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共用品推進機構は、1991年(平成3年)から個人の資格で参加するメンバーによって自主的な活動を続けてきた市民団体「E&Cプロジェクト」を発展的に解散し、関係各位の応援をいただいて1999年(平成11年)4月に設立した公益法人です。 そしてさらに2012年(平成24年)4月1日に、内閣府の移行認定を受け、公益財団法人化致しました。今後も共用品・共用サービスの開発と普及のために多角的な活動を行い、活動成果は企業、消費者、行政・自治体をはじめ広く社会全体に提供するとともに、全世界に向けて情報発信しています。
(共用品白書 1999年度版 より一部抜粋)
1999年(平成11年)3月に発展的解散し、翌月4月に財団法人共用品推進機構を設立。
発足年月日 | 1991年(平成3年)4月 |
所在地 | 東京都千代田区猿楽町2-5-4 OGAビル2F (発足当初は、トミー内に仮の事務局を置き、その後、東京・高田馬場にある日本点字図書館に事務局をおかせていただき、1994年(平成6年)11月に現在の場所に事務局を構えるようになった。) |
目的 | 障害のあるなし・年齢にかかわらず、使いやすい商品・サービス(共用品・共用サービス)を普及し、誰もが暮らしやすいバリアフリー社会をめざす。 |
構成 | 民間企業(製造・流通・販売・通信・マスコミ等)・福祉施設・教育・行政機関に勤める人たち・主婦・学生等が個人の資格で参加している。 |
共用品・共用サービスの普及を目的に勉強会の形でスタートした。 現在は、企業、福祉機関、行政等、様々な分野から個人の意思で集まっており、約300名となっているが発足当初は16名だった。また、地方関連団体も関西、静岡、名古屋、新潟、九州でも活動を開始している。
E&Cの活動は、発足当初から現在まで以下の3点を柱に行っている。
つまり現在の日常生活において「不便さ」を感じている人(障害者、高齢者、妊産婦等)に対しての「調査」である。メンバーはまず対象の障害についての勉強を行い、その後実際に不便さを持つ複数の対象者に会い、聞いてきた結果を持ち寄り、討議し、アンケートの質問項目を作成する。そして定量調査としてアンケートを実施し、報告書の形にまとめる。この作業をそれぞれの障害別に実施するのである。
報告書は1999年(平成11年)3月現在、以下の6点を刊行。
ここでは、調査の段階で、明らかになった不便さを「解決する方法」の検討を行っている。各障害から出てくる不便さの範囲は広い。製品そのものの問題もあれば、情報、サービス、公共空間、人の気持ち、はては社会の仕組みにまで広がっている。そのすべてを一度に解決する事は残念ながらできないため、可能な範囲でグループに分かれて検討を行ってきた。初め課題を家の中と外に分け、更に細分化し、解決策を考えている。
配慮点を考える際に、一番大切にしている事は、障害のある人もない人も共に同じテーブルにつき、討議し、解決策を出していくという事である。どんなにいいアイディアでもコストが高すぎては実現できない。逆に、どんなに効率的な案でも、使う側が望んでいないものであれば、無意味な配慮となってしまう。どの班にも障害のあるメンバーが入り、共に検討しているのは、E&Cが発足した当初から今も変わっていない。もう1つ重要視しているのは、提案を行う時に、幾つもの仮説を立て、試作品を作り、何度もモニター調査を繰り返えす事である。
製品やサービスは元来、それらを開発・提供する企業ごとの個性が尊重されるべきものであり、共用品・共用サービスを普及させる立場からも異論はない。 ただそうした製品・サービスを構成する要素の中には、企業・業界の壁を超えた「共通性」が必要とされるべき部分がある。よく共用品の例として引き合いに出されるシャンプー容器のギザギザは、1社が行った共用品としての配慮の提案が強制でなく、他社に広まった良い例である。「共通性」を持った共用品の配慮点を考える事と同時に、それがいかに多くの企業や関係団体に受け入れられるかが、次の段階で重要な課題となってくる。
E&Cで配慮点の検討及び、提案を行いJIS化になった例として、「プリペイドカード」がある。プリペイドカードは、テレホンカード、オレンジカード、買い物カードなどさまざまな種類があるが、これらは形や厚みがほとんど同じで、視覚障害者にとっては自分の持っているカードが何のカード゙か分からない。また、E&Cの調査で、カードの残額も分からない等の問題が明らかになり、これらの問題を解決し、少しでもカードが使いやすくなればと研究を進め、3種(電話・乗り物・買い物)の基本切り欠き形態と、自分で付けるマークとの組み合わせで、すべてのカードを手で触っただけで識別する方法を、「手で触れただけで識別できるプリペイドカードへの提案」としてまとめ、1993年(平成5年)10月に東京・銀座のソニービルで開いた第1回共用品の展示会で発表した。さらに、日本規格協会を訪ね、提案内容を説明した。タイミングよく、1994年(平成6年)が5年に1度、プリペイドカード関連の規格見直しの年にあたっており、E&Cのメンバー2人が「プリペイドカード標準化委員会」の審議委員として参加させていただいた。1994年(平成6年)5月から約1年間、同委員会ではE&Cからの提案を前向きに審議していただき、その結果、技術的に可能な提案は新たな規格の中に盛り込まれ、JIS-X6310「プリペイドカード・一般通則」として1996年(平成8年)3月1日に制定された。
普及に関しては大きく2つの課題がある。1つは、不便さの解決策をいかに多くの関係機関に採用してもらうかである。1社から同業他社への呼びかけで実現した例はあるが、他業界にも普及させていくとなると、業界単位で他業界へ働きかけていくか、日本工業規格(JIS)等を通じて働きかけていく方法等が考えられる。シャンプー容器の識別、プリペイドカードのJIS化等の例を良い土台としながらさらに、色々な普及の方法を追求していく必要があると思う。
もう1つ大切な事は、障害者・高齢者等、現状の日常生活に不便を感じている人の「不便さ」を、より多くの人に正確に知ってもらうことである。この点に関しては、発足当初からE&Cは、様々な方々からのご支援、ご協力をいただき積極的な活動を展開している。
上記 6. の展示会では、共用品・共用サービス展・シンポジウム等を行った。
このイベントでは、毎年増えていく「共用品」をメイン会場のソニービル8階ソミドホールに展示した。
共用品のリストアップは、会員が自分の回りの製品やサービスを調査し、共用品の候補として約1200点の製品情報を収集し、その中から「E&Cが共用品の基準としている条件」に合わせ約150点を選定・展示した。
展示会で実際手にとって見ていただいた方には、これらの配慮は、決して高齢者や障害者のためだけではなく、障害のない人達も含めた皆のものだという事も、分かっていただけたと思っている。
「みんなが使いやすいモノ・暮らしやすい社会」を作っていく考え方は、具体的な「不便」を感じている人達の「声」が「愚痴」ではなく、「提案」という形になるということである。それを様々な人達が知恵を出し合い「共通化できる配慮点」を考える。企業や行政はこの考えを元に、誰もが使いやすい・誰もが楽しく暮らしやすいモノ(共用品)や、社会(共生社会)を作っていくのである。
他にこの考えを普及するものとして、書籍出版とビデオがある。主にE&Cと関連のあるものは以下の通り。
その他、1998年(平成10年)度の特筆すべき動向としては、ISOの高齢者・障害者のための標準化特別委員会にオブザーバー参加が上げられる。