誰もが当たり前に自分がしたいことにチャレンジできる社会をめざして 株式会社UDジャパン 代表取締役会長 内山早苗  どうしても社会とつながっていたい、出産を機に出版社を退社して5年ほどで、仕事がしたいと在宅で編集の仕事を再開して40年ほど経つ。7年ほどして組織(現UDジャパン)にして以来人材育成を通してノーマライゼーション社会の推進を理念に仕事をしてきた。 なぜ、研修参加者に女性がいないの? 企業に向けて通信教育のテキスト作成や研修プログラムの内容設計に携わっている中で、新入社員研修では男性社員・女性社員が参加しているのに、半年後のフォローアップ研修になるとほぼ男性社員だけが受講者になる。え、女性社員は? そんな状況が少し変わってきたのが1999年の「改正男女雇用機会均等法」の施行だった。この時は全国のあちこちから研修に呼ばれた。以来、女性の活躍推進は当たり前の課題になり、多くの企業が自主的に取り組み始めた。 なぜ、障がいのある社員はいないの?  そのような中であれ!と気づいたのが、障がいのある社員の現状だった。当時は、多くの企業が障がいのある社員を雇用しても新入社員研修に参加させることが少なかった。どうしているのだろうかと気になり本人たちに聞いてみると、かなりの確率で単純作業しかされてなかった。でも車いす使用の友人や視覚や聴覚に障害のある友人たちは実に有能で楽しい人が多い。ただ単に障害があるということでその力を発揮できない、育成の機会も与えられない、それはおかしい!もったいない! 以来、企業の人事担当者とテキスト作りや研修の打ち合わせをするたびに、障がいのある社員への育成とリーダーたちへの障がい者理解促進提案を滑り込ませた。しかし、話は聞いてくださるがその先に進まない。障害という言葉が邪魔をして、一人の有能な社員への育成をあきらめている感があった。 ユニバーサルデザインの普及に便乗  そのころユニバーサルデザインという言葉が普及し始めた。誰もが使いやすい「商品」や「サービス」にすることが重要と、まず大手の各種メーカーさんが取り組み始めた。しかし何かちぐはぐな感じで、不便さのある人たちに評判が悪かった。せっかく大きな開発費を投入しているのにもったいない!どうしたらもっと使いやすいその人の特性に合った商品やサービスを作ってもらえるか?一社ずつ説得していてはらちが明かない!  そこで当時立ち上げたばかりのNPOを主催者にし会社が全面的バックアップをして「ユニバーサルキャンプ㏌八丈島」という2泊3日の研修イベントを立ち上げた。とにかく多様な人と一緒に対等な関係で3日間テント生活をしながらノーマライゼーションやユニバーサルデザインを肌で感じて理解してほしいと願ってのこと。このイベントはコロナウイルスの発生まで17年続けられた(現在は復活している)。120人の定員の内、約4割近くが障がいのある仲間たちの参加になっている。  この体験が、弊社の新入社員や管理職に向けての障がい者理解や多様性理解の「研修」や「テキスト作り」に大いに活かされている。 さらに日本の高齢社会の進行に伴って進んでいる組織の雇用延長の課題解決策にもなっている。今ではそうした仕事も増えつつある。自身もそのうちの一人だが、高年齢になると当然少しずつできないことが増えてくる。しかし、長年の努力と経験からまだまだ社会に役立つことはできる。とはいえできないことも増えていくことは否めないので配慮や工夫が必要だ。 誰もが尊厳をもって生涯自分らしく生きていくうえで、多様な特性を持つ人たちとともに仕事や活動をすることは本人の幸せや社会の活性化につながると信じている。 実は弊社の仕事の6割近くが、入社時や昇進昇格時のアセスメント事業が占めている。企業の理念や方向性を加味しながらのアセスメントではあるが、その中にもすべての人が等しく機会を得られる視点を判断基準から外さないように心掛けている。