちが共に暮らせる社会の実現に向けて前進し続けることが可能だと信じています。皆が前に向かっているのですから。 写真:共用品推進機構冊子『かしわ餅!触って分かる!』表紙 12ページ 日立グループの取り組み (株) 日立製作所 川村邦人(かわむらくにひと) 日立は「利用品質」「アクセシビリティ」「ライフサイクル」を基本テーマに、ユニバーサルデザインを推進しています。その開発プロセスではさまざまな局面でコンサルテーションを実施し、当事者や有識者の声を取り入れながら、お客様に真に役立つ商品づくりを心掛けています。 ていねいな検証を心掛ける 私たちはユニバーサルデザインの推進に際して、さまざまな局面でユーザーや有識者などの声を取り入れながら開発を行っています。商品開発フェーズでは、観察やヒアリングを通して分析をします。多様なユーザーに応えていくためにはユーザーの行動特性や心理を探る必要があり、そのためにできる限りていねいな検証を心掛けています。 モノと使われ方を考えながら 2014年に開発した通勤型電車向けのシート(写真)は、従来よりも浅く腰掛ける形状で、高齢者や身体の不自由な人などにとって、立ち座り動作の身体的な負担を軽減し、使いやすさを追求したものです。しかし、全ての人がこのシートを必要としているわけではないため、選択肢であることを、手すりなど外観で伝えたり、機能を示すポスターを掲出するなど、最適な使われ方を考えています。こうしたモノと使われ方を考えることも共用品や共用サービスでは重要であると考えています。 写真:開発した通勤電車用シートイメージ(写真上)、従来シート(左)との断面比較(写真下) 共用品推進機構との出会いでぶれないブライトに (株)ブライト 小川益男(おがわ ますお) 入会以来の気づきと学びの連続 12年前ブライト創業当時、星川専務理事による「肉まんとあんまん」「シャンプーとリンス」のレクチャーを鮮明に記憶しております。 それ以来、共用品・共用サービスを普及されるために取り組まれた「不便さ調査(近年は良かったこと調査)」、「企業から業界標準~国際標準へ」そして「展示会・講座・草の根普及活動」。全てブライトの根幹として取り入れてきました。 ブライトは情報のユニバーサルデザインを通じて印刷物やウェブを高齢者・障害のある方・外国人にも分かりやすく制作しています。制作にあたり「当事者の声を聞くこと」、「ISO/IECガイド71」を活用することで、一人でも多くの方に分かりやすく伝える挑戦を続けています。 ぶれなく、さらに好事例を 印刷物やウェブの制作段階でよく起こる課題があります。情報を伝える人は、より多くの情報を専門用語で伝えようとします。デザイナーはビジュアルを優先します。そんな時、当事者の声(不便さと良かったこと)を取り入れ、文字サイズや誌面率は、ISO/IECガイド71を活用することで課題が解決されます。これらは共用品推進機構の取組から学ばせていただいたものです。 この度ブライトは心のバリアフリーに対する意識啓発等に取り組む企業として、東京都より「『心のバリアフリー』好事例企業」11社のひとつに選出されました。これは星川専務理事、金丸(かなまる)さん、森川(もりかわ)さんはじめ共用品推進機構との出会いと学びの結果です。さらに好事例を増やし「好事例が当たり前の社会」となるよう努力していきます。 写真:お祝いのお花と賞状 13ページ UDジャパンの取り組み (株)UDジャパン 内山早苗(うちやま さなえ) 機構の20周年とお聞きし、当時の手帳を開いてみました。手帳は創業当初から保管しすでに36冊。「高齢社会を生き抜く人づくり塾」を立ち上げ、生涯現役で障がいのある人も高齢になった人も、自分が行きたいところでしたい活動や仕事ができる社会が当たり前になるよう、さまざまなセミナーのプログラムを開発していました。 当時から主に企業の人材育成のためのテキストづくりや研修企画を行っており、男性中心の企業の人材育成のあり方に愕然とし、女性や障がいのある社員の機会創出が私の使命などと気負って、ノーマライゼーション社会の普及を企業理念に、ユニバーサルデザインやユニバーサルサービスに力を入れ始めていました。 2000年の春、運輸省の「国際観光・福祉観光セミナー」全国1万人の育成、という企画に携わり、研修設計・テキストづくり・講師養成を行った際、知人から紹介されたのが点字図書館にいらした花はなしま島さんでした。それがきっかけで、機構の会員にさせていただきました。 また、イベント業界で「ユニバーサルイベント」を提唱し、別途NPO法人を立ち上げ、今年で15年目になる2泊3日の「ユニバーサルキャンプin八丈島」を実施中。この4月も障がいのある新入社員研修や障がい理解研修などで私もメンバーも飛び回っている状況に、改めて時代が進んだと感じています。が、まだまだはじめの一歩。〝ぼくドラえもん〟の声に迎えられる機構は私の心の故郷でもあります。 研修風景(写真上) ユニバーサルキャンプでの集合写真(同下) 「共生社会」を目指して ユニ・チャーム(株)CSR本部 ユニ・チャームは、事業活動を通じてあらゆる世代の人々がお互いに負担を感じることなく、〝その人らしさ〟を尊重しながら、自然に支え合って暮らせる「共生社会」の実現を目指しています。この考え方は、共用品・共用サービスの考え方と共通するものと考えています。 当社はこれまで、障がいの有無や年齢に関わらず使いやすい商品を提供してきました。 大人用パンツ型紙おむつでは、人の手を借りなくてもはきやすいよう改良を重ねてきましたが、脱ぐときにも多くの介助が必要なことがわかってきました。これは、高齢者は腰を曲げにくいことや、前傾姿勢になることで転倒の不安等があるためです。そこで、履くときには適度に伸びてはきやすく、脱ぐときにはご本人の力でも楽に両脇が破れてサッと脱げるように改良することで自立排泄を支援しています。 また、フタをあける時に反対の手で本体をおさえる必要がなく、ワンプッシュで開いて片手でも使えるウェットティッシュやおしりふき等を提供しています。 これからも、ユニ・チャームは赤ちゃんからお年寄りまで、ペットも含めて、共に支え合い健康的な生活を送れるよう、共生社会の実現をサポートする商品・サービスを提供してまいります。 写真:サッと破ける らくらくステッチ(写真上)、シルコットウェットティッシュ(同下) 14ページ 気持ちに寄り添うデザイン (株)リクシル 技術研究所 中村いくえ(なかむらいくえ) リクシルはトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供する住宅設備機器メーカーです。住まいは家族みんなが使うもの。子どもからお年寄りまで、また、けがをしたり体調をくずしたりしてもいつまでも快適に過ごせるよう、「ひとりにいい、みんなにいい」ユニバーサルデザイン視点のアイデアにあふれた製品やサービスを提供しています。 昨年フルモデルチェンジした「ウエルライフ」は、車椅子を使う方や、立ち仕事をつらいと感じる方が座った姿勢のまま、快適に料理ができるよう考えたキッチンです。実際に車椅子の方の調理行動を観察・分析し、負担の大きい動作や移動を減らしてムリなく作業できるよう、足元の形状やシンク・調理スペース・コンロの配置を工夫しました。 発売後、脳卒中障がいの方に製品を見て頂いた際、「片手で作業すると時間がかかるから座れるのは助かる。妻への感謝の気持ちを伝えたくて、障がい者になってからキッチンに立つようになった」「料理の為の買い物は社会参加になる」と話されました。 リクシルは、ユーザビリティはもちろん、人がその製品を使う時の気持ちに寄り添い、これからもより多くの方が使いやすい製品の開発をすすめてまいります。 写真:座ったままで、もっと料理を楽しみたい人の足元オープンキッチン「ウエルライフ」 マンガで知る障害 解離性障害のちぐはぐな日々 共用品推進機構の事務所から徒歩5分の場所にある合同出版株式会社は、イラスレーターや漫画家が、自身の障害について紹介した書籍を漫画仕様で数多く出版し幅広い層に読まれている。 解離性障害 イラストレーターのTokinさんは24歳の時、「解離性障害」と診断された。専門家によると、「神経症の一種で、心や体の一部が本体部分から離れ『一定の時間内におきたことが思い出せない』、『別の人格になるという心の状態』で、かつては多重人格と言われていた」と説明している。治療法は確立されていないが、研究は数多く、書籍も発行されている。しかし、どれも「困難な場面で当事者がどのように対処すればよいかは書かれていない」とTokinさんは言う。 そんな彼女が始めたのは、マンガで自分の症状を伝えるフリーペーパーを発行することだった。発行後、多くの当事者が自分の体験を寄せてくれた。Tokinさんは次にマンガ本にすることを考え昨年の11月『実録解離性障害のちぐはぐな日々』の題名で合同出版から発行されるや多くのマスメディアで紹介された。 トークイベント ご主人とのトークイベントも開催され「障害を知るのではなく目の前のその人を知ることの大切さ」、「発信することで情報が共有できるようになったこと」、など、大切なことを、さらりと話してくれた。ご主人の「Tokinの他の人格も含めて大切な家族だと思っています。大家族なんです。」と笑顔での言葉が印象に残った。 星川安之 写真:『実録 解離性障害のちぐはぐな日々』(合同出版) 15ページ 耳で巡る はとバスツアー~日本点字図書館で、オープンバスツアーを~ 耳だけで巡るはとバスツアー 日本点字図書館(以下、日点)附属「ふれる博物館」の企画「耳で巡る はとバス東京観光」が開催されました。 「耳で巡る」というより「耳だけで巡る」ツアー。珍しい企画で、この日ははとバスの本物のバスガイドさんが都内を案内してくれました。 ドアの閉まった日点3階 多目的室が乗車場所。ここを出発し約1時間のツアーが始まります。〝車内〟には、視覚に障害のある人とその介助者の合計約20名が座って出発を待っています。座席は実際のバスのように2席ずつの椅子が、通路を挟んで2列並んでいました。 ツアー概要 ■耳で巡る はとバス東京観光 ■乗車日時:2019年4月18日14時出発 15時「下車」解散 ■乗車場所:日本点字図書館3階多目的室 ■コース:東京駅=日比谷公園=国会議事堂=虎の門ヒルズ=東京タワー=レインボーブリッジ=お台場=豊洲=勝鬨橋=築地=歌舞伎座=銀座(注意:途中休憩はありません) ■主催:社会福祉法人日本点字図書館 ■協賛:株式会社はとバス 臨場感が増す みごとな演出 〝バス〟が発車する前の注意事項も通常のバスツアーと同じ。日点職員の方の「本日はオープンバスにふさわしい好天に恵まれ…」、「お客様が増えましたら補助席もご用意いたします」という語りが、ツアー気分を盛り上げてくれました。 間もなくバスは出発しました。この日のバスガイドは桐山桃(きりやまもも)さん。東京駅を出発して銀座に到着するまで、建物、景色の説明、「へ~」っと思うようなあまり知られていない話をしてくれました。ときどき目を閉じて話をする桐山さんには車窓の風景が見えていたのかもしれません。バスが走る行程を触ってたどっていけるように、触知図が事前に配布されたので、〝乗客〟が迷うことはありません。途中、バスは高速道路へ入っていき、そこで前から風が吹き始めました。これも演出です。車内前方に置いた2台のサーキュレーターはこのためだったのです。 建物を手で触れて〝見る〟 バスは無事故で銀座に到着しました。最後は「東京のバスガール」を全員で合唱し、下車となりました。興味のある人は、会場に展示された、「手と目でみる教材ライブラリー」が収蔵する東京タワー、東京駅、国会議事堂の触知模型に触れ、名残惜しそうに帰宅していきました。 金丸淳子(かなまるじゅんこ) 写真1:“車内”の様子 写真2:触知図 写真3:触知模型に触れる乗客 共用品市場規模2018年度調査の結果 ~全体金額微増も、わずかに3兆円にとどかず 日本能率協会総合研究所 凌竜也(しのぎ たつや) 本調査は、共用品(アクセシブルデザイン製品)の出荷額ベースの市場動向を把握するため、1996年に通商産業省(現経済産業省)の委託事業としてスタートし、以来現在に至るまで共用品推進機構によって継続して実施されてきた、国内唯一の共用品市場規模に関する定点調査である。 今回調査は、2018年12月から19年3月にかけて実施した。調査対象は例年同様、一般機械器具から生活用品に至る幅広い分野の28品目であり、調査方法としては、共用品製造企業に対するアンケート調査を中心に、公的統計等を交えてとりまとめている。本年度の配布・回収状況は図表1に示す通りである。 2018年度調査の結果 調査対象とした各品目の合計値にみる2017年度の共用品市場規模金額は、2兆9744億円と推計され、前年比で1.0%(284億円)増となった(図表2参照)。 上位品目の動向を確認すると、まず全体金額の1/3以上を占める「家庭電化機器(1兆242億円:+1.7%、174億円増)」は前回に続き金額を伸ばし、1兆円台を維持した。冷蔵庫、洗濯機等が、引き続き大容量製品を中心に需要を伸ばし、ルームエアコンと合わせて主要3品目が前年度から出荷額を伸ばした。その他の品目も、掃除機でキャニスター型が減少し前年度比マイナスとなる等の例も一部あったが、概ね堅調に推移した。 「ビール・酒(4925億円:+1.7%、83億円増)」はほぼ横ばいとなった。ビール系飲料は、ビール、発砲酒、新ジャンル共に出荷数量の減少により出荷額を減らしている。17年6月より酒税法の改正で安売規制が強化されたことも数量減の一因とされる。一方でビール系以外の飲料の出荷額増により、全体では微増となった。 「映像機器(2699億円:▲4.2%、118億円減)」は、主力のテレビで4Kが台数ベースで35%以上を占めるまでに普及したものの、全体数量を維持・増加させるには至らず、前年度はほぼ横ばいだった出荷額も、わずかながら再び今回はマイナスに転じた。 また「住宅設備(2716億円:+0.7%、19億円増)」「ガス機器(2508億円:+2.6%、63億円増)」については、新規住宅着工件数が対前年度横ばい~微減となる中で、ともに横ばい~微増で推移した。住宅設備では、キッチン分野におけるシステムキッチンのシェア増、またガス機器においては、主力製品のガスコンロにおける次世代製品(Siセンサーコンロ)への入替が進むなど、出荷額は横ばいとはいえ構造的には変化を見せている。 このほか、金額はこれらと比較して低いものの対前年度から大きく出荷額を伸ばしたのは、「ホーム用自動ドア・自動改札(135億円:+36.4%、36億円増)」「机(天板上下)(13億円:+44.4%、4億円増)」等がある。前者については、設置駅数が毎年着実に伸びるのにあわせて伸び続けている。後者については、回収企業の製品別の状況をみると、電動製品の伸びが目立っている。 共用化配慮の普及について 調査対象品目のうち、製品本体の一部機能に共用化配慮が取り入れられている品目の一部について、その品目の全体出荷額との比較の視点から「共用品普及度(全体出荷額に占める共用品出荷額の割合〈%〉)」を試算している(図表3、4参照)。 これらによると2017年度の出荷額での比較では、これまでの傾向と同様「ガス器具」「家庭用電化機器」等が普及度50%を超え、それ以前のデータを含めれば、「エレベータ」「映像機器」「情報通信機器」等でも普及度が50%前後以上と高い水準にあり、これらの品目では調査対象とした共用化の配慮が、新製品ではほぼ定着していると見ることができる。しかし一方で、乗用車、時計・はかり、机等、普及度が1%以下の品目は、調査開始以来伸びていない。(各品目の全体出荷額について、例年活用している工業統計データが17年度はまだ公表されておらず、前年度〈16年度〉の値を流用した。) 今後の調査に向けた課題 市場規模の全体金額は、11年度に映像機器の大幅下落による出荷額の減少を経験して以降、今回の17年度まで多少の増減はあるものの、概ね横ばいの傾向が続いている。この背景には、出荷額の大きい主要品目を含めた多くの品目で、調査開始当初の配慮が新製品でほぼ定着し、品目の出荷額全体の傾向が、そのまま共用品の出荷額の傾向と連動してきていることがある。 今後、より明確なメッセージを社会に発信できる調査とするためにも、対象品目や各品目別の配慮点の見直しを実施すべき局面を迎えていると考えられる。 図表1:アンケート調査の配布・回収状況 個別企業調査 (各企業) 配布数 133 回収数 45 回収率 33.8 % 業界団体調査 日本玩具協会 配布数 17 回収数 12 回収率 70.5 % ビール酒造組合 配布数 5 回収数 0 回収率 0 % 日本照明工業会 配布数 13 回収数 13 回収率 100 % 全体 配布数 168 回収数 70 回収率 41.7 % 図表2(写真):共用品市場規模金額の推移(単位:億円) 図表3:出荷額にみる共用品の普及度 ガス器具 共用品出荷額(2017年度) 2,508億円 全体出荷額(2016年度)〈単位:億円〉 3,739億円 共用品普及度 67.1% 家庭用電化機器 共用品出荷額(2017年度) 10,242億円 全体出荷額(2016年度) 15,787億円 共用品普及度 64.9% 玩具 共用品出荷額(2017年度) 292億円 全体出荷額(2016年度) 1,127億円 共用品普及度 25.9% バス 共用品出荷額(2017年度) 337億円 全体出荷額(2016年度) 2,786億円 共用品普及度 12.1% 照明器具 共用品出荷額(2017年度) 735億円 全体出荷額(2016年度) 3,868億円 共用品普及度 19.0% 自動販売機 共用品出荷額(2017年度) 30億円 全体出荷額(2016年度) 633億円 共用品普及度 4.7% 机 共用品出荷額(2017年度) 13億円 全体出荷額(2016年度) 1,581億円 共用品普及度 0.8% 乗用車 共用品出荷額(2017年度) 189億円 全体出荷額(2016年度) 153,351億円 共用品普及度 0.1% 時計・はかり 共用品出荷額(2017年度) 1億円 全体出荷額(2016年度) 2,492億円 共用品普及度 0.0% 図表4:出荷額にみる共用品普及度の推移('95~'17年度) 18ページ 共生社会を目指した地域の取組みに関する調査報告 ~東京・杉並区の良かったこと調査を通して~ 共用品推進機構は、平成25年から平成28年度の5年間に亘り「良かったこと調査」を実施してきた。これらの調査結果は、多数の良かったことの声が供給側だけでなく、需要する消費者側にとっても、さらなる良いモノづくりやサービスの提供につながることが分かった。「良かったこと調査」は、ゼロからプラスにする働きを持つ調査であると考えている。 平成30年度は、これまで行ってきた個別の調査の範囲を広げ、地域規模で共有されている良かったことについて調査研究を行った。 この調査を実施するに当たっては、杉並区障害者団体連合会、杉並区保健福祉部障害者施策課の多大なるご協力を頂いた。 調査にご協力を頂いた団体は表1のとおりである。各団体及び各地域のイベントでのアンケート調査の実施、各団体及び各地域のイベントでのヒアリングを実施し回答を得た。 表1 調査にご協力を頂いた団体 1 杉並区身体障害者協会 2 杉並区視覚障害者福祉協会 3 杉並区聴覚障害者協会 4 杉並区肢体不自由児者父母の会 5 杉並区手をつなぐ育成会 6 杉並区重症心身障害児者を守る会 7 杉並光友会(原爆被爆者の会) 8 杉並家族会(精神疾患を抱える家族の会) 9 杉並つくしんぼ会 10 すぎなみ若竹会 11 杉並パーキンソン病友の会 12 杉並失語症友の会 13 青空の会 14 杉並区中途失聴・難聴者の会 15 杉並区身障者相談員連絡会 16 杉並区障害者団体連合会加盟団体以外の団体や地域の皆さん 回答者の身体特性等 回答者347名の身体特性等は以下の通りである。 1)身体障害(身体障害の重複含む)132名(38%) 2)知的障害63名(18%) 3)身体障害・疾病等の重複障害32名(9%) 4)精神障害17名(5%) 5)疾病のみを含むその他12名(3%) 6)発達障害9名(3%) 7)無回答82名(24%) 自由回答の総数は834件であった。項目別の内訳については以下の通りである。 1.交通機関(ハード142件、ソフト164件)、 2.飲食店(ハード46件、ソフト71件)、 3.お店(スーパー、商店、コンビニ)(ハード89件、ソフト133件)、 4.公的機関(ハード55件、ソフト95件)、 5.その他(ハード19件、ソフト20件) ここでは、調査結果の一部を場面毎に分けご報告する。 (駅・駅構内/周辺) ・全ての階段口に、エレベーターがあること。わざわざ、一方の階段のみを選ぶ必要がないのでとても便利。(車椅子を使用している人、ベビーカーと一緒のお母さん、杖使用の高齢者) ・駅で、ヒーロー姿でベビーカーを運ぶお手伝いをして下さった方に、親子で助けていただきました。子供は、大好きでした。(ベビーカーと一緒のお母さん) ・駅員さん、繰り返し筆談にも対応、嬉しく思った。/井の頭線で手話のできる京王電鉄の社員が、息子と手話で会話してくれた。(聴覚障害のある人) ・最近徐々にだが、駅にホームドアが増えてきたのはうれしい。視覚障害者にとっては何より。これは聴覚障害者にとってもいいと思う。/ホームは、点字ブロックと柱の間があいているので、歩きやすい。(視覚障害のある人) ・地下鉄の誘導員さんは、いつもさりげなく、あぶなくないようにフォローしてくれます。雨の朝、「私たちは、人がぶつからないようサポートするぐらいしかできないけれど、気をつけて出勤してくださいね」と、声をかけられた。あなたが、気にかけて下さったこと、私にはちゃんとわかっていました…。(杖使用の人) ・トイレもほとんどの駅で多機能トイレがあるので男性障害者に母親が付き添っていても安心して使用できる。(知的障害のある子供のいるお母さん) (飲食店) ・新しい店は段差がないだけでなく、店内も車椅子で移動しやすい。(車椅子を使用している人) ・見えない人同士で行くと、メニューを読んでくれます。お店の人が、「何が良いですか?」と聞くのではなく、「何系と何系があります」と、まず大項目を読んでくれ、「何系が良いです」と答えると、その部分のメニューを読んでくれます。(視覚障害のある人) ・レジで金額が分かるのが良い。(聴覚障害のある人) ・メニューに写真がついている。(聴覚障害のある人、知的障害のある人) ・水を持ってきてくれて手に触れさせてくれる。食べ物は3時6時9時の方向で教えてくれる。(視覚障害のある人) ・ステッキを立てる場所があるのは非常にうれしい。(杖使用の人) ・店員が手話で「ありがとう」。これだけでもうれしい。聞こえないと伝えると、すぐにメモで記入してくれること。(聴覚障害のある人) (コンビニエンスストアやスーパー) ・買ったものを椅子に座って食べられる。(発達障害のある人) ・コンビニは少し高値になるが、一人用等多彩にあり助かる。/コンビニは、何でもそろっているのが便利で、よく利用します。(言語障害のある人/高齢の人) ・トイレを貸してもらえる。(知的障害のある人、発達障害のある人) ・地下の駐車場からエレベーターまでの距離が近いと助かっていた。障害者用のP(パーキング)があると安心する。(肢体不自由の人) ・どこのスーパーでも高い所にある品物を取ってくださいと近くにいる方に頼みますが、皆さん取ってくれます。(肢体不自由の人) ・スーパーでは、レジでなるべく相手の目を見るようにしていますが、かならず相手も目を見返して、親切に対応してくれます。(聴覚障害のある人) ・スーパーでカゴを持って、移動してくれたり、助かっています。(肢体不自由の人) また、多くの回答の中に、「前は、苦情しか思いつかなかったが、この良かった調査をおこなって、良いことも発見でき、とても良いと思う。(全盲・男性)」というご意見があった。  今後も、不便さを解決しながら、良いことを広げていく活動が、個人から地域に広がり、やがて日本中に広がっていけるように努めたいと思っている。 良かったこと調査報告書サイト http://www.kyoyohin.org/ja/research/report_goodthings.php 森川美和(もりかわみわ) 写真:杉並区で見つけた良かったことやモノ 天声人語で、はじめて褒めらた 【事務局長だより】 星川安之 1994年12月4日の日曜日、朝6時に自宅の電話が鳴った。こんな朝早くに誰?と電話に出ると「星川!大変だ!朝日新聞の1面に、おまえの名前が出てる!」と、興奮した学生時代の友人だった。 何か悪いことしたか?と頭をフル回転させながら、急いで郵便受けに新聞を取りにいくと、1面の下段の天声人語に、それはあった。 「星川安之さんは、入社14年、おもちゃのトミー社の社員である。東京の自由学園に在学中、友達と障害児の施設を訪ねた。まひした手足を懸命に動かし、感情を表現しようとする子供たちに出会う。」 ん?確か、引っ越ししたてで、まだ段ボールも開けないままになっている事務所に、朝日新聞の方が来所してくださり、活動に関して詳しく聞いてくださったことが思い浮かんだ。 聞き上手のその方のお名前は、白井健策(しらいけんさく)さん。名刺には論説委員とあり、こちらからは、朝日新聞のどのページにいつ掲載されるのかも聞かずに夢中で活動に関して話したこと、つたない私の話にいちいち感心して聞いてくださったことが蘇ってきた。まさか白井さんが天声人語を書かれる「天人」の方とは全く思いもせずの日曜日の朝刊での掲載であった。 記事は、視覚に障害のある子どもの専用玩具から、玩具業界全体で行うようになった障害の有無に関わりなく共に遊べる「共遊玩具」へ、そして他業界の人たちと障害の有無・年齢の高低に関わらず共に使える製品・サービスを共用品・共用サービスと名付け、共用品推進機構の前身である市民団体E&Cプロジェクトに発展するまでを紹介してくれている。そして結びは、E&Cプロジェクトに対して、「共用品、共用サービスの実現を目ざして、貴重な努力が続いている」と書いてくださっている。 読み終えて、冒頭の友人の「大変だ!」がずっしり理解できたのと同時に、それまでに多くの人たちと行ってきた共用品の普及活動が、白井さんの「貴重な努力が続いている」という一文で、「今後も続けていいんだ!」と思ったことが印象に残っている。 この記事がでてからもE&Cは多くの活動を続け、社会に提案するだけでなく、外部の機関から仕事の依頼を受けるようになり、5年後の1999年4月に、市民団体から、共用品推進機構という名称の財団法人になった。その間、白井さんとは何度か夕食を共にさせていただき、一杯飲みながら、いろいろなことを教えていただいた。不便さを指摘するだけでなく、良かったことを伝えるも重要であること、強い組織は、組織を守ることに多くの時間と費用を使うのではなく、実現させる確かな目標に向かい、そのための時間と費用をかけているなどは、そのほんの一部である。多くの人に支えられての20年間、今後は多くの人を支える側になれたらと思っている。 共用品通信 【イベント】 「西荻センターまつり」(3月2・3日) 【会議】 第19回理事会(3月8日) 第13回評議員会(3月25日) 【講義・講演】 国立特別支援教育総合研究所共用品講座(3月13日、森川) 東京都千代田区立九段小学校 共用品授業(3月20日、森川) 日本規格協会で講演(4月4日、星川) 慶應義塾大学(4月23日、星川) ブータンから来客(4月23日、星川、金丸) 【報道】 日本経済新聞 「ふれる博物館」(3月2日) 日本経済新聞 「ユニバーサルな職場」(3月30日) 日本経済新聞 「人工呼吸器」(4月27日) 時事通信社 厚生福祉「共生社会に逆行」(3月19日) 時事通信社 厚生福祉「肌の色」(4月2日) 時事通信社 厚生福祉 映画「蹴る」(4月19日) トイジャーナル4月号「ふれる博物館」 トイジャーナル5月号「地域での共用品展示」 アクセシブルデザインの総合情報誌 第120号 2019(令和元)年5月25日発行 "Incl." vol.20 no.120 The Accessible Design Foundation of Japan (The Kyoyo-Hin Foundation), 2019 隔月刊、奇数月に発行 編集・発行 (公財)共用品推進機構 〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2-5-4 OGAビル2F 電 話:03-5280-0020 ファクス:03-5280-2373 Eメール:jimukyoku@kyoyohin.org ホームページURL:http://kyoyohin.org/ 発行人 富山幹太郎 編集長 山川良子 事務局 星川安之、森川美和、金丸淳子、松森ハルミ、田窪友和 執 筆 後藤芳一、各法人賛助会員 編集・印刷・製本 サンパートナーズ㈱ 表紙 法人賛助会員ロゴマーク 本誌の全部または一部を視覚障害者やこのままの形では利用できない方々のために、非営利の目的で点訳、音訳、拡大複写することを承認いたします。その場合は、共用品推進機構までご連絡ください。 上記以外の目的で、無断で複写複製することは著作権者の権利侵害になります。