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共用品・共用サービスとは?

定義

 身体的な特性や障害にかかわりなく、より多くの人々が共に利用しやすい製品・施設・サービス。

図1:共用品は福祉機器と一般商品を兼ね備えています

原則

  1. 多様な人々の身体・知覚特性に対応しやすい。
  2. 視覚・聴覚・触覚など複数の方法により、わかりやすくコミュニケーションできる。
  3. 直感的でわかりやすく、心理負担が少なく操作・利用ができる。
  4. 弱い力で扱える、移動・接近が楽など、身体的負担が少なく、利用しやすい。
  5. 素材・構造・機能・手順・環境などが配慮され、安全に利用できる。

参考解説

 共用品・共用サービスとは、次の三者を包括する概念である。

  1. 最初からすべての人々を対象に、適合するよう考える共用設計。
  2. 一般製品の利用上の不都合をなくすバリア解消設計。
  3. 福祉用具がもとで一般化した福祉目的の設計。
図2:広義の福祉用品のうち、一般化した福祉目的の設計製品のほかバリア解消製品も共用品として捉えています

経緯

 2000年(平成12年)12月8日、「共用品・共用サービスの定義と原則<2000年度版>」がまとまった。共用品推進機構の企画委員会を中心に昨年6月から検討を続けていたもので、「誰にでも納得してもらえる共用品の基準」を明確にしておこうというのが目的である。

 「共用品の条件は何か?」「定義は?」「ユニバーサルデザインとの関係は?」など、わかっているつもりでも改めて第三者に理解を求めたり、共用品・共用サービスの選定を厳密に行おうとする時、信頼に足る「体系的な概念の決定版」が用意されていることが望ましい。

 国際標準化機構(ISO)で進められている高齢者・障害者配慮設計のガイド策定における定義づけやさまざまな関連用語との調整・確認作業に参画する中で、“Kyoyo-Hin”に関する記述をできるだけ多く盛り込んでおきたいという期待もある。そのためにも、共用品のアイデンティティを再確認し、いっそう強化しておかなければならない。善は急げということになった。

旧「5基準」ベースに、見直し・検討

 共用品に関しては、「5つの基準」というものがすでにある。E&Cプロジェクトの草創期に、当時のメンバーによってつくられたもので、これまで十分その役割を果たしてきた。
しかしながら、この5つの基準、実は初めてのイベント開催にあたって急遽、E&C流の迅速作業で完成させたものである。今日、公益法人である共用品推進機構としての立場で対外的に応対する際に、この5つの基準が必ずしも適切であるとは言い切れない場面が出てきたという事情もある。

 このため、検討作業は5つの基準を見直すかたちで、まずは定義を考えることから始まった。旧5基準の第1項「身体的な障害・機能低下のある人もない人も、共に使いやすくなっている製品やサービス」をベースに、障害という言葉の扱いをどうするか、特に重視しつつ検討を進めた。

 同時に、大部分の場合に当てはまる基本的な法則・規則を示すものとして、新たな「原則」を定義とは別に設定することになり、旧5基準の第2項以下をたたき台に検討を開始した。

 一連の検討過程で、旧第2項「特定の人向けに開発された専用品ではないこと」は、前項ですでに表現されている内容と重複するとみなされた。旧第3項「一般的に入手や利用の可能なもの」、旧第4項「一般的な製品やサービスと比較して特別に高価でないもの」、旧第5項「継続的に製造・販売・提供されているもの」については、「一般的」といった表現が曖昧なことに加え、「価格や販売地域・継続性と共用品の存在意義とをあえて関連づけない」との認識を明確化した。

 また、会員制、限定品、共用品開発意図のありなしなどについては、いずれも機能としての共用性を否定するものではなく、当面は「結果として共用が可能なら構わない」とされた。

 公序・良俗に反するものは論外、デザインややさしさ、快適性もあらゆる製品・サービスに当然求められる基礎条件なのでここでは問わないこととし、環境問題との関連についても現時点では言及しないこととした。簡潔を目指すため、製品と製品との関係など、さらに細かな問題については実施細目、つまり今後検討を予定している「基準」のなかで規定していくこと、ISOガイドとの整合性を考慮しておくことなどが確認された。

技術革新・環境変化に対応、柔軟に改定

 こうして決定した新定義の最大の特徴は「より多くの人々」の一語が加わった点である。「完全にすべての人」でなくても、「より多くの人」で十分であるという意味合いで、対象範囲をどれだけ広げられるかが大事なポイントであることを示している。

 一方、新原則の方は、ISOガイド・マトリックス作成の知見をベースに構成したもので、「多様な人々の身体・知覚特性への対応」を核に、情報の交換・操作・利用における心理的・身体的負担の軽減を極力具体的に示そうと努めている。

 さらに、「共用品らしさ」を強調する狙いで、【参考解説】を添え、ユニバーサルデザインやバリアフリーデザインを包括した上位概念であると主張している。

 また、今後の環境対応や情報技術(IT)の進展などによる状況変化に伴う改定を想定し、今回まとめた定義と原則は「2000年度版」と位置づけることになった。

図3:ユニバーサルデザインやバリアフリーデザインなど主要な概念の登場と日本への波及

青木 誠(共用品推進機構運営委員 兼 企画委員)作成

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